北村想「寿歌」に宮城聰が挑む、「詩人のような言葉が今、必要」

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愛知県芸術劇場とSPAC(静岡県舞台芸術センター)による共同企画「寿歌」の記者会見が本日1月29日に愛知・愛知県芸術劇場で行われ、作者の北村想と、演出を手がける宮城聰が登壇した。

左から北村想、宮城聰。

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本作は、愛知県芸術劇場が小ホールで開催する先駆的・実験的なプログラム「ミニセレ」のラインナップ作品。同劇場と静岡県舞台芸術センターの初の共同企画作品となり、愛知県を代表する劇作家・北村の代表作「寿歌」を、SPAC芸術総監督の宮城が演出する。核戦争後の荒野でリヤカーを引く旅芸人のゲサクとキョウコ、そしてヤスオが、リチウム原子爆弾の飛び交う中、あてどもない旅に繰り出す様を描き、1980年代の演劇界に大きな影響を与えた作品だ。

北村想

会見は、本作プロデューサーが司会を務める形で進行した。上演に向けての思いを問われた北村は「毎年どこかで上演されているような作品なので、特別な感慨は……(笑)」と述べ、記者たちを和ませる。続けて宮城が「今は話を単純化して、敵と味方をはっきり分けるか、判断を保留するか、どちらかになる風潮があると思う。そんな多くの雑音の中から、突然澄んだ音を書く人が大昔からいて、そういう詩人のような言葉が今、必要だと僕は感じています。『寿歌』はそういう本だと思うので、演出家としてそこに興味が湧きました」と述べる。さらに宮城は「そこに何が書かれているかは、書き手の身体みたいなものを自分でなぞらないと僕は、よくわからない。なので演出家として想さんの身体を引き受ける、みたいなことができれば、言葉の意味がわかってくるだろうなと思っています」と思いを述べる。

宮城聰

さらに宮城は、「演出家としては年を取れば取るほど言葉の論理性、理屈に囚われるようになってきて、そこから離れるのが難しくなってきています。が、今回の戯曲はそのアプローチでは読み解けません」と述べ、「この戯曲には隙間と言うか、俳句で言うところの“切れ字”のような空白があるんです。その空白によって、言葉は滑走路を走り“離陸”する可能性を持っていると思うんですね。僕も二十代の頃はそういった“離陸”ができたような気がするのですが、最近はすっかり忘れちゃっている(笑)。それをなんとか思い出し、この戯曲に取り込みたいと思っています」と意気込みを述べた。

左から北村想、宮城聰。

本作は愛知県芸術劇場で幕を開けたのち、静岡・舞台芸術公園 野外劇場「有度」をはじめ、熊本、福岡、茨城、愛知の知立市と小牧市でも上演される。そのことについて宮城は「SPACでは僕が演出した作品を国内ツアーすることはないので、とても楽しみです」と笑顔を見せ、さらに「静岡を拠点にして11年、普遍性ということを常に試され続けてきました。今回はその成果が試されるのではないでしょうか(笑)」と語り、会見場を笑いで包んだ。

最後に記者から北村に「今回の上演について楽しみにしていることは」と質問が寄せられると、北村は「演劇は仕事ですから、楽しみとかってことはないんですよ(笑)」と答えつつ、「ただ、これまでいろんな演出家の方がいろんな演出でこれを料理されてきましたが、今日の宮城さんのお話を聞いて、『ふーん、そういう感触なのか』『言葉を身体で読むって面白いな』と思いました。それが舞台上にどう表現されるのか、楽しみです」と述べ、会見は終了した。

左から北村想、宮城聰。

チケットは、愛知県芸術劇場公演分は発売中、静岡公演は3月1日に発売開始となり、茨城公演と愛知・知立市(パティオ池鯉鮒 花しょうぶホール)公演は4月7日、愛知・小牧市公演は4月20日に発売。熊本と福岡公演は続報を待とう。なお知立市と小牧市では、愛知県の小・中学生を対象にした「劇場と子ども7万人プロジェクト」学校招待公演も行われる。

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愛知県芸術劇場・SPAC(静岡県舞台芸術センター)共同企画「寿歌」

2018年3月24日(土)~26日(月)
愛知県 愛知県芸術劇場 小ホール

2018年4月28日(土)・30日(月・振休)
静岡県 舞台芸術公園 野外劇場「有度」

2018年5月18日(金)・19日(土)
熊本県 ながす未来館

2018年5月26日(土)・27日(日)
福岡県 北九州芸術劇場 小劇場

2018年6月8日(金)
茨城県 ひたちなか市文化会館 小ホール

2018年6月16日(土)
愛知県 パティオ池鯉鮒 花しょうぶホール

2018年6月23日(土)
愛知県 小牧市市民会館

作:北村想
演出:宮城聰
出演:SPAC(奥野晃士、春日井一平、たきいみき)

※初出時より、静岡公演の日程が変更になりました。

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愛知県芸術劇場 @APAT_info

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