中村米吉

中村米吉の#カワイイは世界を救う? 第16回 [バックナンバー]

春らんまん!中村米吉、ゆかりのカワイイ“蝶”グッズを紹介

お梶さんの周りをひらひら…小学生時代の愛くるしい米吉の姿も

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現在歌舞伎座では、蒸し暑い大坂の夏を舞台にした「夏祭浪花鑑」が上演されている。中村米吉が勤めるのは、片岡愛之助演じる主人公・団七九郎兵衛の女房・お梶。いとこ・中村歌昇の次男で、団七とお梶の息子・市松役の中村秀乃介の手を引く姿はほっこりとカワイイが、団七と一寸徳兵衛のケンカを、物怖じせず仲裁してみせる場面では、観客に「団七の女房はこの人にしか務まらない」と思わせた。

このコラムは、春夏秋冬いつでもカワイイ米吉に、身近なカワイイものを紹介してもらい、カワイイ×カワイイの相乗効果で読者を癒やすことを目的としている。歌舞伎座には局地的に夏が訪れているが、季節は春らんまんの4月。今回は米吉にゆかりのある“蝶”をテーマに、手持ちの可愛くも美しい、蝶グッズをお披露目してもらった。

題字:中村米吉

はかなくも美しく、なにより可愛らしく羽ばたくのが“蝶”

“春”

なんとも心地の良い響きです。

穏やかな日差しに気持ちいい風が吹き、どこかほんわかとした香りが漂い始め、パッと咲き、はかなく散る桜が世界を彩る、魅力的な季節です。

気候変動により、“四季”が“二季”になりつつある日本では、“春”の心地良さすらも、ほんの一時のはかなさを持つようになりました。

そんな春にはかなくも美しく、なにより可愛らしく羽ばたくのが“蝶”。
私の歌舞伎役者としての家紋が「揚羽蝶」ですので、“蝶”に対しては大変な思い入れがあります。
歌舞伎役者にとって家紋は非常に大切なもので、ありとあらゆるものに使うんです。
例えば楽屋のれん!

父・中村歌六に贈られた楽屋のれんから、お梶さんがチラリ。

父・中村歌六に贈られた楽屋のれんから、お梶さんがチラリ。

今月、父が掛けているのれんにも大きく「揚羽蝶」が染め抜かれていますね。
ちなみに、我が家の家紋の「揚羽蝶」はよくある形と違って、少し丸みを帯びているのが特徴。
普通にインターネットで検索したり、家紋帳などで見ますと羽がもう少しとんがってると言うか、立っている印象の物が出てくるのですが、そちらは播磨屋では門弟が使う物なんだそうです。
曽祖父のお弟子さんだった時蝶さんが昔、教えてくれました。

さあ、のれんに話を戻しましょう。
家紋の周りには刺繍の蝶々が飛んでいます。これは父の長年の友人でもある京繡作家の長艸敏明さんの手によるもの。
父の日本芸術院賞受賞の記念にいただいたものです。

思わず見入ってしまう、刺繍の蝶々。

思わず見入ってしまう、刺繍の蝶々。

色とりどりの蝶たちが鮮やかで可愛らしい、素敵なのれんです。

こんな風に、家紋そのものだけではなく、そのモチーフとなった物を柄として愛用することも多いんです。

私が楽屋で化粧をするときに使っている手鏡もその1つ。

お化粧直し中のお梶さん。手鏡には、4頭の蝶々がひらひら。

お化粧直し中のお梶さん。手鏡には、4頭の蝶々がひらひら。

これは巡業中に金沢で出逢い、一目惚れして購入した物。
ありがたいことに蝶のモチーフの物は世の中に結構ありますから、見かけて気に入ってはつい迎えしてしまうのです。

その中には遥か異国の地からお迎えした物も。
昨年末に家族でラオスに旅行をした際に夜市で見かけた石細工の小箱。

白い蝶が赤に映える小箱。異国情緒あふれる可愛らしさ。

白い蝶が赤に映える小箱。異国情緒あふれる可愛らしさ。

同じような品物が並ぶ中、たった1つだけ趣が違うこの箱が私を呼び止めました。
赤というよりは紅色とでもいうような、濃い赤に蝶を大きくあしらったこの意匠は、まるで赤姫の着物を切り取ったかのようです。
小さくて、何を入れたものか悩んでるところですが、何か大切な小さな物を入れて愛用したいと思っています。

愛用の品の中には蝶のブローチも。

シルバーの蝶のブローチ。繊細かつ、シックな雰囲気。

シルバーの蝶のブローチ。繊細かつ、シックな雰囲気。

蝶の装飾品というと、どうしてもゴテゴテしがちなところ、羽を閉じた蝶に地模様のはいった、一見“蝶”とは分からないさりげなさが気に入っています。

おめかし米吉の胸元に止まる蝶。カワイイ×カワイイな1枚。

おめかし米吉の胸元に止まる蝶。カワイイ×カワイイな1枚。

ご紹介したように、家紋である、という1つの理由から私と蝶は切っても切れない関係性を築いています。
その縁は本当に古く、初舞台すぐの小学生の頃から。
舞台で華やかな蝶を演じたのです。

立派な羽を着け、熱演している中央の少年に注目!

立派な羽を着け、熱演している中央の少年に注目!

「鏡獅子」の胡蝶とかではなく、怪獣“モスラ”(笑)。
小学校の「劇の会」で勤めた思い出のお役です。
カップラーメンをウルトラマンに薦めて、3分待たせてやっつける……。

という、とても大切なお役でした。

ぜひ再演したいと思います。
お楽しみに!(笑)

プロフィール

中村米吉(ナカムラヨネキチ)

1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。2022年7月に上演された「風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―」、2022年12月から昨年1月にかけて上演された「オンディーヌ」では、それぞれタイトルロールを務め、昨年3・4月に上演された「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」、今年2・3月に行われたスーパー歌舞伎「三代猿之助四十八撰の内『ヤマトタケル』」東京公演では、それぞれヒロイン役を勤めた。5月には歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」夜の部「『伽羅先代萩』御殿」で沖の井、6月には歌舞伎座「六月大歌舞伎」昼の部「上州土産百両首」で宇兵衛娘おそで、「『義経千本桜』所作事 時鳥花有里」で白拍子園原、夜の部「『南総里見八犬伝』円塚山の場」で犬塚信乃を勤める。また10月には「ヤマトタケル」福岡公演に出演し、兄橘姫 / 弟橘姫、みやず姫を中村壱太郎と回替りで演じる。

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読者の反応

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yuka @yuuuca

なんという小学生w
> カップラーメンをウルトラマンに薦めて、3分待たせてやっつける……。

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