由来を教えて!劇団名50 その16 [バックナンバー]

theater apartment complex libido:

特徴は“ひとつにならない”こと

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次々と新たな作り手が頭角を表す演劇界。数ある劇団の中から、ジャケ買いならぬ“劇団名買い”で観劇に行った経験はないだろうか。チラシやニュース、SNSなどで目にする劇団名は、シンプルなものから不思議な音の響きを持つもの、「どういう意味?」と目を引くものまでさまざまだが、それには名づけ主の希望や願い、さらには演劇的活動戦略が込められているはず。このコラムでは多彩な個性を放つ若手劇団たちの、劇団名の由来に迫る。劇団名が持つ秘密と共に、未来の演劇界を担う彼らの活動の軸を紐解いていく。

16番目に登場するのは、千葉県松戸市のせんぱく工舎 1階 F号室を本拠地とするtheater apartment complex libido:。2019年に集団化したlibido:は、緻密でセンスあふれる演出が持ち味の岩澤哲野を中心にしつつも、俳優メンバーの持ち出し企画を行ったりと、メンバーそれぞれの個性を生かした活動が魅力だ。実は、岩澤にとって、“libido”という団体名は10年以上の付き合い。思い入れのあるその名前の裏側を語ってもらった。

theater apartment complex libido:(シアターアパートメントコンプレックスリビドー)

Q. 団体名の由来、団体名に込めた思いを教えてください。

libido:代表の岩澤です!
libido:は元々、僕の個人プロデュースユニットとして2012年に立ち上げました。実はもう10年やってます。ただいろいろな変遷を経て2回の団体名変更があり、今に落ち着いています。
唯一変わっていないのが“リビドー / libido”という単語で、意味は芸術や表現に起因する“根源的欲動”から取っています。これは僕個人が銀杏BOYZをはじめとしたパンクロックにハマっていた高校生の時に出会った言葉でした。
最初はこんなに長い付き合いになると思わず、それこそ衝動的に付けた単語がここまで残ることになったことには不思議な思いがあります。

現在はtheater apartment complex libido:と名乗っています。
この名前になったのは、2019年に団体を集団化することに伴ってでした。
5人の集団になったときに、もう自分だけの団体ではないという思いから(いろいろと弊害も多かったので)、libido:を捨てることも提案したのですが、まさかの総意で残そうということになりました。内心うれしかったことを今でも覚えています。
合わせて松戸に拠点を定めていく中で、コミュニティの創造も1つのテーマに掲げたことと、松戸には“団地”が多くあることから着想し「多様性を認めたうえで共生し合う場を作りたい」という想いから“apartment complex”を、さらに僕らの主体となるのが“演劇”なので“theater”も取り、現在の名前になっています。

ほかにもいろいろな思いがあふれて今の名前になっているのですが、当初その長さに周りからの不満の声がよく聞こえてきました(笑)。
もう1つ、よく忘れられやすいのですが、最後に“:”をつけています。“theater apartment complex libido”から”なにか”を創造するために僕らは活動している、もしくは集っているので、その”未来”に対する意思表示として“:”をつけています。

Q. 団体の一番の特徴は?

団体を運営していて、特徴らしきものは常に変化をしているように思っています。ちょっと前だとプロデュースユニットだったこともあり、僕の存在がそのまま特徴だったようにも思うのですが、今は1人ひとりの色が団体内でも濃くなってきて、特徴をひとまとめできないところがあるなと感じています。

強いてあげるなら“1つにならない”といったところでしょうか。
ただ、これってすごく当たり前で大切なことだと思っています。1人ひとりの能力も社会的立場も精神状態も興味も関心もその時々で移ろいでいきます。その変化の中で一緒に集うことが可能な場であり、つまりそれは他者を思いやれる場であることが求められると思っています。
僕らが完全にその場を手に入れられた訳ではまだありませんが、でも僕らにはそれを求めている共通点はあると思っています。
その上でもう1つ、libido:が“チャレンジできる場”であることも大切だと思っています。誰かがやりたいことに対して、それが他者に大きな悪影響を及ぼさない限り、前向きに進んでいける団体でありたいです。
その両方がそろって、団体は継続していくのだと考えています。

Q. 今後の目標や観客に向けたメッセージをお願いします。

僕らはこれからもマイペースに、移ろいながら、そのときの興味関心と、やれることに向き合って進んでいく集団です。でもそれが1つのスタンダードになるような、そんな集団を目指していきます。
内にも外にも結果に対しては貪欲に、そして不特定多数の観客に楽しんでいただけるようこれからも“作品”を創っていきますので、libido:を引き続きよろしくお願いします。

libido:のロゴ。"団地"をモチーフにしている。(デザイン:さかたきかい)

プロフィール

岩澤哲野のプロデュースユニットであったlibido:を2019年4月30日より集団化。新たにtheater apartment complexを冠し、千葉県松戸市にある常盤平団地とその周辺地域を拠点に活動する。メンバーには岩澤のほか、大蔵麻月、大橋悠太、緒方壮哉、鈴木正也が名を連ねている。

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岩澤 哲野 테츠야 TETSUYA @tetsuno86

改めて我々は今こんな集団!
集団化して4年。自分1人ではないという事を知ってその中で移り変わっています。きっとまだその過程。でも僕らは移ろいながら居場所を創っていきます。 https://t.co/epZD6gCrIY

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