JO1が“新しい音楽の届け方”を追求した理由

LAPONE崔信化社長「JO1にはパイオニアになってほしい」

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「世間に一石を投じられたら」韓国ではサステナブルな取り組み多数

JO1のようなボーイズグループやアイドルのCDにはシリアルコードが封入されているケースが多く、コードを使って応募すると、アーティストと交流できる特典会やイベントに抽選で参加できる。ファンは好きなアーティストとの時間を手に入れるために、またアーティストがチャートで好成績を収められるように、同じCDを何枚も購入する。そしてその行為によってセールスが伸び、チャートの順位上昇に貢献する……という循環はおなじみの光景だ。ところがそうした販売方法は、エコの観点から是非を問われている。CD、そしてジュエルケースが廃棄されればされるほど、プラスチックごみは増える。

韓国では大量のCDが廃棄されることによって環境への負荷が増えているとして、社会問題に発展。アーティストや事務所がサステナブルな取り組みに身を乗り出している。J-HOPE(BTS)は、2022年7月にリリースしたソロアルバム「Jack In The Box」を、CDを封入しないボックスの形式で発表し、QRを読み取るとプラットフォーム・Weverse上で楽曲を聴けるという手法を取った。またNCT DREAMが2022年5月にリリースしたリパッケージアルバム「Beatbox」は、トウモロコシ由来のインクを活用するなどエコな素材を使用。同年9月にリリースされたBLACKPINK「BORN PINK」もエコな素材で作られ、CDが付属せず生分解プラスティックで制作された「KiTアルバム」も用意された。TWICEやStray Kidsが所属するJYPエンターテインメントも、2022年にESG経営報告書を公開。創設者のJ.Y.Parkは「CDに替わる何かを見つけるために、さまざまなアイデアを生み出す努力をしている」と語っていた。

LAPONEエンタテインメントは、日本の吉本興業ホールディングスと韓国のCJ ENMによる合弁会社。所属アーティストの楽曲やパフォーマンスにはK-POPの要素が多く取り入れられており、トレーニングやミュージックビデオ撮影のため、JO1もたびたび渡韓している。また雑誌「ELLE」のYouTubeチャンネルにて、JO1がSDGsを学ぶ動画連載企画が展開されていたこともあった。「NEWSmile」のリリースに際し、環境問題への配慮については特に言及されていなかったが、そうした観点も強く意識していたのだろうか?

「韓国で環境のことを考えたリリースが行われていることはもちろん僕たちも把握していますし、会社として社会貢献をしていかなければならないと常に考えています。今回の『NEWSmile』が革新的な試みだと声高に言うことはできないですが、世間に一石を投じられたらという思いはありました。僕たちはまだ5年目の新しい会社で、しかも日本と韓国とのハイブリッドという少し変わった立ち位置。だからこそ新しいことにチャレンジができるということもあると思うんです。メンバーが面白いと思えないと気持ちよく取り組めないですから、メンバーの意見も積極的に取り入れています。でも、僕らだけで変えられることではないですよね。みんなで業界全体を変えていかないと意味がない」(崔信化社長)

「NEWSmile」の売上は、フィジカルリリースとしてはチャートには反映されないという。それは大きな痛手であるはずだが、今回のリリース形態を選択したことには強い意志を感じる。7作連続でオリコン週間シングルランキング1位を獲得してきたJO1のようなアーティストが成績を度外視してチャレンジングな試みを行うことは、音楽業界に大きなインパクトを与えるだろう。

毎朝6時に目が覚め、社内の誰よりも早く出社するという崔信化社長。「NEWSmile」にぴったりな朝型だ。

「いろいろな観点で考えるとやはりCDを選ばざるを得ないのが現状だと思います。9月にリリースするJO1の3rdアルバム『EQUINOX』で初めて一部にデジパックを採用しますが、これもデビューシングルからずっと実現したかったことなんです。制作期間やコスト面などのハードルが高く、やっとというところです」(崔信化社長)

ストリーミングが浸透している韓国では、CDはもはやコレクションアイテムとなっている。定型化された日本のCDとは異なり、多くはデザインも形態も自由で、トレーディングカードやポスターなど、さまざまなグッズが封入されている豪華な作りだ。崔社長はこうした韓国式のCD制作を何度も検討してきたといい、「JO1だけでも3、4回は企画しましたね。でも不良があった場合の対応などを考えるとハードルが高くて」と悔しそうに語りつつ、「いつか実現させたいですね」と意気込んだ。

「JO1 MART」の様子。

「CD GOODS」のトイレットペーパー。デザインは3種類用意されている。

「CD GOODS」のラインナップのうち、崔社長はトイレットペーパーが特にお気に入りだといい、「たくさん買って帰ろうと思っています(笑)」と微笑む。また新聞「Newspaper」の掲載内容はメンバーへのインタビューをもとにしており、クスッと笑ってしまうフェイクニュースが多数掲載された細かい作りだそうだ。このほかグッズ制作においてはメンバーもアイデア出しに積極的に携わり、商品化されたもののほかにも目覚まし時計やガム、ヘアブラシなど多くの案が挙がっていたという。

「僕たちはコロナ禍の中でのデビューで、どう活動していくかとか、初めてのことやチャレンジが多かった。その上で今回、CDではなくいろんな形で『NEWSmile』をリリースするのも、けっこうな試みだと思うんですけど、難しいことだけど夢があるというか、これが常識になったらカッコいいですよね。こうした僕らのチャレンジしている姿を見ながら、音楽を聴いていただいて、聴いた人もチャレンジして熱い夢を見る夏にできればと思います」(JO1メンバー・川尻蓮)

崔社長の「メンバーが楽しめないことなら意味がない」という思いは、確実にメンバーにも浸透している。それは川尻が寄せてくれた上記の言葉からも、存分にうかがい知れるだろう。

「JO1 MART」を訪れたJO1。右端が川尻蓮。

「『NEWSmile』をきっかけに、面白いことをやりたいという思いがまた強くなりました。JO1には、日本の中でのパイオニアになってほしいんです。だからいいことも大変なことも、JO1と一緒にやっていく。そういう運命のグループだと私はずっと思っているし、メンバーにも繰り返しそういう話をしています。LAPONEとして彼らとまだまだ挑戦を続けていきたいですし、そこはこれからも変わらないですね」(崔信化社長)

「CD GOODS」の展開は在庫がなくなり次第終了してしまうとのことだが、「NEWSmile」が吹かせた新しい風は、今後の音楽業界に波を起こすはずだ。

岸野恵加

ライター・編集者。コミックナタリー副編集長、音楽ナタリー副編集長を経て2023年にフリーランスとして独立。主に音楽やマンガ、アニメなどのエンタテインメント領域で執筆。2011年生まれ男児と2016年生まれ女児の母。

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yuuu @kg45y3

このインタビュー今読んだけどチェがプデュのTシャツ着てるところから何も入ってこなくなった

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