クリスタル・パイトが初来日公演「検察官 / リヴァイザー」への思い語る

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5月に初来日公演を控えるキッド・ピボット「検察官 / リヴァイザー」に向けて、芸術監督クリスタル・パイトのオンライン記者会見が本日4月27日に行われた。

キッド・ピボット「検察官 / リヴァイザー」より。(Photo by Michael Slobodian)

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クリスタル・パイト(c)Rolex by Anoush Abrar

キッド・ピボットは、2002年にカナダ・バンクーバーで設立されたコンテンポラリーダンスシアターカンパニー。ネザーランド・ダンス・シアター(NDT)で振付を開始し、現在は世界を股にかけて活躍するパイトが、昨年のローレンス・オリヴィエ賞最優秀ダンス作品賞を受賞した「検察官 / リヴァイザー」を引っ提げ、初来日公演を行う。なおパイトは2019年のNDT来日公演の「The Statement」でも、セリフの応酬がリズムとなって、動きと共鳴する作品を披露し、好評を博している。

今公演の原作である「検察官」は、ウクライナ出身でロシアを代表する作家ニコライ・ゴーゴリの戯曲で、腐敗政治がはびこるロシアのある地方都市を舞台に、検察官と人違いを巡る騒動を描いた“茶番劇”。本公演では、同作をベースにジョナソン・ヤングが脚本を手がけ、パイトが演出・振付を担当する。

ジョナソン・ヤング(c)Four Eyes

作品について、パイトは「原作から腐敗や救い、変化、変容というようなテーマを見つけ出し、テキストをダンスによって動かしていきます。前半は笑劇とか茶番劇のような形式ですが、そこから徐々に脱構築し、最終的には劇自体を査察していくような、仮面を剥がしていくような作品になると思います」と説明。クリエーションでは、ダンサーが俳優のように台本を読み、録音された音声を動きにボイスオーバーしていったと言い、「ダンサーたちはキャラクターに扮してリップシンクします。それが徐々に口だけでなく身体全体を使って表現されるようになり、動きもジェスチャーのようなものから抽象的な動きへと変化していきます。言葉では表現できないものを表現しようとするような作品になっていると思います」と説明した。

キッド・ピボット「検察官 / リヴァイザー」より。(Photo by Michael Slobodian)

キッド・ピボット「検察官 / リヴァイザー」より。(Photo by Michael Slobodian)

また現在の社会状況の困難さに主題を得た作品が多い点については、「偶然でもあり意図的でもあります」と回答。「ただ常に意識しているのは、私たちが問いかける物事の普遍性です。『検察官 / リヴァイザー』は、クリエーションを始めた頃がちょうど2016・2017年で、トランプ政権が誕生したときでした。そのようなアメリカの状況と並行してロシアのことも考えられたら面白いのではないかと思ったんです」と語った。さらに「カンパニーにとっては1つの作品で何年もツアーしていくため、同じテーマと長期間向き合うことになりますから、テーマ選びは慎重に吟味するようにしています。自分たちにとって挑戦になるもの、喜びをもたらすようなものになるもの、自分たちが成長できるようになるものを選ぶことで、私たち自身やお客様と共有できる体験がより豊かになるのではないかと考えています」と話した。

キッド・ピボット「検察官 / リヴァイザー」より。(Photo by Michael Slobodian)

記者から、作品を届けるということや、観客に対しての意識を問われると、「クリエーションの最初の段階から最後まで、観客のことはずっと念頭にありますね」と真摯な様子を見せ、「観客にはさまざまな人がいますから、さまざまな切り口でアプローチすることで共鳴が起きる可能性があります。私の作品では多くのテキストや言葉を用いますが、それも、さまざまな切り口を用いることで、動きだけではたどり着けない複雑さにアクセスできると考えているためです。言葉や身体に限らず、あらゆるツールを使って表現したいと考えています」と思いを語った。

そんなパイトが「もっともやりがいを感じる瞬間は?」という質問に対しては、少し思考を巡らせたのち、「創作過程でパッと灯がついたように、解決方法やインスピレーションが浮かんできたとき。また新たなクリエーションを始める最初の日。例えばジョナサンとテーブルに向き合って新作について議論を始める日だったり、ダンサーとの最初の顔合わせのときだったり、小屋入りして初めて劇場を見る日だったり、初日だったり……いろいろな“初日”があって、そういった“初日”が私たちを希望に満ちあふれた新しいチャプターに導いてくれるのだと感じます」と答えた。

また今回の日本公演が「検察官 / リヴァイザー」の最終公演となる。その点についてパイトは「『検察官 / リヴァイザー』は2019年に初演された作品で、私たちは今すでに新しい作品に取り組んでいます。次の新たな作品に集中するため、『検察官 / リヴァイザー』の幕を閉じる形になりますが、まるで親しい友達と別れるような寂しい気持ちがあります」と表現。そのうえで「今回、『検察官 / リヴァイザー』で初来日公演が実現できることを心から楽しみにしています。劇場で観客の皆さんと一緒に、(作品のテーマである)変化や救いといったことを考えられたら。皆さんにお楽しみいただければ、それ以上のことはありません」と来日公演への思いを語った。

公演は5月19日に愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、27・28日に神奈川・神奈川県民ホールで行われる。

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キッド・ピボット「検察官 / リヴァイザー」

2023年5月19日(金)
愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール

2023年5月27日(土)・28日(日)
神奈川県 神奈川県民ホール

台本:ニコライ・ゴーゴリ「Revisor」より
脚本:ジョナサン・ヤング
演出・振付:クリスタル・パイト
出演:キッド・ピボット ほか

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愛知県芸術劇場 @APAT_info

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5/19(金)キッドピボット『リヴァイザー/検察官』
愛知県芸術劇場大ホール

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