隼太からHAYATAへ 第1回 [バックナンバー]

“学んで試す”は蜷川さんの現場で学んだこと…竪山隼太が那須凜を50mmレンズで撮影

第1回の課題は「50mmを制する!」

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十代で「ライオンキング」ヤングシンバ役に抜擢、二十代を蜷川幸雄率いるさいたまネクスト・シアターで過ごし、5月7日に32歳となる今年、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」のロン・ウィーズリー役を勝ち取った俳優の竪山隼太が、もう1つの夢であるカメラマン・HAYATAを目指す本企画。舞台をはじめさまざまなメディアで活躍するプロのカメラマン・平岩享が先生となり、隼太は毎回多様な課題に取り組みながら、“隼太からHAYATAへ”の道を突き進む。

第1回では、いよいよ竪山が最初の課題である「50mmを制する!」に挑戦。今回モデルとして協力してくれたのは、竪山とはKAAT神奈川芸術劇場プロデュース リーディング公演「ポルノグラフィ」で共演して以来、互いに信頼を置いている朋友・那須凜だ。

なお撮影は、「課題発表→1st Trial→平岩先生のアドバイスタイム→2nd Trial→撮影した写真を見直して平岩先生の講評」という形で進行した。

構成 / 熊井玲 ヘアメイク / オオトウアキ

第1回の課題「50mmを制する!」

平岩「人間の目に一番近い画角は50mmと言われています。今のデジタルカメラやスマホはズーム機能がついているものが多いので、自分は動かずともズームをすることで寄ったり引いた写真を撮れるようになりました。でも50mmの画角で固定すると、自分が動いて引いたり寄ったりしないといけません。その練習をしながら同じ画角でも広角レンズで撮ったような写真や望遠レンズで撮ったような写真が撮れるようになる練習をしてもらいました。それによって自分の好きな画角を見つけてもらいたいです」

那須凜を撮影する竪山隼太。(撮影:平岩享)

1st Trial

まずは好きに撮ってみよう、ということで、平岩先生は少し離れたところに立ち、撮影の様子を見守る。竪山と那須は、撮影前の砕けた雰囲気と裏腹に、少し緊張気味で撮影に臨んだ。

竪山「50mmを制する者がカメラを制する。平岩さんに写真を教わって最初に言われたことです。僕のカメラはsony a6400のaps-cなので、フルサイズ一眼より画角が1.5倍になります。レンズはtokinaのf1.4の33mm。

今までも俳優仲間を撮影してきましたが、主に街歩きのスナップを撮ってきました。今回ナタリーさんの会議室を使って室内で撮影。初回はシチュエーションに慣れていなかったため、焦りました。また僕は凜を初めて撮影したので凜の表情が緊張してます。そりゃそうですよね。共演した俳優が急にカメラ持ってんだから。ごめん!

空間のどこを切り取れば凜が素敵に見えるか探す中で、白壁が美しかったのと曇りだったため、自然光を使えないかと考えました。また窓ガラスが素敵だったので、これを使って面白い写真が撮れないかを模索しました。

次に、講座が始まる前に平岩さんが凜を遊びで撮っていたときにソファーを使っていたので、それをパクりました。恥も外聞もありません。わかんないんだから、マネする。パクる。お芝居でもいろんな人から僕はパクりまくってます。いえ、オマージュしてます。部屋にすごくカラフルなソファーがあったので、このソファーを使って凜を撮れないか考えました。今回は単焦点のレンズなので、ズームができません。なので僕が動くことで凜の引き、バストアップ、顔のアップを撮ることにしました。上から撮る、下から撮る、いろいろな角度から撮ってみようと心掛けました。カメラを横だけでなく縦にしたり、凜をあえて真ん中に置かず、ずらしてみたり、とにかくいろいろ模索しました」

1st Trialで竪山隼太が撮影した那須凜。

1st Trialで竪山隼太が撮影した那須凜。

1st Trialで竪山隼太が撮影した那須凜。

2nd Trial

1st Trialで撮影したものをパソコン上で見返しながら、平岩先生が具体的なアドバイス。「ここに立ってもらうなら後ろの窓枠をどう入れるか意識したほうが……」「この構図で撮影するなら光が三角に入ってくることを生かして……」など、背景や光の生かし方を聞くたび、「ああ、そうかー!」と、竪山は納得しっぱなしだった。

竪山「まずいらないものを撮らない。柱が邪魔なら映さない。凜と白壁を撮る。自然光のグラデーションが面白ければそこを切り取る。奥行きある空間を写真の平面に収めることで、写真のレベルがぐっと上がることに感動を覚えました。雑誌の写真みたいですよね。

カメラが窓ガラスに近づくほど凜がガラスに映りこむのは衝撃でした。凜には部屋にいてもらい、僕は部屋の外に出てガラス越しに撮ることで、フィルターっぽい写真が撮れました。僕のプランでした。平岩さんに褒めてもらったの、うれしかったなあ。

2nd Trialで竪山隼太が撮影した那須凜。

2nd Trialで竪山隼太が撮影した那須凜。

カラフルなソファーはパンチが強いので、凜とソファー以外のものを無くして構図を決め、いろいろな角度から撮りました。正面からだけではなく、斜めから狙って撮ることで写真に立体感が生まれました。そして凜も、平岩さんのアドバイスが加わったことで表情に安心感が乗っています。被写体を安心させる能力も、もっと僕が身につけるべき能力の1つだと感じました」

2nd Trialで竪山隼太が撮影した那須凜。

2nd Trialで竪山隼太が撮影した那須凜。

Review

平岩「今回はとりあえず隼太くんに那須さんを撮ってもらいました。『50mmの画角で寄りと引きを意識して撮影してみてください』というお題だったのですが、それはちゃんとクリアしてくれましたが、そこに集中するあまり、背景にまで意識が回りませんでした。その写真を確認したうえで2度目の撮影にチャレンジ。今度は見事に、寄りと引きだけではなく、カメラの高さやアングルも意識して撮影できました。ガラス越しやソファーの前ボケを生かしたり、その場の閃きを生かしての撮影、素晴らしいです」

2nd Trialで竪山隼太が撮影した那須凜。

モデル・那須凜が語る、隼太とHAYATA

那須「隼太さんとは仲良しだし、平岩さんには以前からお世話になっているので、今回声をかけていただいて純粋にうれしかったです! 1年前に彼がカメラをやりたいって聞いたときはどうなるのかなって思っていたけれど、本気なんだな、すごいなと思って撮影に臨みました。

撮影中、最初は緊張していましたが、彼が真剣にカメラに向き合っている姿を見ているうちにこちらもそれにつられてきたというか、彼が良いものを撮りたいと思っている思いに協力できたら良いなと思うようになりました。平岩さんのアドバイスで何かを発見して燃える感じが、すごくあからさまにわかるのが面白かったですね(笑)」

2nd Trialで竪山隼太が撮影した那須凜。

第1回を終えて

竪山「講座ではありますが、“教わるだけ”が僕は嫌いです。今まで撮ってきた経験で平岩さんに勝負しようと思いました。そして負けました。いや、そりゃ当たり前なんですけど(笑)。

平岩さんは、写真を撮るときに細部にまで明確な意思があります。だから平岩さんの写真は輝き出すんです。一目瞭然ですもんね。見比べると。

勝負して、大負けして、学んで試すことは蜷川(幸雄)さんの現場で学んだことです。いっぱい負けよう。トライアルアンドエラー!」

※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

プロフィール

竪山隼太(タテヤマハヤタ)

1990年、大阪府生まれ。2000年に劇団四季ミュージカル「ライオンキング」ヤングシンバ役でデビュー後、「天才てれびくんワイド」にレギュラー出演し子役として活動。2009年に蜷川幸雄率いる演劇集団さいたまネクスト・シアターで活動。最近の出演作に「Take Me Out 2018」「ガラスの動物園」(上村聡史演出)さいたまネクスト・シアター最終公演「雨花のけもの」(細川洋平作、岩松了演出)など。7月から舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」に出演する。

平岩享(ヒライワトオル)

1974年、愛知県生まれ。フォトグラファー。時代の顔となるポートレートを数多く撮影。岩井秀人が代表を務める株式会社WAREのサポートメンバー。近年はドローンを使った動画など、新しい手法にも取り組んでいる。

那須凜(ナスリン)

1994年、東京都生まれ。2015年、劇団青年座に入団。劇団公演のほか、「ザ・ドクター」「モンローによろしく」「貧乏物語」などに出演。7・8月にはシス・カンパニー公演「ザ・ウェルキン」に出演。第29回読売演劇大賞で杉村春子賞を受賞。

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読者の反応

竪山隼太 @hayata_tateyama

連載開始致しました!!!
皆様何卒みてやってくださーい!!!
写真撮る人には勉強なりますよー!!!拡散希望ー!!!
いろんな人を撮るぞー!!!
うほほーい!!! https://t.co/pLyRaKLyP0

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