「VORTEX」はギャスパー・ノエ版「生きる」「楢山節考」、影響を受けた日本映画語る

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VORTEX ヴォルテックス」の監督を務めたギャスパー・ノエが、本作に影響を与えた映画について語るコメントが到着。2019年の末に頭に違和感を覚え、脳出血で倒れてから奇跡的に生還し、コロナ禍と重なった回復期に観ていたという日本映画を明かしている。

脳出血で闘病中に撮影されたギャスパー・ノエ。(c)GASPAR NOÉ

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「VORTEX ヴォルテックス」ポスタービジュアル

「VORTEX」は老夫婦の日常を捉えつつ、人はどのように死んでいくのかという誰もが目をそむけたくなる現実を冷徹に見つめた作品。「サスペリア」を手がけたイタリアンホラーの鬼才ダリオ・アルジェントが80歳にして初主演を果たし、「ママと娼婦」で知られるフランソワーズ・ルブランと老夫婦を演じた。

「VORTEX」を制作するうえで、自身の家族の身に起きたプライベートな経験から大きな影響を受けたというノエ。「私は数年前から年配の方と一緒に映画を作りたいと思っていた。個人的なこととして、祖父母、そして母と、老後は生きていくうえで非常に複雑で困難な問題が伴うことに気付き、やがて彼らは、もっとも守られていたであろう幼少期へと回帰していき、抗えない状況が巻き起こる」と語る。

「VORTEX ヴォルテックス」場面写真

脳出血で倒れたノエは3週間にわたってモルヒネを服用し、生還を果たしたものの、自分の死について深く考えたという。「自分の死とそれが周囲の人たちに与える影響、そして、私がいなくなったあとの混乱について考えていた。他者に残した人生のさまざまな物事は、脳とともに朽ちてしまう記憶と同じくらい早く、その人の中でゴミ収集車のように消えてしまう。それが“死”だ」という考えに至った。

その後の回復期はコロナ禍と重なった。ノエ自身、そのことを非常にポジティブに捉えており「ロックダウンのおかげもあって、私は溝口健二成瀬巳喜男、そして不当に忘れ去られた木下惠介という偉大な監督たちのメロドラマを発見するのに何カ月も費やせた。憂鬱さ、残酷さ、美的独創性、本当に素晴らしい映画とはなんなのかを思い出させてくれたんだ」と振り返る。

「楢山節考」(写真提供:Shochiku Company / Photofest / ゼータ イメージ)

そして「VORTEX」は黒澤明が死に直面した男を通して人間の真の生きがいを問うた「生きる」、木下惠介が姥捨山伝説をモチーフに母子の悲惨な別離を描いた「楢山節考」からインスパイアされていることを打ち明け、「『心中天網島』も非常に面白かった。日本映画は、魔法の箱みたいでまだまだ知らない作品がたくさんある」と語っている。

「VORTEX ヴォルテックス」は12月8日より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。ノエは4年ぶりの来日も決まっており、11月14日にヒューマントラストシネマ渋谷で行われる先行プレミアに登壇する。

「VORTEX ヴォルテックス」30秒予告

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(c)2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA

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