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ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第65夜 [バックナンバー]

選者 / 南波志帆「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」

舞台は終末世界、生き残った子供たちが好き勝手に暴れまくる

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ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。

第65夜は南波志帆が、終末後の世界を描いたNetflixシリーズ「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」を推薦。生き残るためそれぞれチームを組んだ子供たちによる、ユーモラスかつ感動的な成長物語を紐解く。

/ 南波志帆(コラム)、田尻和花(作品紹介)

ゾンビ作品あるある+友情、絆、葛藤、裏切りを詰め込んだ人間ドラマ

「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」場面写真

「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」場面写真

「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」場面写真

「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」場面写真

みなさん、こんばんは。「今宵も悪夢を」案内人のすいか生肉ゾンビが大好きな南波志帆です。
私はどこか笑えて、どこかグッとくるゾンビ作品が好きなのですが、今回は最近出会って面白かった、「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」をご紹介したいと思います。

主人公は、冴えない高校生のジョシュ。
生物兵器のミサイル爆弾により、大人はほとんどが溶けて死に、残りはグーリー(この作品でのゾンビの呼び方)に変異した世界が舞台。
爆発により、あっけなく世界は終わり、それは最高の出来事だったとジョシュは語ります。終末世界をポジティブに楽しんじゃう系主人公のヤケクソ感、ワクワクします。

今までの価値観や、富や名声も、一度リセットされてしまったことで、逆転できる人たちがいるのもまたゾンビ作品の興味深いポイント。
現にジョシュも、「拾ったもの勝ち」がルールとなった世界の中で、ギャングの家の物を好き勝手に使ったり、もらったり、エンジョイしています。なんてったって、文句を言う大人は消えたのですから。この設定、新しい。

グーリーは、「彼女から返信ない」とか「新しいレストランはウマいと評判だ」とか、一見普通の会話をしているように見えますが、死んだ瞬間、つまり変異直前に考えていた言葉を永遠に喋っています。これがなかなかにシュール。
そして、やはり無害ではありません。しっかり人を襲います。
核爆発により、なぜだか動物もでっかく突然変異していたり、バロン・トライアンフと呼ばれる子供を食べてしまう謎の悪党もいるようです。

ここまででも、かなりの敵の多さに、なんだか詰んでいる感じがしますが、この作品の面白い所はここから…!
生き残った子供たちは集団で縄張りを持ち、それぞれがトライブを組んでいるのです! いや、要素多すぎ!(笑)

大人がいなくなった世界で、子供がルールを決めて、好き勝手に暴れまくっているのも最高。まだ子供だからこそ、後先考えない行動を取るので、視聴者としては、不安と期待で胸がいっぱいになります。

ひょんなことから、ジョシュが助けたのは10歳の女の子アンジェリカ。すぐに何でも燃やそうとしたり、かなり危険な香りのする、火遊びが大好きな天才っ子です。気づけば一緒に旅をすることになり、次第にジョシュにはキャラクターの濃すぎる仲間たちができていきます。

ゾンビ作品あるあるの、冴えない主人公が独自のルールで生き残っていたり、何でも揃うショッピングモールを基地にしたり、ケガの手当てをするために離れた薬局に抗生剤を取りに行ったり、お決まりのパターンがありつつも、ゾンビ以外の様々な映画や作品の明らかなオマージュと思える設定やシーンも多く、ユーモラスに取り入れているからクスクス笑えます。
かと思えば、現代ならではの問題にも、突然シニカルに切り込んでいたり、ドキッとさせられる場面も多くて、そういう意味でも盛り盛りの盛りだくさんで、とにかく要素が多い…!! 多すぎる…!!(笑)

芽生える友情、絆、葛藤、裏切り。世界が終わり、大人たちも消えた社会の中で、少年少女が自らの抱えている問題やトラウマと向き合い、成長していく人間ドラマにグッときます。
最初は半笑いで観ていたはずが、いつの間にか感動して、しっかりこの世界観の虜になってしまいました。
そしてやはり、私がゾンビ作品を好きな理由である、「良いゾンビ作品は良い人間ドラマである」ということを再確認させられたのでした。

「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」場面写真

「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」場面写真

「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」場面写真

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南波志帆(ナンバシホ)

南波志帆

南波志帆

1993年6月14日生まれ、福岡県出身のシンガー。2008年11月にミニアルバム「はじめまして、私。」でデビューを果たし、デビュー10周年を迎えた2018年には初のベストアルバム「無色透明」をリリースした。2014年からNHK-FM「ミュージックライン」のDJを務めている。6月29日には自身初のディナーショー「THE NANBA DINNER SHOW~15th Anniversary~」を東京・ブルースアレイで開催する。

「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」(2019年製作)

「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」場面写真

「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」場面写真

米カリフォルニアを舞台にした本作は、爆弾投下後の終末世界を描く物語。体育会系ギャングやゲーマーたちがそれぞれ徒党と組んでのさばる中、はみ出し者の寄せ集めグループが生き抜いていくさまが映し出される。
17歳の高校生ジョシュをコリン・フォードが演じたほか、アリヴィア・アリン・リンド、ソフィー・シムネット、オースティン・クルートコディ・カースリー、ジャンテ・ゴッドロック、グレゴリー・カシアン、クリスタ・ロドリゲス、マシュー・ブロデリックらがキャストに名を連ねた。製作総指揮をアーロン・イーライ・コリート、ブラッド・ペイトン、ジェフ・フィアソンが担っている。

Netflixシリーズ「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」独占配信中

※「デイブレイク ~世界が終わったその先で~」の視聴推奨年齢は16歳以上

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読者の反応

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南波志帆 @nanba44

【お知らせ】映画ナタリーさんで案内人をさせていただいているホラー連載コラム「今宵も悪夢を」、今回は大人がいなくなった世界で、子供がルールを決めて、好き勝手に暴れまくっているのが最高なゾンビ作品をご紹介!敵も要素も多すぎて、盛り盛りの盛りだくさん…!笑
ぜひ読んでね〜🧠💥

🧟‍♀️🧟🧟‍♂️ https://t.co/s9yf1Dz4hR

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