坂本龍一が自身の活動を振り返った書籍発売、生前の日記では盟友・高橋幸宏にも言及

2

213

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 27 142
  • 44 シェア

今年3月に亡くなった坂本龍一の書籍「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」が明日6月21日に発売される。

坂本龍一 Photo by Zakkubalan (c)Kab Inc.

大きなサイズで見る(全2件)

坂本龍一「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」
Amazon.co.jp

「新潮」の2022年7月号から2023年2月号に連載された坂本の自伝「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」をまとめた本書。死期を悟った坂本サイドの提案で始まった本企画では、音楽制作や舞台芸術について、また吉永小百合SUGABTS)をはじめとする著名人との交流など、2009年以降の活動を闘病の様子も交えながら自らの言葉で振り返っている。聞き手は編集者・ジャーナリストの鈴木正文が担当した。

「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」書影

本書では鈴木が「著者に代わってのあとがき」を執筆しており、そこには生前の坂本がパソコンやiPhoneにつけていた日記の一部も引用された。日記には手術を受けたあとの気持ちなどがつづられたほか、YELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO)でともに活動した高橋幸宏が死去してから約1カ月後の今年2月18日には「NHKの幸宏の録画見る/ちぇ、Rydeenが悲しい曲に聴こえちゃうじゃないかよ!」と記されていたという。鈴木は「2022年9月23日のものには、『ぼくは古書がないと生きていけない/そしてガードレールが好き』との記述があります」「それからというもの、僕はガードレールを見るたび、坂本さんのこのことばを呼び戻しては、路傍にうずくまるものいわぬかれらに、坂本さんに代わって(というつもりで)、語りかけます。照る日曇る日、黙して僕たちを護ってくれてありがとう、ガードレールさん、と」と話している。

カバーに採用されたのは、坂本が療養のために訪れたハワイで出会った、90年以上前に作られたピアノの写真。彼はこのピアノをアメリカ・ニューヨークの自宅に持ち帰り、「自然に還すための実験」と称して庭で野晒しのままにしてきたという。そのほかにも、本書には東日本大震災後の「津波ピアノ」との出会いなど、自然と人間の関係についてのエピソードがいくつも登場する。

坂本龍一 コメント

連載開始時(2022年6月7日)

夏目漱石が胃潰瘍で亡くなったのは、彼が49歳のときでした。それと比べたら、仮に最初にガンが見つかった2014年に62歳で死んでいたとしても、ぼくは十分に長生きしたことになる。新たなガンに罹患し、70歳を迎えた今、この先の人生であと何回、満月を見られるかわからないと思いながらも、せっかく生きながらえたのだから、敬愛するバッハやドビュッシーのように最後の瞬間まで音楽を作れたらと願っています。
そして、残された時間のなかで、「音楽は自由にする」の続きを書くように、自分の人生を改めて振り返っておこうという気持ちになりました。幸いぼくには、最高の聞き手である鈴木正文さんがいます。鈴木さんを相手に話をしていると楽しくて、病気のことなど忘れ、あっという間に時間が経ってしまう。皆さんにも、ぼくたちのささやかな対話に耳を傾けていただけたら嬉しいです。

連載完結時(2022年6月7日)

2020年の末、自らに残された時間を悟ったぼくは、生きているうちにしておかなくてはいけないことをリストアップしました。そのひとつが、「音楽は自由にする」以降の活動を自分の言葉でまとめておくことでした。少々慌ただしいスケジュールだったけれど、聞き手の鈴木正文さんにも助けられながら、間もなくリリースされる「12」までの足跡を振り返ることができ、今はホッとしています。連載は完結しますが、もちろんこの先も命が続く限り、新たな音楽を作り続けていくつもりです。

鈴木正文 コメント

坂本龍一さんが最後の日々に書きつけたことばや思想の断片をとどめる「日記」のうち、2022年9月23日のものには、「ぼくは古書がないと生きていけない/そしてガードレールが好きだ」との記述があります。「あとがき」では、そのまま紹介し、コメント類は付加しませんでしたが、「古書がないと生きていけない」という吐露につづいて、「ガードレールが好きだ」という告白があったのには、虚をつかれました。それからというもの、僕はガードレールを見るたび、坂本さんのこのことばを呼び戻しては、路傍にうずくまるものいわぬかれらに、坂本さんに代わって(というつもりで)、語りかけます。照る日曇る日、黙して僕たちを護ってくれてありがとう、ガードレールさん、と。

「新潮」編集部 コメント

坂本龍一氏がガンのステージ4にあると診断され、医師から余命宣告を受けたのは、2020年12月のことでした。そこから、プロデューサーでもあるパートナーとも話し合い、「生きているうちにしておくべきことのリスト」を作ったといいます。
先日文庫化された2009年までの自伝「音楽は自由にする」以降の活動を振り返る、口述筆記のプロジェクトを進めることになったのも、その一環でした。21年後半に小誌編集部に相談があり、22年いっぱいの残された時間を使って、収録が進められました。
盟友の鈴木正文氏を聞き手として、坂本氏の口からは、横で聞きながら「そこまで明かしていいの?」と心配になってしまうほど惜しげもなく、創作秘話や昔の出来事、闘病中の日々のことが語られました。各章とも、約5時間の充実したインタビューの内容を踏まえています。そして、編集部が構成した原稿には毎回、坂本氏みずから細かくチェックを入れてくれました。時には「自分が原稿を見られるのは、これで最後になるかもしれないから、もっと強い章タイトルにした方がいいのでは?」ということもおっしゃりながら──。
連載最終回が掲載された「新潮」の発売日は2023年1月7日、坂本氏がお亡くなりになったのは3月28日の未明でした。もちろん、もっともっと長生きして、続きを語ってほしかった。しかし一方では、ギリギリ間に合った、という思いもあります。
この稀代の音楽家の「最後の言葉」を、ぜひ多くの方に読んでもらえたら嬉しいです。

この記事の画像(全2件)

読者の反応

  • 2

MORI Yasuyuki @Besucher

"坂本龍一が自身の活動を振り返った書籍発売、生前の日記では盟友・高橋幸宏にも言及 - 映画ナタリー"

いいけどなんでこの記事映画ナタリーなんだろ。 https://t.co/jsH9PHeKJK

コメントを読む(2件)

おすすめの特集・インタビュー

関連商品

このページは株式会社ナターシャの映画ナタリー編集部が作成・配信しています。 坂本龍一 / 吉永小百合 / SUGA / BTS / 高橋幸宏 の最新情報はリンク先をご覧ください。

映画ナタリーでは映画やドラマに関する最新ニュースを毎日配信!舞台挨拶レポートや動員ランキング、特集上映、海外の話題など幅広い情報をお届けします。