黒澤明「羅生門」を徹底解剖、非接触型のデジタル展示では撮影台本を比較分析

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「公開70周年記念 映画『羅生門』展」が明日9月12日から12月6日にかけて東京・国立映画アーカイブで開催。本日9月11日にプレス向け内覧会が行なわれた。

「公開70周年記念 映画『羅生門』展」より。

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「公開70周年記念 映画『羅生門』展」より。

黒澤明が監督を務めた「羅生門」の劇場公開から70周年を記念した本展。同作は公開翌年の1951年にヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、当時の日本映画の水準の高さを世界に知らしめた1作として知られる。

「公開70周年記念 映画『羅生門』展」より。

本展では計7章で「羅生門」の魅力を紹介。企画・脚本から、撮影、音楽、宣伝、世界への影響など多角的な視点から徹底解剖していく。本企画を担当した主任研究員の岡田秀則は「映画制作は多くのスタッフの共同作業で生まれるものですが、つい監督1人の責任として語られやすい。誰がどこでどのように貢献したのかを検証している」と、よりスタッフワークに焦点を当てた本展の意図を明かす。

フィルムセンター時代を含め、国立映画アーカイブが最初から最後まで1本の映画だけに着目して展示を行うのは今回が初めて。岡田は「羅生門」を選んだ理由を「色褪せない人気」「世界でもっとも著名な日本映画であり続けていること」と説明しつつ、「初めて『羅生門』に触れる人から本格的な映画ファンまで幅広い方々が楽しめる」とアピールする。展示の冒頭では約4分半のアニメーションで物語がわかりやすく紹介された。

「公開70周年記念 映画『羅生門』展」より。

のちに「七人の侍」「切腹」「砂の器」など70本以上の映画を手がける名脚本家・橋本忍のデビュー作でもある「羅生門」。第1章の「企画と脚本」では芥川龍之介の「藪の中」「羅生門」という2つの原作小説が、どのような変化を経て現在のシナリオになったのかが検証された。登場人物やストーリー展開の表や企画シナリオ、黒澤直筆の創作ノートからは、タイトルや登場人物の人数・設定の変更など、紆余曲折を経て決定稿に至った過程を知ることができる。

第2章「美術」では美術監督の松山崇が所蔵していたロケハンのアルバムや当時の雑誌記事から、巨大なオープンセットとして造形された荒廃した羅生門の制作過程を紹介。映画のタイトルバックにもなっている「羅生門」と大きく書かれた扁額は、高さ約120cm、幅約215cmという実寸大の再現画として用意された。

「公開70周年記念 映画『羅生門』展」より、第3章「撮影と録音」の非接触型デジタル展示の様子。

第3章「撮影と録音」では、非接触型のデジタル展示として撮影監督の宮川一夫とスクリプター野上照代の撮影台本の比較分析が行なわれた。入念に書き込まれた台本を本編映像や解説文ともにシーン別に同時に見せることで、その撮影の秘密に迫る。フィルムのカット尻をまとめた映像では、森のシーンで強烈な光を差し込ませるためレフ板の代わりに鏡が使われている様子も確認できた。

「公開70周年記念 映画『羅生門』展」より。

「公開70周年記念 映画『羅生門』展」より。

第4章「音楽」では有名なボレロ調のテーマを生み出した早坂文雄の音楽構成表やスケッチ楽譜、続く第5章「演技」では三船敏郎志村喬の撮影台本や京マチ子旧蔵のアルバムなどを紹介。また第6章「宣伝と公開」では1950年8月の初公開から、金獅子賞受賞後の凱旋上映、リバイバル公開など国内上映の軌跡をたどる。中には1951年、「羅生門」が歌舞伎に翻案されたときのプレスシートも。

「公開70周年記念 映画『羅生門』展」より。

締めくくりとなる第7章「評価と世界への影響」では、ヴェネツィア国際映画祭出品の経緯や受賞後の反響と影響を海外の資料から検証する。ここでは「羅生門」の映画祭出品を実現させるために尽力したイタリアの文化研究者ジュリアナ・ストラミジョリよる書簡や電報も展示された。

「公開70周年記念 映画『羅生門』展」では、10月20日から羅生門のセットを1/10スケールで再現したミニチュアも展示。さらに「羅生門」の上映も行なわれる関連上映企画「生誕100年 映画俳優 三船敏郎」も10月2日から開催される。

公開70周年記念 映画「羅生門」展

2020年9月12日(土)~12月6日(日)東京都 国立映画アーカイブ 展示室
※月曜は休室
開室時間 11:00~18:30 ※入室は18:00まで
入場料:一般 250円 / 大学生 130円 / シニア・高校生以下及び18歳未満、障害者(付添者は原則1名まで)、国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズは無料

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(c)KADOKAWA 1950

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じろさん(じろともトン) @jirotomoton

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