映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第4回 [バックナンバー]

誰やねん!どこやねん!何がしたいねん!でも死ぬほどおもろいんかい!「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

何も考えず“感覚”で観れる映画もあるんや

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

第4回で観てもらったのは「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。過去3作は観ておらず、しかもこれまでこのコラムで主張してきた「時代系」「人多い系」などのすべてが当てはまるため、心が折れかけた駒場だったが、観ていくうちに「こんな映画もあるんや」とのめり込んでいく。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

年明けから何を観させられてんねん

こんにちは、ミルクボーイ駒場です。

今年最初に鑑賞させてもらった作品は2015年公開「マッドマックス 怒りのデス・ロード」です。これまでに3作品があり、30年空いての4作目だと聞きました。今回に関しては予備知識もまったくなく、それまでの3本も観ていないのに4本目からで大丈夫なのかなとも思いましたが観させてもらいました。

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」場面写真(写真提供:Warner Bros. / Photofest / ゼータ イメージ)

観終わった率直な感想を言わせてもらうと、「年明けから何を観させられてんねん」でした。どんな映画なんですかこれは。めちゃめちゃじゃないですか。「マッドマックス」ファンの方は「はいはい、最初はそういうこと言うよね」となると思いますが、初めて観た者として言いたいことありすぎるんで先言わせてもらっていいですか? まず、マックスさんは最初に語りで自己紹介してくれたのでわかりましたが、あとのみんなは誰やねん! 何者やねん! 何がしたいねん! ほんでここどこやねん! どこでギター弾いてんねん! 乳首と乳首をクサリでつなぐな! 口に銀スプレー! 虫食べた! ずっと危ない!……など言い出したらキリがありませんよ。ただ一番言いたいのは、「いろんなこと意味わからんけど、死ぬほどおもろいんかい!」でした。

僕はこのコラムで、自分が苦手とする映画の特徴を毎回挙げてきました。地球以外の宇宙などを舞台にする「宇宙系」、現代ではない時代を舞台とする「時代系」、登場人物の多い「人多い系」などなのですが、この映画はそれらの苦手が全部入ってました。苦手全部盛りでした。宇宙ではないけど場所わからん、時代もわからん、人めちゃくちゃ多い。最初から心折れまくっていました。「観終わったあと絶対意味わからんやろうな、どんな感想書いたらいいんかな」とあきらめながら観ていました。

スタンスはフースーヤと近いものがあるのかな

が、始まって少しして、そんなこと別にどうでもよくなるくらいとんでもないド迫力の映像の連続で、「得意不得意とかを超越してくる、こんな映画もあるんや」と衝撃を受けました。感覚的には、ずっとジェットコースターの落ちるところが続いている感じ。「うわぁー!」と声が出そうなくらいのスピード感で手汗かきっぱなし。そして車のアクションがすごすぎて、反射的に自分の体も右へ左へ動いてしまう、初めてスーパーファミコンで「マリオカート」をしたとき、コントローラーでキャラクターをカーブさせればいいだけなのに自分の体も右へ左へ傾いてしまったときのあの感じでした。細かいストーリー云々とかは途中からもうどうでもよくなって、「なんとなくこの人たちは力を合わせてこのピンチを脱しようとしてるんやな、がんばれ!」というだけの気持ちになり、ただただ圧倒されっぱなしの2時間でした。あと、車や武器、キャラクターの装備品などもかっこいいところはめちゃくちゃかっこよく、気持ち悪いところは絶妙に気持ち悪い。アクションを見てたら装備品を見逃してしまって、装備品を見てたらアクションを見逃してしまう、とにかく目が離せない映画でした。

吉本の後輩にフースーヤというコンビがいるのですが、すごいパワーのあるネタでめちゃくちゃ面白いんです。言ってることに意味とかはない(本人たちからしたら絶対あると思う)けどとにかくめちゃくちゃ笑ってしまう。「考えなくていいです、でもとにかくこれ受け取ってください!」という感じでストレートにネタをぶつけてくるんです。鑑賞しながら、ジャンルは違えど、フースーヤと「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のスタンスは近いものがあるのかなと勝手に思いました。まだフースーヤのネタを知らない方は是非観てみてください。くせになると思います。

そして今回の「そんなこと言うてた?」ですが、鑑賞後、ネットのレビューを見るとさまざまな考察があったりして、「あれはそういう意味か」などという情報はいくつかありましたが、この映画に関しては、そんなん言ってても言ってなくても、わかってもわからんでもいいと思いました。難しいことを考えずに「マッドマックス」の世界に浸ればいいと思いました。今まで、映画は全部ちょっと難しいものかと思っていましたが、何も考えず“感覚”で観れる映画もあるんやとものすごく勉強になりました。年明けから素晴らしい作品に出会わさせてもらいました。ちょいちょい気持ち悪かったですが、なんか中毒みたいになってしまってまた観たくなってる自分がいます。こんな感じで、今年もたくさん映画を観て勉強していきたいと思います、よろしくお願いします。

編集部から一言

駒場さんから届いた原稿を読み進め、「うわ、たしかに今まで『苦手』と言われたこと全部が当てはまってるかも……これはご機嫌を損ねてコラムも最終回か……?」と肝が冷えましたが、そこからの「いろんなこと意味わからんけど、死ぬほどおもろいんかい!」で泣きそうになってしまいました。これまでのコラムの伏線がすべて回収されたような、いい意味での最終回のような最高の原稿をありがとうございます。もちろん連載はまだ終わりません。

個人的には劇場アニメ「KING OF PRISM by PrettyRhythm」を、本編にあたるテレビアニメ「プリティーリズム・レインボーライブ」をすっ飛ばして観たときに似た感動を味わいました。「意味わからんけど、死ぬほどおもろいんかい!」という体験ができる作品、読者の皆様もぜひ駒場さんに教えてあげてください。

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015年製作)

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」場面写真(写真提供:Warner Bros. / Photofest / ゼータ イメージ)

メル・ギブソン主演の「マッドマックス」「マッドマックス2」「マッドマックス サンダードーム」から約30年ぶり、4作目となる続編。舞台は資源の枯渇した近未来、愛する者を奪われ、荒野をさまよう元警官のマックスは、砂漠を支配する凶悪なイモータン・ジョーの軍団に捕らえられてしまう。しかしマックスは、ジョーの配下で反乱を計画する女戦士フュリオサらと力を合わせ、自由への逃走を開始する。監督・脚本は過去3作同様にジョージ・ミラーが担当。主人公マックスをトム・ハーディが演じた。またフュリオサの若き日を描く「マッドマックス:フュリオサ」が、2024年に公開予定。

駒場孝(コマバタカシ)

1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。

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