「桜の園」の“大航海”スタートに原田美枝子「劇場全体に大きな流れができる」

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PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」が、本日8月7日に東京・PARCO劇場で開幕。本日のプレビューオープン公演に先駆け同日、フォトコールと会見が行われた。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」フォトコールより。

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本公演は、アントン・チェーホフの「桜の園」を、ショーン・ホームズの演出で立ち上げるもの。今回は、サイモン・スティーヴンスが「桜の園」をアダプテーションした上演台本が使用される。

フォトコールでは本編前半の約50分が披露された。凍えるように寒い5月、領主ラネーフスカヤ(原田美枝子)が、娘のアーニャ(川島海荷)たちと共に、5年ぶりにパリからロシアに帰って来る。ラネーフスカヤの兄ガーエフ(松尾貴史)や養女ワーリャ(安藤玉恵)らは、女主人たちの帰還を喜ぶ。しかし留守中に領地を任せたガーエフに経営の才はなく、負債が膨らんでいた。借金返済のため、銀行は8月に領地である“桜の園”を競売にかけようとしている。“桜の園”の農夫の息子で、今は実業家のロパーヒン(八嶋智人)は「桜の木を切り払って別荘地として貸し出せば、競売は避けられる」と助言。しかラネーフスカヤは真剣に受け止めず……。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」フォトコールより。

ステージ中央は一段高くなっており、そこにはラネーフスカヤの屋敷の家具がぽつりぽつりと置かれている。また舞台上方にはコンクリートのようなオブジェが吊るされたほか、後方には横一列にずらりとフェンスが立てられ、広々としていながらもどこか閉塞感のある雰囲気をステージに醸し出した。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」フォトコールより。

エレガントな衣裳に身を包んだ原田は、軽やかな身のこなしで心のままに生きるラネーフスカヤを体現。その一方、亡くした幼い息子に言及するシーンでは強い感情をあらわにし、その落差で観衆を惹き付けた。八嶋はコミカルな動きと豊かな表情で、ロパーヒンを親しみを持てる人物として生き生きと描き出す。またラネーフスカヤの亡き息子の家庭教師トロフィーモフ役の成河は、ラネーフスカヤらがきちんとした服装をしているのに対し、ボサボサの髪の毛にくたびれた衣服といういでたち。成河はその佇まいや態度から、トロフィーモフを領主一家の中で異質な存在として立ち上げた。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」出演者。

原田美枝子

フォトコール後に行われた会見には、原田、八嶋、成河、安藤、川島、前原滉、松尾、村井國夫が出席。原田は「ショーンさんをキャプテンに、大航海に出ているような気持ち。パワフルで繊細で楽しいショーンさんの前で、俳優もつい自分たちの最大エネルギーを出してしまう」とホームズへの信頼を口にし、「ショーンさんは“動かす”ってこういうことか、と思えるような演出をしてくれる。俳優や空間、観客の心が動いて、劇場全体に大きな流れができると思う。ぜひいらしてください」と観客に呼びかけた。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」フォトコールより。

八嶋が「キャストがだんだん役に似てきた。だから八嶋は、(原田)美枝子にメロメロなんです!」と声を大にすると、八嶋演じるロパーヒンと思い合うワーリャ役の安藤が、後ろから八嶋を小突いて報道陣を笑わせる。八嶋は「ごめんなさい!」と安藤に謝りつつ、「時代の過渡期にいる人間を俯瞰して、『勝手だな』『人の話聞いてないな』とかツッコミながら観てほしい」と観客にメッセージを送った。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」フォトコールより。

成河は、今回の上演版が、元の戯曲を英語で現代語訳したバージョンに基づいていることに触れながら、「『桜の園』は博物館で観る古典ではない。現代の僕たちにも理解できる物語の核があります。ショーンはそれをきちんと言葉にして伝えてくれる」と話し、「今日はプレビューなので、明日は朝9:00からみんなで反省会をします。作品をもっと尖らせられたら」と笑い交じりに述べた。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」フォトコールより。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」フォトコールより。

安藤は稽古場を「ショーンさんが『Lovely!』『Well done!』と何度も言ってくれて、演じるのが楽しくて仕方なかった」と振り返り、「初めてチェーホフを観る方にもわかりやすい作品だと思います」と出来栄えに自信をのぞかせる。海外の演出家と初めてタッグを組むという川島は「セリフは日本語ですが、声のトーンや語尾の雰囲気から、自分がどんな気持ちでセリフを言っていたかショーンさんに全部バレてしまう。内面から演技を作っていくのがすごく印象的でした」とコメントした。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」フォトコールより。

過去にもホームズの演出作に出演した前原は「ショーンさんは『とりあえず生!』という日本語を覚えたり、セリフのナンバーを日本語で言ってくれたりする。そういうところに人としての素晴らしさを感じて、改めて『好きだな』と思いました」と微笑む。

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」フォトコールより。

また松尾が「ショーンさんの演出作に出るのが、子供の頃からの夢で……」と冗談を飛ばすと、村井が「うそつけ!(笑)」とツッコみ、座組の仲むつまじさをのぞかせる。さらに松尾は「ショーンさんはお客さんの想像力をとてもリスペクトしていて、それを前提に僕らも表現できる」とホームズへの信頼を口にした。ショーンの演出について村井は「人間の裏側や醜さを深掘りしてくれる」と述べ、「彼は涙が出るほど優しくてユーモアがある。稽古場の自由さと作品の美しさがとても感動的で、参加してよかったです」と胸の内を明かした。

東京公演は8月29日まで行われ、本作はその後9月2日に宮城県 東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館) 、6日に広島・上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)、13日に愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、16・17日に大阪・森ノ宮ピロティホール、20日に高知・高知県立県民文化ホール オレンジホール、23・24日に福岡・キャナルシティ劇場でも上演される。演出のホームズからのコメントは以下の通り。

ショーン・ホームズ コメント

PARCO劇場で3作目となる演出の機会をいただいたことをとても光栄に思っています。

そしてさらにそれがチェーホフの傑作戯曲「桜の園」であることは非常に光栄なことです。私の長きにわたる友人でありコラボレーターのサイモン・スティーヴンス版の「桜の園」は、ダイナミックでありながら、原作に忠実で、その奥深さ・矛盾・ばかげた不条理を捉えています。

原田美枝子さんをはじめとする、作品への情熱と才能に溢れるキャストの皆様とご一緒できたこと、そして「セールスマンの死」を共に創ったクリエイティブチームの皆様と再びご一緒できたことは本当に大きな喜びでした。このプロダクションが、同じようにまた観客の皆様を刺激し、楽しませ、そして感動させるものになることを願っています。そして、7日のプレビュー公演で初めて観客の皆様とこの作品が出会う瞬間を楽しみにしています。

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PARCO劇場開場50周年記念シリーズ「桜の園」

2023年8月7日(月)~29日(火)※8月7日はプレビューオープン公演。
東京都 PARCO劇場

2023年9月2日(土)
宮城県 東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)

2023年9月6日(水)
広島県 上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)

2023年9月13日(水)
愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール

2023年9月16日(土)・17日(日)
大阪府 森ノ宮ピロティホール

2023年9月20日(水)
高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール

2023年9月23日(土・祝)・24日(日)
福岡県 キャナルシティ劇場

作:アントン・チェーホフ
英語版:サイモン・スティーヴンス
翻訳:広田敦郎
演出:ショーン・ホームズ
出演:原田美枝子八嶋智人成河安藤玉恵川島海荷前原滉川上友里竪山隼太天野はな市川しんぺー / 松尾貴史村井國夫

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ノリオ @norioNY

【公演 / 会見レポート】「桜の園」の“大航海”スタートに原田美枝子「劇場全体に大きな流れができる」(舞台写真あり) https://t.co/wuYZCrMZcN

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