熊川哲也、オーチャードホールとのフランチャイズ契約に「襟を正して」

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去る11月1日、熊川哲也率いるKバレエと東京・Bunkamura オーチャードホールがフランチャイズ契約を締結。これに伴い、記者懇談会が本日26日に東京都内で行われ、熊川が出席した。

熊川哲也

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KバレエとBunkamura オーチャードホールのフランチャイズ契約は、カンパニーと劇場の相互協力によって芸術文化の活動地盤を強化することや、劇場芸術振興の発展を目的としたもの。なお本契約により、今後は東京都内でのKバレエの公演のほとんどがオーチャードホールで行われる。

懇談会には熊川をはじめ、東急文化村の中野哲夫代表取締役社長が出席。記者たちが拍手で迎える中、会見場の座席の中央に設けられた通路を歩いて登場した熊川は、「結婚式みたいだね」と笑い交じりに呟いて記者たちを和ませる。その後改めて、中野社長と共に取材に応じた。

左から熊川哲也、東急文化村の中野哲夫代表取締役社長。

中野社長はフランチャイズ契約の締結に際して、来年2019年にBunkamuraが30周年を迎えることに言及し、Bunkamuraのオープン当初と現在を比較しながら「渋谷は大きく変わろうとしている。新たな時代を迎え、30年前と同じ活動でいいのか?という思いがありました」と述べた。そこで中野社長は力のある芸術団体と連携することに注目したと言い、「お客様はホールカレンダーでKバレエの公演を大体把握できますし、Kバレエにとっても公演が決まっていれば稽古の予定が立てやすい。我々も編成の計画が立てやすくなりますし、三者にとって素晴らしい結び付きになると思います」とフランチャイズ契約のメリットをアピールする。さらに中野社長は「30年後や100年後に『バレエ界はあそこで転換点を迎えた』と思われるくらい、新たな素晴らしい文化をKバレエさんと作っていきたい」と期待を込めた。

熊川哲也

「オーチャードホールは自分の中で大きなウェイトを占めている」と話す熊川は、自身のキャリアと劇場の関わりを紹介しながら、「幾度となくこの劇場に支えられてきた」と述懐する。フランチャイズ契約の締結について、「僕はこの劇場が大好きですし、契約によってこの劇場のブランディングのお手伝いをすることになる。改めて襟を正してやっていきたい」と意気込むと共に、Kバレエが19年に20周年を迎えることに触れ、「劇場の30周年と共に、節目の年にスタートが切れる。よい作品を生み出せれば」と抱負を述べた。

熊川哲也

熊川は劇場のある渋谷への思いも語る。彼は「渋谷は理想的な街」だと言い、日本のサブカルチャーやポップカルチャーが活発に海外へと発信されていることを例に挙げながら、「渋谷はサブカルチャーのスタート地点ですし、同時に劇場も多くてブロードウェイ化してきている。ハイカルチャーとサブカルチャーを融合・両立できれば、ここは素晴らしい街になると思います。サブカルチャーを発信する若者にも、ゆくゆくはハイカルチャーにも興味を持ってもらって、互いを尊重しながら共存共栄していければ」と期待をのぞかせる。

熊川哲也

また19年9・10月の新作「マダム・バタフライ」について熊川は、オペラで知られる同作をバレエとして上演する動機として、イタリア・ミラノのスカラ座でオペラ版を観劇したことを挙げる。「オペラがすごくて、そこから妄想が始まっちゃったんですけど……(笑)。『マダム・バタフライ』に関しては自分の中でスイッチのオン・オフが激しくて、創作が難しい」と苦戦していることを明かしつつ、「ピンカートンがアメリカにいた時代を1幕に入れて、日米関係を見せられたら。彼が日本で受けたカルチャーショック、恋の話などで内容を膨らませたい」と構想を語った。

熊川哲也

さらに話題は、19年1月の「ベートーヴェン 第九」で自身がダンサーとして舞台に立つことにもおよび、ひさしぶりの出演に熊川は「失礼なようですが、お客様や自分のためというより、カンパニーの若者のために踊りたい」と明かす。続けて自身の若手時代を振り返りながら「当時のスターたちと一緒に舞台に立ち、カーテンコールで拍手をいただいたことは自分の中で大きかった」「伸び盛りの若手と自分が、舞台上で同じ空気を吸うことが大切」と話し、「(自身の踊る姿を)見せてあげられるなら見せてあげたい。それに尽きます」と胸の内を語った。

20周年を目前にしたKバレエには、熊川は「人の3倍の早さでやってきたなと思う」「バレエダンサーは生身。世代交代をしっかり進めてきていますし、マネジメント業でも若手を育てないといけない」と話し、「芸術監督は続けますが、今後は新たな人材を舞踊監督としてKバレエの中に置きたいと考えています。人選はこれからですが、僕は現場を譲って演出や創作をしていけたら。やはり作品を生むことがすべてなので」と展望を語り、懇談会を締めくくった。

「こんな感じがいいでしょ!?」とポーズを取りながら撮影に応じる熊川哲也。

Kバレエでは今後、12月6日から9日まで「くるみ割り人形」を、19年1月31日から2月3日まで「『ベートーヴェン 第九』・『アルルの女』」をBunkamura オーチャードホールで上演。その後のラインナップには、19年3月の「カルメン」、6月の「シンデレラ」、9月に上演される新作「マダム・バタフライ」、11月の「くるみ割り人形」といった演目が並んでいる。

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Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY Winter 2018「くるみ割り人形」

2018年12月6日(木)~9日(日)
東京都 Bunkamura オーチャードホール

演出・振付:熊川哲也
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

キャスト

マリー姫:中村祥子、浅野真由香、小林美奈、矢内千夏
くるみ割り人形 / 王子:遅沢佑介、山本雅也、堀内將平、栗山廉
ドロッセルマイヤー:宮尾俊太郎、杉野慧
クララ:河合有里子、吉田このみ、大歳千弘、瀬屑真紀
雪の王:石橋奨也、益子倭、奥田祥智
雪の女王:毛利実沙子、戸田梨紗子、大井田百

Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY Winter 2019「『ベートーヴェン 第九』・『アルルの女』」

2019年1月31日(木)~2月3日(日)
東京都 Bunkamura オーチャードホール

「ベートーヴェン 第九」

演出・振付:熊川哲也
音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
出演:熊川哲也、中村祥子 ほか

「アルルの女」

振付:ローラン・プティ
音楽:ジョルジュ・ビゼー

キャスト

フレデリ:遅沢佑介、宮尾俊太郎、益子倭
ヴィヴェット:中村祥子、荒井祐子、毛利実沙子

Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY Spring Tour 2019「カルメン」

2019年3月
東京、宮城、福島

Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY Spring Tour 2019「シンデレラ」

2019年5月・6月
東京、静岡、大阪

Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY Autumn Tour 2019「マダム・バタフライ」

2019年9~10月
東京 ほか

Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY Winter Tour 2019「くるみ割り人形」

2019年11~12月
東京 ほか

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