土岐麻子の「大人の沼」 ~私たちがハマるK-POP~ Vol.12(後編) [バックナンバー]

若い才能が殻を破る瞬間、&TEAMのこれから

Soma Genda(HYBE LABELS JAPANサウンドディレクター)と語る“指導者”側の思い

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シンガー土岐麻子が中心となり、毎回さまざまな角度からK-POPの魅力を掘り下げている本連載。第12回ではHYBE LABELS JAPANでサウンドディレクターを務め、同レーベルのオーディション番組「&AUDITION - The Howling -」(以下「&AUDITION」)に出演していたSoma Gendaをゲストに迎えている。

前編に続く後編では、若い才能をプロとして輝かせるためにどう導いていくかを2人が語り合っていく。普段あまりオーディション番組を観ない土岐だが、「&AUDITION」には一気にハマったという。その理由とは?

取材・/ 岸野恵加 撮影 / 堀内彩香

ステージを好きで居続けてほしい

土岐麻子 番組を通して、Somaさんのファンも確実に増えましたよね? SNSで「Somaペン(ファン)」を名乗っている方もたくさん見かけましたし、「FUMA、YUMA、Soma」ってくくっている方がいたり(笑)。愛されてるなあと思ってました。もっとSNSとかで自分をアピールしたらSomaさんファンがどんどん増えると思いますけど、あまり更新されないですよね。

Soma Genda 「FUMA、YUMA、Soma」(笑)。僕は基本的に露出したくないんですよ。最初はギタリストを目指していましたけど、だんだんステージに上がることがあまり得意じゃないことに気付いたんです。制作する側に回ったら、それがすごく楽しくて。

土岐 ステージが得意じゃないっていうのは、どういうときに感じたんですか?

Soma Genda


Soma 若いときは楽しめていたんですけどね。仕事でステージに立つ感覚に自分が合わなくなったというか、歳を重ねていくにつれて気になることが多くなりすぎちゃって。シンプルに楽しめない状態になってしまった気がします。

土岐 なるほど。でも、そうしたステージに上がる苦しさも知っているからこそ、今後&TEAMのメンバーとステージや作品を作り上げていくときに、いい理解者として頼りになる存在になるんだろうなと思います。

Soma 彼らには自分みたいにはなってほしくないなと思いますね。ステージを好きで居続けてくれたらと願っています。

なぜオーディション番組を観ない土岐麻子が「&AUDITON」にはどハマりしたのか

──土岐さんは普段あまりオーディション番組を観るタイプではないそうなんですけど、今回Somaさんが「大人の沼」にゲストで出てくださることが決まって、土岐さんに「&AUDITON」を通して観ていただいたんですよ。そしたらすごいスピードでハマったようで、「あれもう観ましたか?」っていろんな動画のURLが送られてきて(笑)。どこがそれほどまで夢中になるポイントだったんでしょうか?

土岐 オーディション番組って、これまでチラ見してきたものは、胸が痛くなるばかりで苦手だったんです。でも「&AUDITION」は違って。誰かを蹴落とすということもなく、みんなで協力してデビューを目指すというシステムもよかったですし、誰かが悪く見えてしまうような演出や過剰なストーリー性もなかったのが好きでした。あの世代の子たちのふんわりした感じがそのまま見えたというか。あとは15人のキャラクターがそれぞれとってもよくて。最初は15人なかなか覚えられないと思ったけどすぐに覚えたし、誰かが苦しい思いをして泣くとかもなくて、1人ひとりに感情移入できてハマれました。

土岐麻子

Soma そうですね。誰かが途中でいなくなるということもなかったですし。

土岐 オーディション番組に若いうちに出ても、そのあとの人生のほうが長いじゃないですか。「この子はこのイメージをこの先ずっと背負っていくのかな」と心配になっちゃうこともあると思うんですが、「&AUDITION」は安心して観られました。Somaさんの立場ではどう思いましたか? 番組として放送される中で未来ある若い子に指導するというのは、大人としての緊張感がありますよね。

Soma それはもちろんあるんですけど、彼らが挑戦する動機にはきっと「世の中に自分のことを知ってほしい」という思いがあって。自分のことを知ってもらえることが、デビューを目指している方たちにとっては喜びになるのだろうなと思います。知ってもらったうえで、また違う自分も見えてくる。それはきついときももちろんあるだろうけど、いいことなんじゃないかなと思いますね。

土岐 なるほど。今後も全員のことを応援していきたいです。

左からSoma Genda、土岐麻子。

「うまい」から「感動させる」へ──殻を破るには

土岐 Somaさんが指導していく中で、印象的だった場面はありますか? メンバーの成長や飛躍を特に感じた瞬間とか。

Soma 全員にもちろんそれぞれあるんですけど……ファイナルラウンドのステージでも話したんですが、YUMAはすごく花開いた感じがしました。彼はダンスも歌も器用にこなせるんだけど、印象に残るようなパフォーマンスをすることが課題で、ずっと悩んでいたんです。うまいがゆえに無難にこなしているだけのように見えることもあるというか。「うまい」と「感動する」って異なるじゃないですか。それを乗り越えて、感動させられるパフォーマンスを見せてくれたことがうれしかったです。

土岐 Somaさん、「殻を破った」って表現されていましたよね。すごく印象的でした。私も推しとかそういう観点ではないんですけど、YUMAさんはデビューメンバーに入ってくれたらいいなと思っていたんです。ダンスも上手だし、声も特徴的で。ファイナルラウンドは私も現地の取材席で観覧させてもらったんですが、ちゃんと自分のパフォーマンスをしていた気がしましたね。殻を破るって、「こうしたらできる」という目安があるものでもないし、すごく難しいですよね。

Soma 若いから、こんなに短期間でもそれだけ成長できたのかなと思います。僕が今から殻を破ろうとしたら時間も労力もかかると思うんですけど、10代は成長が早いなって。

土岐 具体的には、どうやって殻を破れたと思いますか?

Soma 僕や誰かが導ききれることではないので、本人の努力ですよね。自分の中から何かが出てきたら変われる。今までやってきたことを全部捨てる勇気も必要だったのかもしれません。

──土岐さんはファイナルラウンドで実際に彼らのパフォーマンスを目の前で観てみて、どう思いましたか?

土岐 迫力がありましたね。番組ではカメラが追うものを観ていたけど、そうではなく自分の席からの定点で全体を観ていたら、脚立を使うパフォーマンスのときにメンバーがキビキビと動いている姿が見えたり。躍動感が保たれていて、プロだなあと思いました。

土岐麻子

Soma 土岐さんは、普段からK-POPアーティストのライブはけっこう行かれるんですか? パフォーマンスをどんなふうに観ていらっしゃるのかなと。

土岐 私がK-POPにハマったのはコロナ禍に入る直前なんですよ。なのでライブをなかなか観られない期間が長かったんですけど、この間NCT 127のドーム公演に行ったのと、推しのMONSTA X、BLACKPINKは観ましたね。

Soma 実際に観てみていかがでした?

土岐 それぞれ全然違いますよね。NCT 127は、指先まで神経が行き渡ったようなパフォーマンスを最初から最後までしていて。最後のほうにものすごくタイトな曲を持ってきても、しっかり魅せちゃう。身体のコントロールとマインドコントロールがすごいと思いました。MONSTA Xは人間的で、ロックバンドのライブのように、最後は開放的になる感じ。BLACKPINKは迫力で見せるというよりは1人ひとりのキャラがすごく立っていましたね。K-POPのあらゆるグループに共通して言えるのは、とにかくみんな動きがそろってる。「&AUDITION」のみんなも、すごくシンクロしているなと思いました。

Soma ダンスでも高いクオリティを追求していますよね。彼らを見ていると、もはやアスリートだなと思います。

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メンバーの人間性を生かした曲作りを

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🅦🅔 & 🅛🅤🅝🅔́ @lunewelune

これは後編

Soma先生、ずっとありがとうございます😭

#War_Cry #Dropkick #チンチャおかしい #規格外_ALIEN #andTEAM #FirstHowling_NOW #andTEAM #앤팀
@andTEAM_members https://t.co/kiVogOg1o0 https://t.co/FfclpFAeen

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