濱口竜介や三宅唱が「ミツバチのささやき」語り合う、共感点は「アナかわいい」

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連続講座「現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜」が本日1月30日にスタート。第1夜はビクトル・エリセ監督作「ミツバチのささやき」が東京・ユーロスペースで上映され、映画監督の濱口竜介三宅唱、映画研究者の三浦哲哉がトークを行った。

左から濱口竜介、三宅唱、三浦哲哉。

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「ミツバチのささやき」の上映スケジュールはこちら

「ミツバチのささやき」 (c)2005 Video Mercury Films S.A.

日本ではミニシアターという呼称で親しまれているアートハウス。本企画では日本のアートハウスの歴史を彩ってきた作品を上映し、その映画の魅力や“アートハウス”の本質的な意味を改めて話し合っていく。1973年に製作された「ミツバチのささやき」は、スペインの小さな村を舞台にしたエリセの長編デビュー作。主人公の少女アナが体験する、現実と空想の交錯した世界がつづられる。

三宅唱

本日登壇した3人はともに映画の勉強会を行っているメンバーということで、「ミツバチのささやき」の考察から映画の見方まで大いに盛り上がった。三宅は「俺、今日までスクリーンで(本作を)観たことなくて。最初は確か大学の部室の壁で観たんですよ。だからありがとうございます!」と感謝し、「まず、誰が観たって『アナかわいい』。愛おしさにあふれて目が離せなくなる。今日改めて観て、とにかくアナの目がいいんだとわかりました。瞬き1つ見逃さないぞという覚悟で目を撮る、そんな緊張感が伝わりました」と作品の魅力に触れる。

濱口竜介

三浦哲哉

濱口は初鑑賞した当時を振り返り、「率直に言って寝ました」と告白。「でも、いいもの観たなという気持ちになって。それはきっと何か心に来るものがあったから。一番は『アナかわいい』なんだと思いますけど」と三宅に同調した。また「この映画は視覚的な側面も素晴らしいけど、一方で聴覚によって画面の外を感じることができる。顕著なのは影絵のシーン。こんなに視覚を遮断していいのかと驚きました」と語ると、三浦も「(ロベール・)ブレッソンの『トーキー映画は沈黙を発明した』という言葉がありますが、それは映画館じゃないとわからない」と音の感じ方について言及する。

ここから邦題に関する話題へ。原題を直訳すると「巣箱の精神」ということで、三宅は「きっと悩んだと思うんです。まず思いつきそうなのは『アナのまなざし』とか。結果、“ささやき”という画面に映ってないものへの想像力を与えてくれる邦題になった。このタイトルだからこそ『ささやきってなんだろう?』と注意して聴いてみようと思えるのかも」と考えを巡らせた。

左から濱口竜介、三宅唱。

イベントでは、中継先の観客からの質問コーナーも。「映画の見方がわからない。意味を考えてしまい、感じ取ることができない」という相談に対して、三宅は「僕も最近同じようなことを濱口さんに聞きました」と切り出し、「そのとき言われたのが『撮影現場にいるかのようにグッと集中して観ている』ということ。だから俺も、目の前で被写体が演技をしているかのようにスクリーンを注視しようと思いました。例えばiPhoneで何かを撮る瞬間もちょっと集中すると思うんです。その感覚で映画を観ると、いいね!とか駄目だ!というのがわかってくるかもしれません」と心構えを伝授した。

連続講座「現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜」ビジュアル (c)2020AHG

最後に三浦は「『ミツバチのささやき』にはイニシエーション(通過儀礼)というテーマがありますが、僕もユーロスペースで映画を観て“イニシエーション”だと感じた作品があって。でもスクリーンで観ていなかったらきっとそう思えていませんでした。(映画館では)自分がアナ状態になれることがある」と映画館という存在のありがたみを語る。三宅も「生活の延長線上で映画を観れるのがいい。ふらっと寄れる場所として映画館があるのはただただ楽しい」と述べ、濱口は「映画館という環境で椅子に固定されていると、ほんの少しだけ自分がカメラやマイクに近い状態になったように感じるんです。そういう状態じゃないと(集中して)観られない映画って多いですけど、“アートハウス系の映画”と映画館は最高の組み合わせ。映画館で観ることで受け止められる作品もあると思います」と持論を展開した。

「「現代アートハウス入門」は2月5日まで東京・ユーロスペースほか全国のミニシアターで開催。

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連続講座「現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜」

開催中~2021年2月5日(金)
料金:30歳以下 1200円 / 31歳以上 1800円

第2夜

1月31日(日)
<上映作品>
「動くな、死ね、甦れ!」(監督:ヴィターリー・カネフスキー)
<登壇者>
山下敦弘 / 夏帆

第3夜

2月1日(月)
<上映作品>
「トラス・オス・モンテス」(監督:アントニオ・レイス、マルガリーダ・コルデイロ)
<登壇者>
小田香 / 柳原孝敦

第4夜

2月2日(火)
<上映作品>
「緑の光線」(監督:エリック・ロメール)
<登壇者>
深田晃司

第5夜

2月3日(水)
<上映作品>
「山の焚火」(監督:フレディ・M・ムーラー)
<登壇者>
横浜聡子 / 矢部太郎

第6夜

2月4日(木)
<上映作品>
「阿賀に生きる」(監督:佐藤真)
<登壇者>
小森はるか / 清田麻衣子

第7夜

2月5日(金)
<上映作品>
「チチカット・フォーリーズ」(監督:フレデリック・ワイズマン)
<登壇者>
想田和弘

<開催劇場>

東京都 ユーロスペース
神奈川県 シネマ・ジャック&ベティ
群馬県 シネマテークたかさき
宮城県 フォーラム仙台
愛知県 名古屋シネマテーク
長野県 長野松竹相生座・長野ロキシー
新潟県 新潟・市民映画館シネ・ウインド
石川県 シネモンド
大阪府 第七藝術劇場、シネ・ヌーヴォ
京都府 京都シネマ
兵庫県 元町映画館
広島県 横川シネマ
愛媛県 シネマルナティック
福岡県 KBCシネマ1・2
大分県 シネマ5
熊本県 Denkikan
沖縄県 桜坂劇場

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第七藝術劇場 @7_gei

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