「不死鳥よ」は“男版宝塚”、猿之助・隼人が「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」に向け意気込み語る

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5月に東京・明治座で実施される明治座創業百五十周年記念「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」の合同取材会が、昨日4月11日に東京都内で行われた。

左から中村隼人、市川猿之助。

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本公演では、1979年に植田紳爾の作・演出で初演されて以来、今回が2度目の上演となる「不死鳥よ 波濤を越えて ―平家物語異聞―」、そして1984年に明治座で初演され、今回約30年ぶりに上演される「御贔屓繫馬」が、それぞれ昼の部・夜の部で披露される。

市川猿之助

合同取材会には、市川猿之助中村隼人が登場。藤間勘十郎と猿之助が演出を担う「不死鳥よ 波濤を越えて ―平家物語異聞―」では猿之助が平知盛役、隼人が楊乾竜役を演じる。「御贔屓繫馬」で猿之助は相馬太郎良門ほか6役を早替わりで、中村隼人は台屋の四郎次と源頼光の2役を勤める。猿之助は演目について「最初は昼夜共に古典で、と考えていたのですが、明治座の座付きのお客様に観ていただくには、もう少し趣向を凝らそうかなと。『不死鳥よ 波濤を越えて ―平家物語異聞―』は、(市川)猿翁さんが『男宝塚がやりたい』と言い出して(笑)、植田先生に作ってもらった作品。歌舞伎っぽさが微塵もなく、初演は梅コマ(梅田コマ劇場)で行われましたが、今この作品ができるのは、明治座ぐらいじゃないでしょうか。また夜の部『御贔屓繫馬』は、明治座で生まれた復活狂言。鶴屋南北のこってりとした歌舞伎で、派手な所作事が続きます。多彩な顔ぶれでお送りし、お客様を飽きさせないような演目立てになっています」と説明する。

なお最終日の5月28日公演のみ、「花形公演」として、一部配役が異なる「御贔屓繫馬」が昼夜公演共に上演される。隼人が通常公演で猿之助が演じた6役、猿之助が源頼光、中村歌之助が台屋の四郎次を勤める。「花形公演」について、猿之助は「猿翁さんが明治座公演を行うとき、必ず勉強会として、若手が大役を勤める公演も行っていました。今回それをやりたいと明治座にお伝えしたところ、快諾を得られた」と述べる。

中村隼人

隼人は「明治座には2月に『巌流島』で立たせていただきました。明治座のお客様に、歌舞伎俳優としての僕をお見せしたい。一生懸命やっていければ」と意気込みを語る。まず「不死鳥よ 波濤を越えて ―平家物語異聞―」について「公演に向け資料映像を観たところ、本当に“男版宝塚”で。歌があったり、踊りがあったり、どちらかというとスーパー歌舞伎寄り。知盛というと、歌舞伎ファンの間で碇を持って死ぬ、“碇知盛”のイメージが強いと思うのですが、本作は、知盛が実は助かっていて、異国の地で一旗揚げようとするも、結局異国の計略にはまって命を落とす……という内容で、1979年初演とは思えない作品。これが新たに勘十郎先生と猿之助兄さんの演出で、どういうふうに変わっていくのか、楽しみにしています」と微笑む。

自身が演じる楊乾竜役について「前回は(市川)段四郎のおじさまがやっていたお役。知盛と心の中で意思疎通できている大人な人物なので、お芝居の核となる知盛を支えていけるように、役を作っていきたい」と述べつつ、「僕自身、日本人以外の役をやるのは初めてなのですが、舞台の性質上、日本語を話しているので安心してください(笑)」とちゃめっ気たっぷりに話し、周囲の笑いを誘った。

また「御贔屓繫馬」については「父(中村錦之助)が出たことのある作品」と言及し、「『花形公演』の開催は夢にも思っていなかった」と驚きを声ににじませる。「早替わり自体は、猿之助兄さんの代役稽古でさせていただいたことはあるのですが、立役、女方が入り交じる6役早替わりは初めて。23日間、お兄さんの姿をいつも以上に見て勉強したい」と話す。さらに「女方が課題。約6年ぶりにさせていただくので、がんばってやっていければ」と述べると、猿之助は「やっぱり『蜘蛛の絲宿直噺』をやるには、女方ができないと。錦之助の兄さんも、若い頃は女方としても活躍されていたので、隼人にもがんばってほしいですね。でくのぼうになっちゃうのか、ちゃんとした女方になるのか。そこが課題ですね」と温かい眼差しを向ける。

猿之助は「不死鳥よ 波濤を越えて ―平家物語異聞―」を“レビュー”と表現し、「レビューに挑むのは初めてですが、宗家(勘十郎)は、OSK日本歌劇団の演出をつけられていますし、舞踊的な要素は宗家にお任せするとして、僕自身は不安はない」と笑顔を見せる。さらに「年を取ると挑戦しなくなるので、今回は1曲歌ってみようかなと。最近、ジェシー(SixTONES)とばっかり遊んでいるんですけど、ジェシーからも『歌ってくださいよ』と背中を押されて。自信はないので、ジェシーにも『うまく歌うにはどうしたらいいの?』って聞いています(笑)」と明かし、「自分が歌うと、松本白鸚のおじさんのすごさが、ますます身に染みますね。先輩にそういう方がいるから、できないとは言えない」と語る。

そして「植田先生は、初演では演出も手がけられていました。直接お話はできていないのですが、『知盛は常に日本を大事にしていて、大和魂を持って死んでいくということだけは大事にしてほしい、あとは自由に』との伝言を受け取っています。宝塚の俳優ではないので、足りないところはあるかと思いますが、歌舞伎俳優ならではの作品にしたいですね。先生には、歌舞伎俳優も歌えるようになったんだね、と思っていただければ(笑)」と目標を掲げた。「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」は5月3日から28日まで。

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明治座創業百五十周年記念「市川猿之助奮闘歌舞伎公演」

2023年5月3日(水・祝)~28日(日)
東京都 明治座

昼の部

「歌舞伎スペクタクル『不死鳥よ 波濤を越えて ―平家物語異聞―』」

作:植田紳爾
演出・振付:藤間勘十郎
演出:市川猿之助

出演
平知盛:市川猿之助
白拍子若狭 / 紫蘭:中村壱太郎
衛紹王:中村米吉
楊乾竜:中村隼人
蓮花:市川男寅
佐伯義澄:中村福之助
伊藤利正:中村歌之助
難波盛広:市川青虎
宰相武完:下村青
監物為春:嘉島典俊
師の尼:市川笑三郎
白拍子陽炎:市川笑也
入江相政:市川猿弥
景山高次:石橋正次
平通盛:中村鴈治郎

夜の部

「三代猿之助四十八撰の内『御贔屓繫馬』」

作:四世鶴屋南北
脚本:奈河彰輔
脚本・演出:市川猿翁
補綴・演出:石川耕士
演出:市川猿之助

出演
相馬太郎良門 / 女童熨斗美 / 小姓澤瀉 / 番新八重里 / 太鼓持彦平 / 傾城薄雲実は土蜘蛛の精:市川猿之助
桔梗の前:中村米吉
台屋の四郎次 / 源頼光:中村隼人
滝夜叉姫:市川男寅
御厨正頼 / 碓井貞光:中村福之助
卜部季武:中村歌之助
百足のお百:市川團子
石蜘法印 / 坂田金時:市川青虎
仲居お万:市川寿猿
熊手のお爪:下村青
猪熊入道:嘉島典俊
金時女房八重菊:市川笑三郎
貞光女房桐の谷:市川笑也
伊賀寿太郎 / 平井保昌:市川猿弥
渡辺綱:市川中車
源仲光:市川門之助

※5月28日は「花形公演」として、一部配役の異なる「御贔屓繫馬」が昼夜共に上演される。

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もりすん @peroshenko

市川猿之助って今まさに公演中だったよね。宝塚の植田紳爾御大が演出したレヴュー風の歌舞伎で気になって調べたけどすごい高い席しか残ってなくて断念したのだが、まさかこんなことになるなんて。
https://t.co/M5yRJ1776q

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