北海道芸人の上京物語 第1話 [バックナンバー]

とにかく明るい安村の上京物語(前編)

旭川での野球、父親とのごはん、スノボの記憶

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錦鯉が「M-1グランプリ2021」で優勝して以降、今年2022年の「アメトーーク!」(テレビ朝日)、「やすとものいたって真剣です」(ABCテレビ)には北海道出身の芸人たちが集い、地元トークに花を咲かせた。錦鯉・長谷川はその年齢やキャラクターで注目を集めているが、北海道出身の芸人が「M-1」を制覇したのは彼が初めてだ。

そんな流れの中で企画した連載が「北海道芸人の上京物語」。芸人たちに地元への思いや東京での活動、北海道あるあるなどを語ってもらい、最終的には「北海道芸人」とは何か?といった共通点を探ってみたい。初回は旭川市出身のとにかく明るい安村に北海道出身の記者が話を聞いた。前編では高校卒業まで生まれ育った旭川での野球、父親とのごはん、スノーボードなどのエピソードを紹介する。

取材・ / 成田邦洋

長靴で雪を踏み固めてグラウンド50周

──安村さんは旭川市出身ということで、住んでいたのは高校卒業までの期間でしょうか?

高校までずっといました。兄貴が2人いて男3人兄弟なんですけど、小さい頃は知り合いの男の子も含めて5人くらいで家で相撲を取ったり、外で自転車レースをしたりして、ずっと遊んでいました。家の目の前が畑で、高いところから飛び降りてバク転をしたこともあります。僕が一番下だったので、みんなに付いていく感じでした。

──バク転ができるのは、雪があったからですか?

そうです。着地のときに雪のクッションに「バスッ!」て落ちるので安心でした。

──そんな安村さんが野球部出身なのはよく知られることですが、特に冬の活動について教えていただきたく、どんな練習をしていたのでしょうか?

高校のときに、縦長の大きめのビニールハウスみたいな室内練習場はありましたけど、やることは限られていました。冬は基本的にボールを使わずに練習するんです。筋トレとか走り込みとか、体力づくりばっかりで、めちゃくちゃきつかったです。グラウンドも雪まみれではあるんですけど、みんなで踏み固めて、50周したりして。長靴で。そういう練習をずっとやっていました。

──屋内でも屋外でも大変そうですね。

冬の合宿もあって、比較的雪が少ない苫小牧に遠征しました。除雪すればグラウンドで練習できたんです。ただ僕はその遠征前に、学校の休み時間にサッカーで足の指の骨を折ってしまって、遠征ではお手伝いをしていました。

──安村さんはプロ野球では北海道日本ハムファイターズのファンを公言していますが、これは子供の頃からでしょうか?

2014年に僕がコンビを解散してピン芸人になったんですけど、仕事にこぎつけなきゃいけないのでそう言い始めた、という部分はあります(笑)。当時ファイターズを応援する配信番組に出演していましたし、そのあとに「穿いてますよ」のネタでテレビに出られるようになったのをきっかけに「ファイターズファンです」みたいな感じで実際に仕事をいただけました。

──子供の頃はどこのファンでしたか?

ヤクルトスワローズです。「珍プレー好プレー」などの番組で観ていた古田敦也さん、高津臣吾さんあたりが面白かったので好きになりました。

──北海道は今でこそファイターズが本拠地にしていますが、かつてはテレビ中継がほぼ巨人戦で、巨人ファンが大多数だったイメージがあります。

たしかに、まわりには巨人ファンが多かったです。僕はヤクルトが好きだったので、古田さんが使っていた青いゼット(野球用品メーカー)のキャッチャーミットに憧れて、高校のときにゼットを使っていました。

──プロ野球の試合を北海道の球場で観戦したことは?

旭川のスタルヒン球場にジャイアンツの2軍選手が来て、それを見に行ったことはあります。誰かは覚えていないんですけど球場の外で選手を見て、めちゃくちゃデカくて「2軍でもこんなにデカいんだ!」と驚きました。スタルヒン球場では今でこそファイターズが毎年のように試合をしていますね。

──当時と比べると大きな変化ですよね。

あと、旭川出身のプロ野球選手で有名な方に星野伸之さん(元オリックスなど)がいて、僕が小さい頃、「星野さんが旭川に帰ってくる」というときに見に行ったことがあるんですよ。大きいホテルの宴会場みたいなところで、あれは今思えば後援会だったんですかね。何百人が参加するようなパーティでした。芸人になってからも星野さんにお会いすることがあって……星野さんって今、吉本興業所属なんですよ。スポーツイベントなどの仕事で何度もご一緒して、そんな思い出も話したことがあります。

セイコーマートの“100円パスタ”必ず食べます

──ここからはごはんの話を聞かせてください。北海道ならではの安村さんの“ソウルフード”は何かありますか?

中学校時代のとにかく明るい安村。

僕がいたのは18歳までなので、そんなに詳しくはないですけど、「ゲソ丼」です。父親が電気屋をやっていて、小学校の頃、テレビの修理などでいろんな家庭を車で回ったのに僕も一緒に付いていって、昼に立ち食いそば屋でそばとゲソ丼を食べていました。イカのゲソに衣をつけて天丼のタレで食べる丼で、すごくおいしかった記憶があります。それが普通にあるものかと思ったらどこにもなくて。北海道のものかと思ったら旭川のものらしいですね。

──私も食べたことがないです。

そうなんですね。全然しゃべらない親父と行ったのは、いい思い出です。あと、近所のスーパーの前でテイクアウトだけの焼き鳥を売っている、ちっちゃい移動販売の店にも親父と2人で行きました。スーパーが夜に閉まってもそこだけは開いていて、親父に焼き鳥を買ってもらって、そこで初めて食べたレバーがおいしかったです。

──学校の給食には何か北海道らしいメニューはありましたか?

“桃を凍らせたやつ”がありました。桃の実が半分に切ってあって、それがシャーベット状に凍らせてあるんです。それがそのままビニール袋に入っていました。誰に聞いても、誰も食べたことがないって(笑)。

──私はこれも食べたことがないのですが、おいしそうですね。あと、現在東京に住んでいる安村さんは、“デパ地下”などで開催される「北海道物産展」が気になることはありますか?

気になりますし、たまに行きます。けっこうなペースでやっていますよね。電車の中吊り広告でもよく見ます。海鮮丼とか生ものが多いので、閉店間際に値引きされたものを買いに行ったり、奥さんも北海道の食べ物が好きで、ソフトクリームを食べたりもしました。

──特に最近、安村さんが触れた道産のものはなんでしょうか?

仕事で北海道の牧場に行って牛乳を運んだり、夜に回転寿司に行ったりしました。回転寿司はチェーン店だけど、めっちゃうまかったです。その場所の雰囲気がよかったのかもしれないですけど。あと、北海道に行ったときにタカアンドトシのタカさんと必ず食べるのが、セイコーマートの“100円パスタ”です。100円ちょっとで売っている、ちょうどいいサイズのカルボナーラやナポリタン。弁当も、店内調理の「ホットシェフ」コーナーのカツ丼も、セイコーマートはメシが本当にめちゃくちゃうまい。北海道の観光地みたいになっています。

家の裏の土手でスノーボードを練習

──北海道で触れたお笑いやエンタメについても聞かせてください。

旭川にはコンサートもお笑いライブもなかなか来なかったので、基本的に「生で見る」ということはなかったです。札幌には来るんですけど。初めてお笑いライブを見たのも、東京に来てからだったと思います。旭川でサーカスを見に行った記憶はあります(笑)。

──安村さんは「水曜どうでしょう」(HTB)ファンを公言されていますが、そのほかに好きだったローカル番組は?

「水曜どうでしょう」と同じHTBで放送されている「NO MATTER BOARD」というスノーボードの番組が好きでした。

──「アメトーーク!」の「北海道芸人」の回で、トム・ブラウンのみちおさんが「自分が出演した」とおっしゃっていた番組ですね。

そうです。高校のとき、スキーからスノーボードへの転換期で「スノーボードがカッコいい」という文化になり始めていました。同じ高校に好きな女の子がいて、その子がスノーボードをやっていたんですよ。年に1回くらい、スキー場で朝から晩まで1日中滑る「スキー授業」が学校にありまして、僕も「どうしてもスノーボードでモテたい!」と。それで野球の部活が終わった3年生の卒業前くらいにスキー授業に向けて、家の裏が土手で冬はちょうど坂になるので、そこにジャンプ台を作って毎日スノーボードを練習していました。

──家の裏にスノーボードができるほど広い土手があるのは、いい環境ですね。

学校から帰ってきて真っ暗になるまで滑っていました。結果的には、その女の子と一緒に滑れることはなかったんですけど。実はその子がめちゃくちゃチャラい子で、ベタに学校に遅刻してきたりするんですよ。しかも登校のときに彼氏が運転する白い“ヤン車”に乗って、送ってもらっている。僕は窓際の席だったので、「あ、来た」と思いながらそのヤン車を教室の窓から眺めたりしていました。

<後編に続く>

とにかく明るい安村

とにかく明るい安村(トニカクアカルイヤスムラ)

1982年3月15日生まれ。高校卒業まで北海道旭川市で生まれ育った。NSC東京校6期生。コンビでの活動後、ピン芸人に。2015年に「安心してください、穿いてますよ!」のネタで一躍人気者となり、同年、旭川観光大使に就任。「歌ネタ王決定戦」や「有吉の壁」(日本テレビ系)で披露した歌ネタ「東京ってすごい」も大きな話題となった。

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