のっちはゲームがしたい! 第10回 [バックナンバー]

平岩康佑さんの実況を生で聞くべく、Crazy Raccoonオフィスで「Apex Legends」に挑戦しました

“日本初のeスポーツアナウンサー”が実現させたい世界とは

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ゲーマーの9割は負けず嫌いですよ

のっち 平岩さんから見て、シスコさんやカワセさんはどういうプレイヤーだと思いますか?

平岩 カワセくんはすごくやんちゃなイメージがあるけど、けっこう責任感があるんじゃないかなと思ってます。チームを組んだときに自分が一番うまいというパターンが多いので、そういうときに「俺ががんばらないと」ってすごく気を遣ってるのを感じる。

カワセ 僕は後衛が得意なんです。スナイパーを使って後ろから撃つという。でもそういう人たちってたいてい、前衛の立ち回りは慣れてなくて不得意なんですよ。自分もそうなので、前衛に入るときは「味方に迷惑をかけてるな」って思っちゃう。サッカーでゴールキーパーがわざわざフォワードに行ってゴールを決めようとしてるようなものなんで。

左からカワセさん、のっちさん。

平岩 そうは言っても本番中はめっちゃ明るいんですよね。だから偉いなって(笑)。

のっち ゲームをしてるときの雰囲気がめちゃくちゃいいですよね。

カワセ マジで雰囲気だけは大事にしてます。イラっとするようなコメントが付いてもスルーするし、味方がミスっちゃっても、どんな負け方をしても気に留めないようにして。味方に文句を言う人っているんですよ。でも、それで嫌な気持ちになって「Apex」が嫌いになっちゃったら元も子もないじゃないですか。

平岩 そういうところ、すごくいいですよね。シスコくんはすごく負けず嫌いだなと思います。もともとサッカーをやっていて、U-16の東京選抜だったんです。ケガをしてやめたけど、それがなければ日本代表選手になっていたような。だからアスリート気質がたまに出るんです。例えば今日もカワセと1対1をしたときに、のっちさんにどんなものか見てもらうのが目的だったのに「死んでも負けねえ」みたいな気持ちになってて(笑)。スポーツマンならではの負けず嫌いさが随所に現れるんです。

Francisco でもゲーマーの9割は負けず嫌いですよ(笑)。だから強くなるわけですし。

カワセ そうですね。俺も絶対勝ってやろうと思ってました。

Francisco 今日は先輩の威厳を見せてやりましたね(笑)。

Franciscoさん

平岩 スポーツ選手から転身してゲームでもここまで来るというのは、やっぱり戦うセンスや努力をするセンスがあるということなんですかね?

Francisco 人より何倍も時間をかけて練習することは意識してます。あとは練習効率も。サッカーと同じように「今日はこの練習」「明日はこの練習」というのを自分で組み立ててやってるんです。ゲームを始めたのが高校生からでちょっと遅いんですけど、それでプロになれたのは効率的な練習のおかげなのかなと思いますね。

カワセ そんなの考えたことない……ただひたすら友達と楽しくゲームしてたら、いつの間にかプロになってました。

のっち それはそれですごい(笑)。

「この選手は勇気を持って前に踏み出したんだよ」というのを言葉にして伝えたい

のっち 平岩さんはいろんなゲームで実況をされてますけど、自分でもそれぞれプレイされるんですか?

平岩 新しいゲームを実況することになったら、100時間プレイしてから資料を作って、実況の練習をしてから本番に臨むんです。eスポーツを観ているのは本当にゲームが好きな人たちなので、そういうファンを裏切るわけにいかない。「実況の人、このゲームやってないの?」と言われるのが、一番怖いし屈辱です。

のっち 新シーズンが始まったり新しいキャラが増えれば、ゲームの環境はガラッと変わりますよね。そういうのは逐一チェックしてるんですか? それとも大会前に一気にお勉強?

平岩 大型アップデートは確認しています。知識を入れないと間に合わないので、それが一番厄介ですね。野球の場合「大谷翔平は来週から右バッターになります」なんてありえないじゃないですか(笑)。ゲームだとそのレベルの変更は、例えば武器やキャラが調整されて弱くなったとか普通にあるので。

のっち 確かに。それは好きじゃないとできないですよね……。

平岩 できないですね。全国各地のアナウンサーの方から「自分もやりたいです」って言われるんですけど、ゲームがあんまり好きじゃなさそうな人は断っています。本人もつらいと思うので。例えばスマブラ(「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」)のキャラは87体いて、それぞれ必殺技が4つと“最後の切り札”を1つ持ってるんですが、87×5=435種類の技を覚えてくれって言われても、本当に好きな人じゃないと無理ですからね(笑)。

平岩康佑さん

のっち ALGS(「Apex Legends」の公式世界大会「Apex Legends Global Series」)で平岩さんが実況してるのを観たんですけど……。

平岩 ALGSまで観てるんですか! すごいな(笑)。

のっち 私が最初に平岩さんを見たのがそのときだから、おちゃらけた雰囲気も全然なくて、第一印象は「すごく真面目な人だな」だったんですよ。でもCRカップだとちょっとふざけ気味というか、全然テンションが違ってて。そういうところは大会の色に合わせて変えてるんですね。

平岩 変えてますね。ALGSに出ている人は全員、Apexの強さで生活してる競技プロなんです。大会は生活を懸けて出場する神聖な場なので、面白おかしくいじれない。試合前の口上でも「この大会が始まったのは6月12日、雨の日でした」「いよいよ今日、アジアの頂点が決まります」みたいなちょっとカッコいいことを言うんですよ。

のっち エモい!

平岩 あとは「Fortnite」の高校生大会だったら、「コロナ禍の2021年。友達と並んでゲームをすること、みんなで自転車で一緒に帰ること、修学旅行に行くこと、そんな日常がいかに幸せだったかを痛感した1年でした。そんな100人の選手たちが今、フィールドに降りて行きます! 第3回『STAGE:0』、高校生部門決勝戦です!」とか。コロナで修学旅行がナシになるって、仕方ないことではあるけど、本人たちからすれば人生で一番楽しいイベントの1つが失われたわけで、その悔しさやつらさを代弁したかったんですよね。どのスポーツでもそうですけど、どんなに強気に振る舞ってても、一流の選手ほど試合当日は怖いものなんですよ。僕は「この選手は勇気を持って前に踏み出したんだよ」というのを、ちゃんと言葉にして観ている人に伝えたい。だから大会の1週間くらい前になると、お風呂に入ってるときや移動中とかに「どんなこと言おうかな」って考えてます。

のっち 聞いてるだけで涙出そうです(笑)。その思いやり、やっぱりお父さんだ。

平岩 そんな立場じゃないですって(笑)。

のっち 私が選手だったらめちゃくちゃ頼れる存在だなって思いました。

「ゲームが好き」って堂々と言える世の中にしたい

のっち eスポーツの競技タイトル以外では、平岩さんはプライベートでどんなゲームをしてるんですか?

平岩 今はeスポーツタイトルをどうしてもやらないといけないので、なかなか時間がなくてできてないんですけど、もともと「バイオハザード」とか「ファイナルファンタジー」とかも好きなんです。だから「いつか仕事を終えて隠居したら積みゲーを全部やる」というのが人生の楽しみで。「死ぬまでに全部できるかな?」と思いながらどんどん積んでます(笑)。

のっち ははは(笑)。いいですね。

のっちさん

平岩 ウチは中学受験をしていたのもあってゲーム機を買ってくれなくて、友達の家に行ってやらせてもらってたんです。ゲームが欲しすぎて、本体がないのにソフトだけ買ったり、弟とゲームの絵を描いたりして。その絵もピカチュウとかマリオじゃなくて「NINTENDO64」とか「PlayStation 2」の本体の絵なんですよ(笑)。兄弟2人ともそれくらい飢えてました。弟もいまだにそうなんですけど、幼少期にそんなふうに抑圧されたから、今どれだけゲームをやっても全然満たされないんです(笑)。

のっち 実況のために仕事でゲームをやっていても苦じゃない?

平岩 楽しいですね。「覚えるため」とか考えずに、仕事を忘れちゃうこともあります(笑)。

のっち 平岩さんが「これからこんなことをやりたい」ということはありますか?

平岩 オリンピックの実況はしてみたいです。局アナ時代にできなかったことなので。2022年のアジア競技大会で、eスポーツが正式にメダル種目になるんですよ。あとは会社として、日本でeスポーツをプロ野球くらい盛り上げていきたいと思ってます。「ゲームなんて子供の遊びだ」とか「ゲームなんかしてると頭が悪くなる」とか言ってるおじさんたちが、eスポーツを観て感動して泣く世界を実現させたい。

のっち スポーツ観戦が好きな人なら絶対好きですよね。がんばってる人たちを応援するのは。

平岩 そうですよね。「ゲームが好き」って堂々と言える世の中にしたい。

のっち 言えなかったですね(笑)。私もずっとゲーム好きだったけど、言えるようになったのはここ数年のことです。「休みの日に何してる?」って聞かれて、なかなかゲームとは答えられなかった(笑)。

平岩 言いづらかったですよね。「時間を無駄にしてるんじゃねえか?」って思われるのも嫌だし(笑)。そういう偏見みたいなものを、自分がなくせたらなと思ってます。

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「のっちはゲームがしたい!」連載第10回が公開!今回はプロゲーミングチーム・Crazy Raccoon のオフィス兼ゲームスペースにて“日本初のeスポーツアナウンサー”として知られる平岩康佑さんと対談してきました✨🎮

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