映像で音楽を奏でる人々 第20回 [バックナンバー]

ベタを大事にする寿司くん

ヤバTや岡崎体育のMVに見られる、基本から少しずれた“誰でもわかる映像”のルーツ

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ミュージックビデオの監督など、あらゆる形で音楽に関わる映像作家たちにフォーカスを当てた連載「映像で音楽を奏でる人々」。第20回となる今回はヤバイTシャツ屋さんのメンバーであり、寿司くん名義で映像ディレクターとしても活動しているこやまたくやに話を聞く。

大阪芸術大学で結成され、今や人気バンドとなったヤバTだが、在学時は寿司くんとしての知名度のほうが高かったというこやま。本連載ではこやま少年が映像の道に進むことになった理由や盟友・岡崎体育との出会い、ヤバTのMVへのこだわりについて語ってくれた。

取材・/ 清本千尋 撮影 / 草場雄介

「放送甲子園」全国大会で得た経験

僕は子供の頃から映像媒体がすごく好きだったんです。映像媒体ってなんだ?って思うかもしれないんですけど、テレビ番組や映画が大好きで。小学生の頃はテレビの映像を真似してみようと、親のビデオカメラを使っていろいろ映像を撮っていたんですよね。まあそれが直接今の自分の作家性に影響しているかというとそうではないんですが。中学に入ってからは音楽に夢中になって、ギターも始めました。

監督らしくメガホンを持つ寿司くん。

高校では大好きなマキシマム ザ ホルモンや10-FEETの曲を校内放送で流したいという理由で放送部に入りました。僕が通っていた高校の放送部は校内のアナウンスを担当するだけじゃなくて、「放送甲子園」と言われている「NHK杯全国高校放送コンテスト」に参加していたんです。アナウンスやテレビドラマ、テレビドキュメント、ラジオドラマ、ラジオドキュメント、朗読……いろんな部門があって、入部した年はラジオドキュメント部門に出品する先輩の作業を僕も手伝ったんですよ。でも映像媒体が好きだし、学校に映像機材もそろっていたので、その翌年に僕はラジオドキュメントではなくてテレビドキュメント部門に参加してみようと作品を作ったんです。

とは言えドキュメントっていうのは名ばかりで、中身は悪ふざけしている映像でした。学生らしい作品が評価されるコンクールなので、撮影したのは教室。「日本史の授業中、教科書、資料集、ノートを机に置こうとしてもどうしても全部うまく置ききれへん。けど、全部置かないと受験にも落ちてしまうからなんとかして机にきれいに置こうとする」という内容で。自分で撮影から編集まで手がけたその作品が全国大会まで行って、ネットでいろんな人に観てもらえて、Twitterでもいい反響がたくさんあった。そうやってダイレクトに感想をもらったときすごく気分がよかったんです。「放送甲子園」に向けて作品を作ったことで映像制作の面白さに気付いて、さらには全国大会まで行ったことで自信が付いたので映像系の大学に進むことに決めました。

MVを撮っていなかったらヤバTを結成していなかった

映像系の大学に行こうと思って、いろんな大学のオープンキャンパスや学園祭に足を運んで、雰囲気が一番よかった大阪芸大に入りました。でも何か具体的に作りたいものがないまま映像学科に入ってしまったので、1年生で映像制作の基礎を学び、そのまま過ごした2年生が終わる頃に「これじゃあ何者にもなれへんくてヤバい。将来どうしていくんや」と焦ったんですよね。それで自分ができそうなことを全部やってみようとコントやドキュメンタリーなどいろんな映像を作って、その中の1つが「寿司くん」のアニメでした。「寿司くん」がバズったのはうれしかったですね。僕は何かを作るのが好きっていうより作ったものを観てもらうことが好きで、自己顕示欲がすごくあるんですよ。

寿司くんのアニメが話題になり始めた頃、たまたまグッドモーニング世界っていう友達のバンドから頼まれて初めてMVを作ったんです。「自己犠牲」という曲のMVなんですけど、これが公開されたら大阪・堺界隈のいくつかのバンドからも「うちのバンドも撮ってほしい」と依頼されてMVを作ることになって。自分で言うのもアレですけど、器用なのでなんでも人に見せられる程度のものは作れるんです。今観返すとひどいもんですけど、当時はMVでも80点ぐらいのものが作れてるなと思ってました。

自分の中にある「面白い」のアウトプットはアニメでやってたと思いますし、MVは人から頼まれなかったらやってなかった。いろんなMVを撮るうちにバンドっていいなと思い始めてヤバイTシャツ屋さんを結成したので、MVを撮ってなかったらきっとヤバTを組んでなかったと思います。

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岡崎体育との出会い

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かぐを🌟 @oyasumikun__

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