マンガ原作者のお仕事 第11回 [バックナンバー]

竹岡葉月と「政宗くんのリベンジ」

絵に惚れ込んで、絵を活かす物語を考える

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“マンガ原作者の仕事”にスポットを当て、なぜマンガ原作者という仕事を選んだのか、どんな理由でマンガの原作を手がけることになったのか、実際どのようにマンガ制作に関わっているのかといった疑問に、現在活躍中のマンガ原作者に答えてもらう当コラム。原作者として彼らが手がけたプロット・ネームと完成原稿を比較し、“マンガ原作者の仕事”の奥深さに迫る。

第11回には「政宗くんのリベンジ」の原作者であり、小説家として活躍する竹岡葉月が登場。「政宗くんのリベンジ」ではプロットや台本ではなく小説の形で原作を用意していたという竹岡が、小説とマンガ原作、それぞれの書き方、表現方法などの違いを明かしてくれた。

構成 / 増田桃子

プロットの裏話、完成原稿を見ての思い

私は全体のストーリー担当なので、まずはプロットという形で簡単なあらすじを提出し、OKが出たら展開を伝えるための小説を毎月提出していました。Tiv先生はネームと作画担当で、文字だけの原作を整理してネームに起こす力が素晴らしかったです。そして圧倒的な画力! こうなると私が用意した長セリフが邪魔に思えてきて、後から削除をお願いしたことも多々ありました。「Tiv絵の前に説明も長セリフも不要なり」の境地です。

「政宗くんのリベンジ」第1話の小説、原稿。

実際に1話の完成原稿を見たときは、前述の通り“絵”が持つ情報量や説得力に圧倒されまして、どうしたら文字書きの小説家としてこれを最大限に活かせるかを考えるきっかけになりました。小説を書くノリで原作を書き込むと、絵で表現できていることまでテキストで補足する形になってしまい、マンガとしては情報過多でくどい。テンポも悪いなどなど……。
そもそもマンガの1話が小説にするとどれぐらいの長さか、私自身が全然わかっていなかったんですよ。なので今回提出した原作1話も、最初は32ページぐらいのマンガになるはずだったのですが、長すぎたようでここだけ相当の増ページに……自分なりのテキスト量を覚えるまで、しばらくじたばたしていた気がします。

マンガ原作者として仕事を始めるに至った経緯

もともとREX編集部でTiv先生と組む原作担当者を探していたようで、ちょうどライトノベルでラブコメを書いていた私に声がかかったようです。女装少年の入れ替わりものの「SH@PPLE―しゃっぷる―」がよかったかららしく、政宗くんでも小十郎あたりにその片鱗が残っています。

原作担当として最もこだわっている作業

「政宗くんのリベンジ」第1話の小説、原稿。

月刊雑誌の連載だったので、1話ごと、コミックス1冊ごとに“引き”を作ることはかなり意識していました。書き下ろしの小説ですと、多少のページの増減は作家の裁量として許してもらえますが、マンガですとそうもいかないので、ちゃんと巻末に爆弾がやってくるよう「これが何月号掲載だから残り何話……」と指を折りながら書いていました。
あとはマンガにして初めて完成するものと思って、小説としての読みやすさは捨ててとにかくハイテンポで事件を起こすべし、でしょうか。1つのシーンで視点をコロコロ変えること、速い場面転換は小説で多用するのは禁じ手ですが、マンガではその点もう少し柔軟ですし。おかげで小説版の「政宗くんのリベンジ」を出すとき、そのままではとても読めたものではなく、全面修正で加筆しまくることになりました。

マンガ原作者という仕事の魅力

絵に惚れ込んで、絵を活かす物語を考える。幸せな仕事だと思います。

マンガ原作者を目指す人へのメッセージ

私はもともと文庫書き下ろし中心のライトノベルでデビューしていて、ネット作家さんのようにWeb小説で連載する経験もない、わりと古いタイプの作家です。なので似たような境遇の人が原作をしようかな、と思ったときのアドバイスになります。

  • 世に出回っているマンガの1話を自分なりに小説に起こしてみて、何字になるか把握すること。たぶん思っているよりずっと短いです。自分用の1ページ=何字がわかると、話も組み立てやすくなります。マンガ編集さんが言う「だいたい1話何字ぐらいで~」は、ぶっちゃけあてになりません。あとはマンガ家さんのネームの癖で、都度調整する感じでしょうか。
  • プロットをがちがちに固めすぎると、連載が伸びたり縮んだりしたときに死にます。腹をくくって何種類も分岐ルートを作るか、どうしても譲れないオチ以外は決めすぎず、組んでいるマンガ家さんや編集さんと対話しながら調整する柔軟さが求められると思います。よくも悪くも1人じゃない、というか。

「政宗くんのリベンジ」第1話の小説、原稿。

今はシナリオ納品後にネーム担当や作画担当を探すような、完全分業の形態も出てきているので、この意見もすべてに当てはまるものではないと思います。「こういう奴もいるのか。でも自分は自分」ぐらいに思っていただければ幸いです。

竹岡葉月(タケオカハヅキ)

1999年度ノベル大賞佳作受賞を経てコバルト文庫よりデビュー。以降、少女小説、ライトノベル、マンガ原作など多方面で活躍する。小説に「東方ウィッチクラフト」「パナティーア異譚 」「おいしいベランダ。」など多数ある。2012年から2018年まで月刊ComicREX(一迅社)で連載された「政宗くんのリベンジ」は2017年にTVアニメ化され、comic HOWLにて「政宗くんのリベンジ-engagement- 」を連載中。現在、第2期にあたる「政宗くんのリベンジR」が2023年7月3日より放送中。

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竹岡葉月@石狩七穂のつくりおき&ベランダ番外編 @tapiokaazuki

漫画原作のお仕事について、政宗くん中心に語っています。
始めはいろいろ戸惑ったことなどなど。よろしくお願いいたします。 https://t.co/GESRX4kU8e

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