こまつ座40周年記念「闇に咲く花」山西惇と松下洸平が戦後生きる父子に

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こまつ座「闇に咲く花」が、8月4日から30日まで東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA、9月2・3日に愛知・東海市芸術劇場 大ホール、6日から10日まで大阪府 新歌舞伎座、12・13日に福岡・キャナルシティ劇場で上演される。

こまつ座40周年 第2弾 こまつ座 第147回公演「闇に咲く花」チラシ表

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「闇に咲く花」は、井上ひさしによる「昭和庶民伝三部作」の2作目として1987年に初演された作品。劇中では終戦から2年後の東京を舞台に、“記憶”をテーマにした父と息子の物語が描かれる。約11年ぶりの上演となる今回は、こまつ座創立40周年記念公演の第2弾として上演される。

物語の舞台は空襲で焼け落ち、廃屋になりつつある神社。神主の牛木公麿は5人の未亡人の協力を得て、闇の売り買いをしながら必死に日々を生き延びていた。ある日、戦死したと思われた一人息子の健太郎が帰還し……。

こまつ座40周年 第2弾 こまつ座 第147回公演「闇に咲く花」出演者

演出を、初演から引き続き栗山民也が担当。牛木公麿役を山西惇、健太郎役を松下洸平、稲垣善治役を浅利陽介が演じるほか、尾上寛之田中茂弘阿岐之将一、水村直也、増子倭文江枝元萌、占部房子、尾身美詞、伊藤安那、塚瀬香名子が出演者に名を連ねた。

上演に際し、栗山は「この作品を再演するたび、初演の時のピリリとした感覚を思い出す。井上さんとの初めての新作でもあり、どんな状況から執筆に入り、できた分だけの台本で稽古を進めていくということがどんなことか、皆目見当もつかなかった」と振り返りつつ、「日本の戦後という不確定な時代を問う物語は、わたしたちの現在に繋がれている。愚かな戦争によって死んだ者たちの声が、そのドラマから聞こえてきた」とコメント。

山西は「『闇に咲く花』の登場人物は皆、表向きは、優しく明るく前向きな愛すべき人たちです。そして、彼ら彼女らが陽気であればあるほど、この人たちの抱えている悲しみや苦しみが浮かび上がってくる劇であるように思います。登場人物一人一人がこの世の闇に咲く花なのかもしれません」と語る。

こまつ座にはこれまでもたびたび出演しているが、井上作品には初挑戦となる松下は「今回初めて、井上ひさしさんの戯曲で舞台に立たせて頂くことになりました」「日本の古き良き人情と、英霊となった息子と父の愛情の物語を通して、ご覧になった皆様が、日常の幸せの大切さを改めて考えるきっかけになるといいなと思っております。劇場でお待ちしております!」と呼びかける。

こまつ座初参加となる浅利は「物語に描かれているであろう『戦後の匂い』を、ご観劇いただいた方に少しでも感じてもらえるように演じていけたらと思います」と意気込みを述べた。上演時間は約3時間。全出演者のコメント全文は以下の通り。

栗山民也コメント

この作品を再演するたび、初演の時のピリリとした感覚を思い出す。井上さんとの初めての新作でもあり、どんな状況から執筆に入り、できた分だけの台本で稽古を進めていくということがどんなことか、皆目見当もつかなかった。

書斎に籠る前の井上さんとお会いし、その時までの構想を長時間に渡ってお聞きした。そして最後に「栗ちゃん、大学の卒論は能だったよね」と雑談混じりに聞かれ、それからしばし能について話しあった。出来上がった台本は、世阿弥の複式夢幻能の構造を土台にしたものだった。日本の戦後という不確定な時代を問う物語は、わたしたちの現在に繋がれている。愚かな戦争によって死んだ者たちの声が、そのドラマから聞こえてきた。

山西惇コメント

一昨年の「日本人のへそ」「雨」以来2年ぶりのこまつ座さん、栗山民也さんとの仕事になります。「闇に咲く花」の登場人物は皆、表向きは、優しく明るく前向きな愛すべき人たちです。そして、彼ら彼女らが陽気であればあるほど、この人たちの抱えている悲しみや苦しみが浮かび上がってくる劇であるように思います。登場人物一人一人がこの世の闇に咲く花なのかもしれません。

牛木公麿という人の抱える悲しみや諦めにしっかりと向き合い、その先の希望の花を細やかに咲かせられたら、と今は思っています。

松下洸平コメント

今回初めて、井上ひさしさんの戯曲で舞台に立たせて頂くことになりました。

「闇に咲く花」は、終戦から2年後の日本を生きる庶民の物語です。

悲しみや怒り、虚しさの中にあっても、登場人物たちはよく笑い、悲劇を乗り越えようとしています。日本の古き良き人情と、英霊となった息子と父の愛情の物語を通して、

ご覧になった皆様が、日常の幸せの大切さを改めて考えるきっかけになるといいなと思っております。劇場でお待ちしております!

浅利陽介コメント

井上ひさし先生の脚本、演出が栗山民也さん、初共演の俳優のみなさんと、初めてのことが多く、漠然とですが不安な気持ちがいっぱいになってしまったので、撮影現場でご一緒した際、山西惇さんに「僕、大丈夫ですかねぇ……」と弱音を吐いてしまいました。

そんな時に「楽しみだな」と言ってくれた山西さん、優しかったですね~。

物語に描かれているであろう「戦後の匂い」を、ご観劇いただいた方に少しでも感じてもらえるように演じていけたらと思います。

尾上寛之コメント

今回「闇に咲く花」に出演させて頂ける事、大変光栄に思っております。

井上さんの戯曲と向き合える時間は自分にとって宝物です。

栗山さんの演出の下、何度も上演されてきた大切な作品に挑戦するのはプレッシャーもとても大きいですが、早く稽古がしたい気持ちでいっぱいです。

井上さんの想いを、言葉を皆様に届けられるよう全力で演じさせていただきます。

素晴らしい共演者の方々と舞台上で生きられること、今からとても楽しみです。

田中茂弘コメント

今回オファーを頂いて大変嬉しかったです。久しぶりに栗山さんの演出が受けられる。それも井上ひさしさんの作品で。そして、こまつ座初出演。楽しみです。昨年の漢字に「戦」が選ばれたように、最近何かとキナくさい。ロシアのウクライナ侵攻はじめ、米中、台湾、北朝鮮等、周辺地域の緊張状態。否応なく高まる国防意識。こうした時期に「闇に咲く花」が上演される意味は大きいと思います。GHQ法務局主任雇員・諏訪三郎さん、しっかりと務めさせて頂きます。

阿岐之将一コメント

僕のデビュー作が、今回のこまつ座40周年第一弾でもある「きらめく星座」でした。

右も左もわからず、とにかく必死に稽古に臨みました。そんな稽古を経た上での、舞台上からの景色、袖に聞こえてくる笑い声にやたらと感動して涙したことを今でもはっきり覚えています。

念願叶ってそれ以来の出演となります。

僕はこまつ座を観るたびに、演劇の素晴らしさに打ち震え泣いてしまいます。

頼りになる皆様と共にそんな体験を客席にお届けできるよう今回もまた必死に稽古に臨みます。お楽しみに。

水村直也コメント

この度の「闇に咲く花」の出演について、

1987年10月9日が初演の初日です。あれから36年経ちますが、

全公演、舞台監督の菅野郁也氏と同じく私が「ギター弾きの加藤さん」を務めさせて頂いております。以前は「ギター弾きの加藤さん」は、私によく似ているなあと思っていましたが、最近は著者の井上先生自身ではないかと思っております。

この度は新たなるキャストの皆さんと時代に負けない新たなる「闇に咲く花」に猛進いたします。

増子倭文江コメント

初めて「闇に咲く花」に出会ったのが1999年。

その後幾度かの再演を重ねて、11年ぶりにまた愛敬稲荷神社で働くことになるなんて! いろんなことが巡って来ます。「忘れちゃ駄目だ忘れたふりはなおいけない」

あぁこのセリフで何回泣いたのだろう。私にとっては特別な芝居です。

今回新たに、この作品にご一緒できますこと、とても幸せです。体力つけて頑張ります。

名古屋さーん、萬長さーん、見ててねー!

枝元萌コメント

支えあう心 信念をもつ勇気 転んでもただでは起きない強さ

沢山の場面でハッとさせられる事ばかり

「闇に咲く花」たくましく勇ましく泥臭く

1947年夏を 仲間と共に生き抜きます

どうぞ皆様 劇場でお待ちしております!

占部房子コメント

「闇に咲く花」を初めて拝見したのは23歳の時でした。紀伊國屋ホールが笑いに溢れ、温かく、でも奥歯をぎゅっと噛み締めるようなラストに演劇ってなんて尊いものなのだろうと感銘を受けたその作品に、自分が参加出来る日が来るなんて……。本を開くと、今、この時代に伝えねばと一文字一文字から鼓動が聞こえるようです。敬愛する栗山民也さんをはじめ、座組一丸となって素晴らしい舞台をお客様にお届け出来るよう精進してまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます!

尾身美詞コメント

こまつ座40周年の節目の年に、この名作に参加させていただけること。嬉しく、また身の引き締まる思いです。お芝居を始めたての頃、何度も拝見した大好きな作品です。

戦後の混沌とした時代、愛敬稲荷神社に集う人々は戦争の辛い経験もまるごと抱えて明るく逞しく懸命に生きています。

素晴らしいスタッフ・キャストの皆さんと共に、井上先生の言葉を大切に紡いでいけたらと思います。いま、見ていただきたい作品です。

愛敬稲荷神社に咲いた花が、沢山の人の心に届きますように。

伊藤安那コメント

初めてこまつ座さんに出演させていただきます伊藤安那です。

「闇に咲く花」に登場する明るく元気なお面工場の女性たちが大好きです。読む度に元気をもらってます。この作品が11年前に上演された際、プロンプターをさせていただいてました。

ずっと袖でお芝居を見ていたのが、今回舞台に立つことができるなんて!! 驚きや嬉しさと同時に背筋が伸びる思いです。

栗山さん、そして素敵な共演者の方と一緒に、作品の登場人物たちのように協力して、さらにより良いものになるよう全力を尽くします。

塚瀬香名子コメント

今まで何度かスタッフとして関わらせていただいたこまつ座さんに、今回初めて出演者として参加させて頂けることとなりました。

この「闇に咲く花」はすごく好きな作品で、「忘れてはいけない」というメッセージが自分自身への教訓としてとても思い入れがあります。素晴らしい俳優の皆様と御一緒させてもらえることに今からとても緊張していますが、この作品の一員として憧れのこまつ座さんの舞台に立たせていただけることを本当に嬉しく思います。

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こまつ座40周年 第2弾 こまつ座 第147回公演「闇に咲く花」

2023年8月4日(金)~30日(水)
東京都 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

2023年9月2日(土)・3日(日)
愛知県 東海市芸術劇場 大ホール

2023年9月6日(水)~ 10日(日)
大阪府 新歌舞伎座

2023年9月12日(火)・13日(水)
福岡県 キャナルシティ劇場

作:井上ひさし
演出:栗山民也
出演:山西惇松下洸平浅利陽介尾上寛之田中茂弘阿岐之将一、水村直也(ギター) / 増子倭文江枝元萌、占部房子、尾身美詞、伊藤安那、塚瀬香名子

読者の反応

小池 晃(日本共産党) @koike_akira

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