孟京輝、オリヴィエ・ピィ作品で「ふじのくに→せかい演劇祭2023」幕開け

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「ふじのくに→せかい演劇祭2023」が昨日4月29日に開幕した。

「アインシュタインの夢」より。(撮影:平尾正志)

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「ハムレット(どうしても!)」より。(撮影:猪熊康夫)

「ふじのくに→せかい演劇祭」は、SPAC-静岡県舞台芸術センターによる舞台芸術の祭典。今年は5月7日まで静岡・静岡芸術劇場ほかで開催される。なお今年は静岡県が中国の成都市・梅州市、韓国の全州市と共に東アジア文化都市に選出されたことを受け、「ふじのくに→せかい演劇祭2023」にも中国・韓国の作品が多数並んでいる。

「アインシュタインの夢」より。(撮影:平尾正志)

「アインシュタインの夢」より。(撮影:平尾正志)

開幕初日は中国の演出家・孟京輝(モン・ジンフイ)による「アインシュタインの夢」が静岡芸術劇場、フランスを代表するアーティスト、オリヴィエ・ピィの翻訳・演出による「ハムレット(どうしても!)」が静岡・舞台芸術公園 野外劇場「有度」にて上演された。

「アインシュタインの夢」ではアインシュタインが残した手紙や会話の記録、カフカの「田舎医者」などに着想を得て、映像やライブ演奏、アクロバティックな身体表現などを織り交ぜながら、アインシュタインの夢の中が描き出される。初日を終えた孟京輝は「この劇場がまず素晴らしい。音響効果がよいことと、舞台と客席の距離が非常に近いこと、それが素晴らしいと思います。距離が近いので、観客の皆さんに舞台上で動いている俳優の体の動きとか、心の鼓動とか、そういうものまで感じ取っていただける。今日のお客様は比較的若い方が多かったように思います。若い方にもこの作品を見ていただけてとても嬉しいです」とコメント。

「ハムレット(どうしても!)」より。(撮影:猪熊康夫)

「ハムレット(どうしても!)」より。(撮影:猪熊康夫)

一方、「ハムレット(どうしても!)」では、シェイクスピアの「ハムレット」から“善と悪”“自我”“時間”などのテーマを引き出し、デカルト、フロイト、ハイデガー、ヴィトゲンシュタイン、デリダといった思想家たちの言葉を交えながら描いていくもの。本作の演出助手を務め出演もするベルトラン・ド・ロフィニャックは「フランス語圏以外での上演は今回が初めてで、日本で上演できてとても嬉しいです。日本の観客の前で演じるということは、私たち俳優にとって異なった条件に置かれます。皆さんのリアクションもフランスと同じではないですし、時には少しタイミングがずれてリアクションが来たりするので、私たちもそれを取り入れなければいけない。それは毎回、日本でなくても思うことではありますが、さらに厳密に演じることを求められるように思います。でも、日本の観客の集中力、あれだけ聞いてくださっているのは素晴らしいと思いました」と初日の手応えを語っている。

上演時間は「アインシュタインの夢」が1時間25分で、「ハムレット(どうしても!)」が2時間30分。いずれも本日30日までとなっている。

スペシャルトーク「いま演劇にできること~アジアの演出家たちの視点~」の様子。左から孟京輝、チョン・インチョル、宮城聰。

また本日30日には孟京輝、5月3日に開幕する「XXLレオタードとアナスイの手鏡」の演出家チョン・インチョル、SPAC芸術総監督・宮城聰によるスペシャルトーク「いま演劇にできること~アジアの演出家たちの視点~」が静岡・静岡芸術劇場2Fカフェ・シンデレラにて行われた。「ふじのくに→せかい演劇祭2023」は7日まで。

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孟京輝コメント

この劇場がまず素晴らしい。音響効果がよいことと、舞台と客席の距離が非常に近いこと、それが素晴らしいと思います。距離が近いので、観客の皆さんに舞台上で動いている俳優の体の動きとか、心の鼓動とか、そういうものまで感じ取っていただける。今日のお客様は比較的若い方が多かったように思います。若い方にもこの作品を見ていただけてとても嬉しいです。

中国でも今、新しい思想、言語を表現するような演劇が増えていて、それは歓迎すべきことです。私は25年前に日本に半年間滞在し作品を上演した経験があります。その時の劇場は新宿のタイニーアリスでしたが、日本の観客はとても若く、10代~20代の方達でした。今日観てくれた方の年齢はもう少し上だったと思いますが(笑)、今中国で自分の作品を観にくる観客は10代~20代、とても若いんです。時を隔てて日本と中国がつながっているという感覚があります。

ベルトラン・ド・ロフィニャック コメント

素晴らしい初日でした。アヴィニョンの初演やマルセイユの時と同じように、(野外で)日の光がある状態から途中で暗い状態へと変わっていくという条件のもと、静岡でも上演ができました。明るい状態から途中で暗くなることで、演じている方は全く状況が変わってきます。作品自体が重みを増してくる、密度が濃くなってくるようなところがあって、またリズムも変わってきます。私はこの作品のそういうところがとても好きなんです。さらに今日は雨が加わって。雨の中で演じるというのは私たちにとっては初めての経験なんですけれども、もっと雨の中で演じる経験を重ねたいと思いました。雨の中で演じると動きが変わってくる。雨に合った動きを見つけるために、さらに回数を重ね、経験を重ねたいなと思っています(笑)。

フランス語圏以外での上演は今回が初めてで、日本で上演できてとても嬉しいです。日本の観客の前で演じるということは、私たち俳優にとって異なった条件に置かれます。皆さんのリアクションもフランスと同じではないですし、時には少しタイミングがずれてリアクションが来たりするので、私たちもそれを取り入れなければいけない。それは毎回、日本でなくても思うことではありますが、さらに厳密に演じることを求められるように思います。でも、日本の観客の集中力、あれだけ聞いてくださっているのは素晴らしいと思いました。また、平野暁人さんが翻訳された日本語字幕は、実際に俳優が喋っているフランス語の言葉より上手に凝縮されていると思いますので、本当に良い仕事をされていると思います。

日本に来ることができ、俳優としても人間としてもさらに豊かになるように感じます。「日本に向けて」など、私たちがフランス以外にも開かれていくことが大事だと思います。

「ふじのくに→せかい演劇祭2023」ラインナップ

2023年4月29日(土・祝)~5月7日(日)

「アインシュタインの夢」

2023年4月29日(土・祝)・30日(日)
静岡県 静岡芸術劇場

演出:孟京輝

「XXLレオタードとアナスイの手鏡」

2023年5月3日(水・祝)・4日(木・祝)
静岡県 静岡芸術劇場

作:パク・チャンギュ
演出:チョン・インチョル

「Dancing Grandmothers ~グランマを踊る~」

2023年5月7日(日)
静岡県 静岡芸術劇場

振付・演出:アン・ウンミ

「ハムレット(どうしても!)」

2023年4月29日(土・祝)・30日(日)
静岡県 舞台芸術公園 野外劇場「有度」

翻訳・演出:オリヴィエ・ピィ

「パンソリ群唱 ~済州島 神の歌~」

2023年5月5日(金・祝)・6日(土)
静岡県 舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」

作・演出:パク・インへ

※「ふじのくに→せかい演劇祭」の「→」は相互矢印が正式表記。

「ふじのくに野外芸術フェスタ2023静岡」ラインナップ

「東アジア文化都市2023静岡県」春の式典上演作品

「天守物語」

2023年5月3日(水・祝)~6日(土)
静岡県 駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場

2023年5月27日(土)・28日(日)
静岡県 浜松城公園 中央芝生広場 特設会場

作:泉鏡花
演出:宮城聰
音楽:棚川寛子
出演:美加理、阿部一徳、大高浩一、本多麻紀、石井萠水、木内琴子、貴島豪、榊原有美、桜内結う、大道無門優也、舘野百代、寺内亜矢子、永井健二、山本実幸、吉植荘一郎、吉見亮

「ストレンジシード静岡2023」

2023年5月4日(木・祝)~6日(土)
静岡県 駿府城公園、静岡市役所・葵区役所 ほか

【コアプログラム】

「χορός / コロス」

2023年5月4日(木・祝)~6日(土)
静岡県 駿府城公園 東御門前広場

作・演出・構成・美術:ウォーリー木下
音楽:吉田能
振付・演出・出演:いいむろなおき、金井ケイスケ、黒木夏海、冨田昌則

Creative Dandi「Woman with Flower」

2023年5月4日(木・祝)~6日(土)
静岡県 毎日江崎ビル

演出:アン・ウィスク
振付:キム・ジジョン、アン・ウィスク
出演:キム・ジジョン、パク・ジェヒョンコ・ギョンミン、イ・ミニョン

※毎日江崎ビル「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記。

【オフィシャルプログラム】

  • きゅうかくうしお「素晴らしい偶然をつないで」
  • 江本純子「おでミずむ(仮)」
  • マームとジプシー「break-fast」
  • tupera tupera いえやすんぷ プロジェクト「フラワー家康と いっしょに ちょんまげ行列」
  • エンニュイ「平面的な世界、断片的な部屋 ストレンジシードver.」

【オープンコールプログラム】

  • TACT(TAkasaki Community Theater)「スパイダーの糸の件」
  • DANCE PJ REVO「STUMP PUMP SHIZUOKA」
  • 安住の地「わたしが土に還るまで」
  • ダンスカンパニーデペイズマン「ギガ超獣ギガ」
  • お寿司「怪獣回しし」

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