「祇園恋づくし」中村鴈治郎&松本幸四郎が男女2役の早替りに挑む「大変なのは白塗り」

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「芸術祭十月大歌舞伎」より、出演者の中村鴈治郎松本幸四郎の取材会が本日9月30日に東京都内で行われた。

左から松本幸四郎、中村鴈治郎。

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左から松本幸四郎、中村鴈治郎。

幸四郎と鴈治郎は、第2部「祇園恋づくし」で共演する。「祇園恋づくし」は、六世尾上菊五郎と二世實川延若により、1926年に東京・歌舞伎座で初演された「祇園祭禮人山鉾」をもとに、小幡欣治が新たに脚本を書き下ろしたもの。1997年に坂田藤十郎と中村勘三郎の顔合わせで京都・南座で初演された。劇中では、京都で茶道具屋を商う大津屋次郎八と、江戸っ子の指物師留五郎を中心にした物語が展開。次郎八は、江戸で世話になった人の息子・留五郎がお伊勢参りに行くことを知り、留五郎に祇園祭が催されている京都に足を伸ばすよう勧める。留五郎はその誘いに応じるも、京言葉になじめず江戸へ帰ろうとするが……。

中村鴈治郎

なお本作は、7月に大阪・松竹座の「七月大歌舞伎」で鴈治郎と幸四郎の顔合わせで初めて上演されており、今回も大阪公演と同様に、鴈治郎が次郎八と大津屋女房おつぎ、幸四郎が留五郎と芸妓染香をそれぞれ勤める。初演版にも出演していた鴈治郎は「『祇園恋づくし』は、以前からやりたかった演目。勘三郎のお兄さんと一緒に演じたかったのですが、機会を持てないまま(勘三郎が)亡くなってしまって。あーちゃん(幸四郎)と一緒にやろうと思ってから、7月にようやく上演するまでも、随分と時間がかかりました。ただすぐにこのような形で再演できることが決まり、うれしいです」と笑顔を見せる。

記者から、幸四郎に白羽の矢を立てた理由を問われると「気心も知っているし、彼は女も男もできるから(笑)。『祇園恋づくし』は、男女2役を早替りで勤めることに面白さがあるんです」と回答。7月の公演で共演した感想を「(幸四郎扮する芸妓染香は)きれいでしたし、一緒にやっていて楽しかった。初演でも、父と勘三郎のお兄さんがとても楽しんでやられていたので、そういう雰囲気でできればいいなとは思っていました。歌舞伎座でも楽しんでできれば」と意気込みを述べる。

松本幸四郎

幸四郎は「鴈治郎さんからお声がけいただいたあと、初演のビデオを拝見したところ、面白い、楽しいは当然ですが、笑いが芸術的で感激しました。とても刺激的な芝居で、ぜひご一緒したいと」と出演の経緯を明かす。鴈治郎との共演には「楽しいです。『何かするだろう』と警戒されているので、何か思いついたら躊躇しないでやってみようという緊張と勇気を与えてくださる先輩です」と言及する。そんな幸四郎に、鴈治郎は「1つだけお願いがあるんだけど。私から逃げようとする場面で、逃げる前から少しずつ距離を取るの止めて。捕まえられなくなる(笑)」と語りかける。それに幸四郎は「あれは公演を重ねるごとにエスカレートしてしまいました。(『祇園恋づくし』は)第2部の最初の作品で、次に『釣女』が控えているので、上演時間だけ気をつけないと(笑)」と語った。

「祇園恋づくし」より、中村鴈治郎扮する大津屋次郎八。

「祇園恋づくし」より、中村鴈治郎扮する大津屋女房おつぎ。

「祇園恋づくし」より、松本幸四郎扮する指物師留五郎。

「祇園恋づくし」より、松本幸四郎扮する芸妓染香。

本作で、2人は男女2役の早替りに挑む。幸四郎は「立役がやる女方というものもありますが、本作では立役は立役、女方は女方としてしっかり演じ分けることが大事。(芸妓染香を演じるにあたり)『自分はすごくきれいだ』と思い込んでやっています」とほほ笑む。今作の早替りの難しさを、鴈治郎は「白塗りの役とそうでない役の2役なので、白塗りを落とすのが大変ですね。顔だけではなく、手足にも塗っているので……」とこぼす。幸四郎が「セリフやシーンを足すわけにはいかなかったので、白塗りを塗った状態で早替りが間に合うかどうか、7月の公演の舞台稽古でダメ元でやってみたんです。そしたら、間に合ってしまったんですよね(笑)」と明かすと、鴈治郎は「歌舞伎座は大阪松竹座よりも広いので、演出を変えないと。顔を半分ずつ塗って出るか!」と冗談を飛ばし、記者陣の笑いを誘った。

作品の魅力を、幸四郎は「作中では、京都と江戸の郷土自慢が描かれますが、それはそれぞれの郷土愛がベースになっている。お互いにそれぞれ京都、江戸が一番好きだからこそ、食い違いがあり言い合いになってしまうだけで、決して貶し合いではないんですね。お客様には、自信にあふれた登場人物たちから生きる力を感じてもらいつつ、『京都って素敵なところだな』と思っていただければ」と述べる。鴈治郎は「京男の、はっきりものを言っているようで言っていないような、掴みづらい性質が、東京のお客様の目にどのように映るのかわかりませんが、“あるある”と理解し、楽しんでいただきたいですね」と語った。さらに幸四郎が「話の芯には(手代文七とおつぎの妹おそのの)若い2人の駆け落ち話があり、話だけ読むととても切羽詰まっているのですが、全体的に笑えるお芝居に作り上げられているのも魅力ですね」と述べると、鴈治郎も「女房が、旦那の浮気相手の家に乗り込んで行っているのに、修羅場にならないからね(笑)」とうなずいた。

取材で2人は、幸四郎が作った「祇園恋づくし」のうちわを手にしていた。うちわには、片面には幸四郎の役名にちなんだ文字、もう片面には高麗屋ゆかりの紋がほどこされている。「さっき受け取りました」と明かす鴈治郎は「再演になったから作れたね。公演中、岡持ちに入れさせていただきます」と述べ、幸四郎は、うちわは再演が決定してから自前で作ったことを説明しつつ「こういう場で使ったら、(うちわ代が)宣伝費になるかなと(笑)」と茶目っ気たっぷりに語る。幸四郎が「鴈治郎さんとうちの紋の両方を比翼で入れれば良かった。次に再演するときには作り直します」と話すと、鴈治郎はうれしそうに笑った。「芸術祭十月大歌舞伎」は10月4日から27日まで。

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「芸術祭十月大歌舞伎」

2022年10月4日(火)~27日(木)
東京都 歌舞伎座

第1部

一、「三代猿之助四十八撰の内 鬼揃紅葉狩」

作:萩原雪夫
演出:市川猿翁

出演
更科の前実は戸隠山の鬼女:市川猿之助
平維茂:松本幸四郎
侍女かえで実は鬼女:市川門之助
侍女ぬるで実は鬼女:中村種之助
侍女かつら実は鬼女:市川男寅
侍女もみじ実は鬼女:中村鷹之資
侍女いちょう実は鬼女:中村玉太郎
侍女にしきぎ実は鬼女:尾上左近
男山八幡の末社百秋女:市川笑三郎
男山八幡の末社千秋女:市川笑也
従者碓氷三郎:市川青虎
従者小諸次郎:市川猿弥
神女八百媛:中村雀右衛門

二、「赤穂義士外伝の内 荒川十太夫」

脚本:竹柴潤一
演出:西森英行

出演
荒川十太夫:尾上松緑
松平隠岐守定直:坂東亀蔵
大石主税:尾上左近
杉田五左衛門:中村吉之丞
泉岳寺和尚長恩:市川猿弥
堀部安兵衛:市川猿之助

第2部

一、「祇園恋づくし 中村鴈治郎 松本幸四郎 二役早替りにて相勤め申し候」

作:小幡欣治
演出:大場正昭

出演
大津屋次郎八 / 大津屋女房おつぎ:中村鴈治郎
指物師留五郎 / 芸妓染香:松本幸四郎
手代文七:坂東巳之助
使いの者清助:大谷廣太郎
おつぎの妹おその:片岡千之助
茶店亭主金平:中村寿治郎
持丸屋女房おげん:市川高麗蔵
岩本楼女将お筆:片岡孝太郎
持丸屋太兵衛:中村歌六

二、「釣女」

作:河竹黙阿弥

出演
太郎冠者:尾上松緑
大名某:中村歌昇
上臈:市川笑也
醜女:松本幸四郎

第3部

一、「源氏物語 夕顔の巻」

作:萩原雪夫

出演
光源氏:中村梅玉
夕顔:片岡孝太郎
六條御息所:中村魁春

二、「盲長屋梅加賀鳶 本郷お茶の水土手際より加州侯赤門捕物まで」

作:河竹黙阿弥

出演
竹垣道玄:中村芝翫
女按摩お兼:中村雀右衛門
手先長次:中村松江
お朝:市川男寅
道玄女房おせつ:中村梅花
家主喜兵衛:市村家橘
伊勢屋与兵衛:市川左團次
日蔭町松蔵:中村梅玉

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松竹演劇部 @shochiku_stage

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