劇団四季「美女と野獣」稽古が進行中、演出マット・ウェスト「愛の力を感じていただけたら」

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10月23日に千葉・舞浜アンフィシアターで開幕する、劇団四季のディズニーミュージカル「美女と野獣」に向けて、稽古場取材会が本日9月22日に劇団四季稽古場にて行われた。

ディズニーミュージカル「美女と野獣」稽古の様子。(撮影:荒井健)

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ディズニーミュージカル「美女と野獣」稽古の様子。(撮影:荒井健)

ディズニーミュージカル「美女と野獣」稽古の様子。(撮影:荒井健)

ディズニーミュージカル「美女と野獣」稽古の様子。(撮影:荒井健)

「美女と野獣」は1994年にアメリカ・ニューヨークのブロードウェイで初演され、日本では1995年に劇団四季により、東京・大阪同時ロングランという形で初演された。今回の公演では「美女と野獣」初演で振付を手がけたマット・ウェストが演出と振付を担当し、舞台美術が一新されるほか、台本・演出もリニューアルされる。なお今回の公演は2018年6月から昨年2月にかけて中国・上海ディズニーリゾートのウォルト・ディズニー・グランド・シアターで上演されたバージョンを踏襲したものとなる。

公開稽古ではまず、作品前半の「変わりものベル」のシーンが披露された。ベルが街の人たちの目線をよそに本の世界に没頭し、空想に夢を膨らませる様を、ベル役候補の五所真理子が伸び伸びと演じる。続けて、ベルに結婚を断られたガストンを、ルフウや酒場の客たちが持ち上げる酒場のシーン「ガストン」、ベルと野獣が初めてお互いを意識し始めるロマンチックなナンバー「美女と野獣」、日本公演では今回が初登場となる「チェンジ・イン・ミー」が演じられた。特に「チェンジ・イン・ミー」では、ベルが自身の思いの変化に気づき、それを確信に変えていく様を、五所は柔らかな歌声から芯のある力強さへと細やかに表現した。

稽古の後にはウェストとベル役候補の五所、平田愛咲、ビースト役候補の清水大星、金本泰潤、そして劇団四季代表取締役の吉田智誉樹が登壇し、合同インタビューが行われた。

左から劇団四季代表取締役の吉田智誉樹、平田愛咲、五所真理子、マット・ウェスト、清水大星、金本泰潤。

五所真理子

平田愛咲

今回の稽古について、五所は「海外のスタッフの方に一から見ていただける機会はなかなかないことで、毎日幸せに思っています。『美女と野獣』という作品に対して、劇団四季の中で受け継がれてきたものもありますが、作品の根幹にあるものを改めて肌で感じることができ、毎日良い稽古ができています」と話す。その発言に続いて平田は「今回初めて日本語に訳されたシーンもあり、文章で読んだときと演じたときの感じ方の違いなどをマットさんにお伝えすると、私たちの意見も取り入れながら作品を作ってくださいます。そのように一緒に作業できることがとてもうれしいです」と稽古の手応えをさらに詳しく語る。

清水は「これまではダンディにとか、スマートに演じられるようにと考えていましたが、ビーストとしては、綺麗な姿勢を保つことよりもどうやったら獣っぽく見えるかなというところを今、研究しています」と明かし、金本も「獣であることとプリンスであることの塩梅が難しいですね。僕自身、獣の役はよくやったことがあるんですが(笑)、王子役は初めてで、人間になりすぎないように、獣になりすぎないように、どう歩くと良いかをトレーニングしているところです」と話した。

清水大星

金本泰潤

今回の上演の見どころを問われると、金本が最初にマイクをとり「今回の上演では久しぶりにチップちゃんが子供なんです! 見ているだけでとろけちゃうようなかわいさなので、ぜひ観ていただきたいです」と即答し、ウェストとキャストが笑顔で大きく頷く。続けて平田が「今回の上演では、お父さんとベルのやり取りや『チェンジ・イン・ミー』のシーンなど、ベルが少女から大人の女性へと成長する姿がよりわかりやすく、共感しやすくなっていると思います。ぜひそこを観ていただけたら」と話し、五所は「マットさんやスタッフの皆さんは、『ベルを通してお客様はジャーニー(旅)をする』とおっしゃっていて。ベルは透明な存在となって、ビーストやお城の方々をよりチャーミングに見せられたらと思っています」と思いを語った。

そんなベル役2人の話を受けてウェストは「『美女と野獣』は普遍的なテーマを描いている作品です。だからこそ上演のたびにアップデートされていくべき」と話す。「ベルは本を読むことが好きなキャラクターですが、“本を表紙でジャッジしてはいけない”という英語の言い回しがあるんですね。それは、物事の中身、本質を見抜くという教訓で、それこそ『美女と野獣』が描いているテーマです。人生の写し鏡のような作品だからこそ、『美女と野獣』は誰からも愛されるし、また今日的な上演として更新され続けるべきだと思います」と語った。

ディズニーミュージカル「美女と野獣」稽古の様子。(撮影:荒井健)

ディズニーミュージカル「美女と野獣」稽古の様子。(撮影:荒井健)

記者から、今回の上演に向けてアップデートされたところを問われると、ウェストは「たくさんあります(笑)」と目を丸くして見せつつ、「1つ例を挙げるとすれば、ガストンとルフウの関係性の描き方。以前のバージョンではガストンが仲良さの故にルフウに対して、ある意味暴力的な振る舞いをするシーンがありました。でも今日の状況を考えると、どういった仲の良さであろうと暴力的なことは見たくないと思い、そういった表現ではない形で、2人の関係性が見えるようにしました。またセットも、もう少しストーリーブック的な要素を増やしたり、脚本を再検証して、今日の世界に受け入れやすい言葉に変えていったり、またテクニカル面でも27年前の初演とはずいぶん変わっているので、いらないものを削ぎ落とし、よりフレッシュでクリーンな形になっています」と説明した。

また今回の上演から加わるナンバー「チェンジ・イン・ミー」について、どのような思いで演じているかと問われた五所は、子供の頃に母親から“本当に好きな人ができたら、今大事だと思っているものよりもその人が大事になることがある”と言われた記憶を振り返りつつ、「ベルにとって自分のホームはお父さんだけだったのが、ビーストと出会って変わっていく。その思いを大事にして演じたいと思います」と力を込める。平田は「演じるたびに毎回違う気持ちになるので、正直、まだわからないですが、でもきっとベルもそのように、どこに向かっていくかわからないという思いなのではないかと思うので、毎公演その時感じたままに、瞬間瞬間を生きられたら良いなと思っています」と真摯に語った。

「チェンジ・イン・ミー」について、ウェストはかつてベル役を演じたトニー・ブラクストンとのエピソードを明かし、「ティム・ライスと彼女とご飯を食べていたら、その場でティムが『あなたのために書いている曲を聴かせるのが楽しみだ!』とトニー・ブラクストンに言ったんです。実はそれは、その場の興奮で言った発言だったようなんですが(笑)、そうやって生まれたのがあの曲。でもそのティムの発言によって我々は気づいたんですよね、『あのシーンには1曲必要だったんだ』と。当時はファックスでやり取りをしていたので、何度もアラン・メンケンとティムとファックスでやり取りを重ねて、あの曲が誕生しました」と話し、キャストを驚かせた。

最後に今回の公演への意気込みを問われると、五所は「この作品の根幹は普遍的な愛だと教えていただいたので、ベルのお父さんへの気持ちをまずは大切に、そこから『チェンジ・イン・ミー』によってビーストへと思いが変わっていく様を演じられたら。内向的な女性ではなく、外に向かっていけるような女性としてベルを演じられたらと思います」と力強く述べる。

平田は慎重に言葉を探しながら「ベルは人から“変わっている”と言われても『自分は正しい』と思って生きている。でも野獣やお城の人と出会うことで、考え方が変わっていき、自分が変わったことで街や街の人たちの見え方が変わっていきます。その変化を見せられたら」と話した。

清水は「今回の稽古で感じたのは、これはベルの成長物語なんだなということです。そんなベルによって、野獣もさまざまなことを学んでいく、その姿を見せられたら」、金本はビーストが後半で披露するソロナンバーを例に挙げながら「あのナンバーは、みんなの希望と責任を背負ったビーストが、それに耐えかねて、もう自分をどうにかしてしまいたいと思って歌う歌なんじゃないかと今回教えていただき、鳥肌が立ちました。ベルの一挙手一投足がビーストにはレッスンで、でもそんなベルを手放しても自分の運命を受け入れようと覚悟する……野獣のこのときの絶望を、どこまで感じて演じられるかだと思っています」と真摯に述べた。

そんなキャストの発言を受けてウェストは「皆さんがおっしゃっるようにこれは愛の物語で、“愛は愛で、愛である”という、愛の力こそがこの作品のメッセージだと思います。今日の世界では、愛が十分にあるということはないと思いますが、パワーオブラブ、愛の力を感じていただけたら」と笑顔で語り、会見を締めくくった。

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劇団四季 ディズニーミュージカル「美女と野獣」

2022年10月23日(日)~
千葉県 舞浜アンフィシアター

作曲:アラン・メンケン
作詞:ハワード・アッシュマン / ティム・ライス
台本:リンダ・ウールヴァートン
演出:振付:マット・ウェスト

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今週もやっぱり禁断症状 @kindan_J

【稽古場レポート】#劇団四季「#美女と野獣」稽古が進行中、演出マット・ウェスト「愛の力を感じていただけたら」 https://t.co/RoprU83s9J

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