「夜の女たち」は“歌がいっぱい”、江口のりこの発言に長塚圭史「ミュージカルだもん」

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KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「夜の女たち」の製作発表記者会見が、本日7月15日に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場で行われた。

後列左から長塚圭史、前田旺志郎、大東駿介、北村有起哉、前列左から伊原六花、江口のりこ、前田敦子。

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後列左から長塚圭史、前田旺志郎、大東駿介、北村有起哉、前列左から伊原六花、江口のりこ、前田敦子。

本作は、溝口健二が監督した映画「夜の女たち」を、長塚圭史の上演台本・演出でミュージカル化するもの。1948年に公開された映画「夜の女たち」では、戦後間もない大阪・釜ヶ崎を舞台に、生活苦から夜の闇に落ちていった女性たちが必死に生き抜こうとする姿が描かれる。

上段左から江口のりこ、伊原六花、前田敦子。下段左から大東駿介、前田旺志郎、北村有起哉。

戦争で夫を失って“闇の女”へと落ちる主人公・大和田房子役に江口のりこ、進駐軍が駐屯するホールでダンサーとなった房子の妹・君島夏子役に前田敦子がキャスティングされた。また、女たちを夜の闇から救おうとする病院長役を北村有起哉、房子を雇いまた愛人とする栗山商会社長・栗山謙三役を大東駿介、房子の義妹・久美子役を伊原六花、久美子を騙す学生・川北役を前田旺志郎が演じる。

長塚圭史(中央)

製作発表記者会見には、長塚、そして江口、前田敦子、伊原、前田旺志郎、大東、北村が登壇。まず長塚は、原作となる映画を「観たときの衝撃が忘れられない」と表現し、「撮影は、日本がアメリカの占領下にあった時代の釜ヶ崎で行われており、劇映画ではあるのですが、ほとんどドキュメンタリー映画のように見える。僕は1975年生まれですが、占領下の時代について教科書的には学んだものの、実際にどうであったのか、はっきりとした教育を受けた印象はありません。この時代を忘却の彼方に追いやってはいけないと思い、『夜の女たち』の舞台化を決めました。時代の変換期に庶民が力強く生きた物語を、エネルギッシュに描きたい」と意気込みを述べる。

またミュージカル化の経緯を「勉強のような作品になってはいけないという思いがまずありました。ミュージカルだったら、敗戦で日本の価値観が真っ逆さまにひっくり返った時代の心の内や空気感という、言葉にならない、説明しきれないものを、音楽の力で表現することができるのではないかと」と明かす。さらにキャスティングについては「セリフから歌に、あるエネルギーを持って転じていってほしいという思いから、この作品はミュージカルへの出演経験の少ない俳優さんと一緒に作っていきたいなと考えていました。江口さんの起用は最初から頭にありました。というのも、ミュージカルは僕にとっても新しい挑戦。大東くんと北村有起哉さんもそうですが、信頼している俳優に声をかけました。さらに旧知の俳優だけではなく、伊原さん、旺志郎くんといったフレッシュな力、そしてチャレンジ精神のある前田敦子さんも加えて、非常に理想的な仲間が集まりました」と座組に自信をのぞかせる。

江口のりこ(右から2番目)の一言にツッコミを入れる長塚圭史(左端)。

江口のりこ

前田敦子

司会者から作品の印象を聞かれた江口が「思いのほか、歌がいっぱいありました」と述べると、長塚が「だってミュージカルだもん(笑)」とツッコみ、周囲は笑いで包まれた。「映画を観たとき、この静かな映画をどうしてミュージカルにするのか謎だったのですが、稽古をしてみて、歌うことによってシーンのエネルギーがぐっと底上げされるのを感じて。そのとき、この映画をミュージカルにする意味が腑に落ちました」と稽古を経ての実感を述べる。「のりこさん大好きなんです」と江口への愛を笑顔で語る前田敦子は「歌にすごくパワーがあると感じています。また、のりこさんが歌っている姿が愛おしくて。早く皆さんに観てほしいですね」と語った。

伊原六花

前田旺志郎

伊原は「私が演じる久美子という役は、明るい力のある女の子。今の自分が持っている感覚と、その時代を生きていた人の感覚では、ものの捉え方が違っているかと思うので、この時代ならではの“新しく流れ込んできたもの”に対する憧れる力を、話し合って作り上げていければ」と役について真摯に述べる。前田旺志郎は「ミュージカルも、長塚さんの演出を受けるのも初めて。稽古では、みんなで台本のこととか、作品の時代背景についてディスカッションしてすり合わせる時間が取られていて。こういう時間は僕にとって新鮮で、『すごく幸せやな』と思いながら毎日稽古しています」と話す。

大東駿介(中央)

大東は「まだ公演は先なのに、ものすごく稽古をやっている。譜面見ながら歌っていると、圭史さんが『ちょっと立ってみようか』と言ってすぐに立ち稽古に……(笑)」と稽古の様子を明かす。さらに「とにかく楽曲が素晴らしくて。“言葉”と“歌”の間のようで、血が流れているような感じがするというか、音楽から、映画で観た戦後すぐの情景が見えてくる。『ミュージカルすご!』って思ってます。これで僕が歌わへんかったらめっちゃ楽でいいのにな……と思うんですけど(笑)、公演を楽しみにしていてください!」と呼びかけた。

北村有起哉

北村は「映画を観て、これを舞台でやるの? できるの? どうやるの?という思いがありましたが、そういうときに限って俳優として火がついてしまうんですね(笑)。そんじょそこらのエネルギーじゃ太刀打ちできない作品なので、想像力をふんだんに膨らませて、がむしゃらさをお客様の前にぶつけていくしかない。戦後のカオスな状況を、我々の具体的な肉体で歌い上げて表現していきたいですね」とニヤリと笑った。

本作は9月3日から19日までのKAAT神奈川芸術劇場 ホール公演を皮切りに、10月16日まで福岡・愛知・山口・長野・兵庫を巡演する。神奈川公演のチケット販売は7月23日にスタート。なお、9月7日から16日まで、関連企画として溝口の監督作品を中心とした上映会の実施が決定した。詳細は続報を待とう。

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KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース「夜の女たち」

2022年9月3日(土)~19日(月・祝)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 ホール

2022年9月24日(土)・25日(日)
福岡県 北九州芸術劇場 中劇場

2022年9月30日(金)~10月2日(日)
愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

2022年10月6日(木)
山口県 山口市民会館 大ホール

2022年10月10日(月・祝)
長野県 まつもと市民芸術館 主ホール

2022年10月14日(金)~16日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

原作:久板栄二郎
映画脚本:依田義賢
上演台本・演出:長塚圭史
音楽:荻野清子
振付:康本雅子
出演:江口のりこ前田敦子 / 伊原六花前田旺志郎、北村岳子、福田転球 / 大東駿介北村有起哉 / 石橋徹郎、中山義紘、入手杏奈、山根海音、篠崎未伶雅、山口ルツコ、小熊綸、加瀬友音

※2022年8月26日追記:9月3日から8日までの公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。

読者の反応

岡田育🍥『我は、おばさん』 @okadaic

<「セリフから歌に、あるエネルギーを持って転じていってほしいという思いから、この作品はミュージカルへの出演経験の少ない俳優さんと一緒に作っていきたい」>
【会見レポート】「夜の女たち」は“歌がいっぱい”、江口のりこの発言に長塚圭史「ミュージカルだもん」 https://t.co/Ul7dOR68L1

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