市川海老蔵、襲名披露興行で「毛抜」に挑む堀越勸玄を「父に似たおおらかさがある」と評価

「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」の演目発表記者会見が、本日7月7日に東京・歌舞伎座で行われた。

「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」は、11月の「十一月吉例顔見世大歌舞伎」と、12月の「十二月大歌舞伎」の2カ月にわたり、歌舞伎座で開催される。当初、2020年5月から7月まで3カ月にわたり開催予定だったが、新型コロナウイルスの影響により延期になっていた。

会見には、十三代目市川團十郎白猿を襲名する市川海老蔵、八代目市川新之助を襲名する堀越勸玄、松竹の迫本淳一社長と山根成之専務取締役が登壇。迫本のあいさつのあと、山根により襲名披露興行の演目が発表された。「十一月吉例顔見世大歌舞伎」の昼の部には、新之助が外郎売実は曽我五郎を勤める「外郎売」、團十郎白猿が武蔵坊弁慶を勤める「勧進帳」、夜の部には團十郎白猿と新之助による襲名披露口上、團十郎白猿が花川戸助六実は曽我五郎、新之助が福山かつぎを演じる「助六由縁江戸桜」が並ぶ。

「十二月大歌舞伎」の昼の部では「道成寺」より「押戻し」と、「毛抜」が上演され、夜の部には團十郎白猿と新之助による襲名披露口上と「助六由縁江戸桜」がラインナップされた。「押戻し」では團十郎白猿が大館左馬五郎を演じ、「毛抜」では新之助が粂寺弾正役に挑む。12月上演の「助六由縁江戸桜」は、11月興行と同様に團十郎白猿が花川戸助六実は曽我五郎を勤めるが、そのほかの出演者はまだ発表されていない。なお襲名披露興行は、歌舞伎座で実施後、来年3月と10・11月に地方巡業、9月に福岡・博多座、12月に京都・南座、2024年2月に愛知・御園座、9月に地方巡業、10月に大阪・大阪松竹座での開催を予定している。

演目発表のあとは、海老蔵と勸玄よりあいさつが。海老蔵は「長期にわたっての襲名披露興行でございますので、私自身も心身共に十分に配慮しながら、團十郎として皆様のご期待に応えられるよう、また歌舞伎がより一層発展しますよう懸命に努力いたします」と言葉に力を込める。勸玄は「延期されておりました、襲名披露興行が執り行えることになりました。今年の11月には、外郎売と福山かつぎを勤めさせていただきます。12月には、歌舞伎十八番の内の『毛抜』の粂寺弾正を勤めさせていただきます。（『毛抜』で粂寺弾正を演じるのは）成田屋の歴史の中では最年少ではございまするが、懸命に勤めさせていただきます」とハキハキと語った。

海老蔵は、襲名披露興行が約2年半延期になったことへの思いを「ある意味、準備期間をいただいたと思っております。2年半という年月は、特に倅の年齢にとっては大きく、（襲名を）もっと早くに、という親心もございました。しかし、昨年のお正月に行った公演で、私が勤めた『毛抜』を倅が観ておりまして、それをきっかけに（勸玄から）粂寺弾正をやってみたいとの申し出がありまして。このような変化は、やはり延期期間があったからこそ賜われたこと。もし彼が、2020年に新之助になっていたとしたら、現時点で『毛抜』に挑戦することはおそらくなかったのではないでしょうか。自分のこともさることながら、倅がどのように舞台に向き合うのか楽しみです」と微笑んだ。

勸玄が演じる粂寺弾正役について、海老蔵は「9歳でできるものではない、大変難しいお役」と表現しつつ、「しかし彼の祖父、つまり私の父である十二代目市川團十郎は、『毛抜』を大変得意としておりました。彼はどちらかと言うと父に似た、おおらかな雰囲気がある。おおらかさというものは、歌舞伎十八番にとって大事で、粂寺弾正を演じるうえでは欠かせない資質。その部分が彼にも備わっている」と評する。勸玄は現在稽古中の「毛抜」の難しさを「巻絹のところ。（自分の）動きがまだ完璧ではない。とにかくセリフがたくさんあるので、そういうところも難しい」と回答。これに対し、海老蔵は「粂寺弾正は色男というか……ユニークな人物。男女の機微を、9歳で表現するのはなかなか難しいかと思いますが（笑）、しかし歌舞伎には型があります。型を忠実にやっていくということが、今回の彼の使命かなと」と勸玄に優しい眼差しを向けた。

海老蔵は、自身の襲名については「名跡が変わることによって、魔法のように何かが変わるということではありません。私は、苦しみながらも歌舞伎に向き合う父の背中を見てきました。襲名披露興行では、“なにか新しいことを”ということではなく、父から教わった“家の芸”である歌舞伎十八番の中でも、王道である『勧進帳』の弁慶と『助六由縁江戸桜』の助六をしっかり勤められるようにしていきたい。お客様に“何かが変わった”と思っていただけるかは、私の精進次第です」と語った。

「十一月吉例顔見世大歌舞伎」は11月7日から28日まで、「十二月大歌舞伎」は12月5日から26日まで。

「市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露 八代目市川新之助初舞台」

「十一月吉例顔見世大歌舞伎」

2022年11月7日（月）～28日（月）
東京都 歌舞伎座

昼の部

「歌舞伎十八番の内『外郎売』八代目市川新之助初舞台相勤め申し候」

出演
外郎売実は曽我五郎：市川新之助

「歌舞伎十八番の内『勧進帳』」

出演
武蔵坊弁慶：市川團十郎白猿

夜の部

「十三代目市川團十郎白猿 八代目市川新之助 襲名披露『口上』」

出演：市川團十郎白猿、市川新之助

「歌舞伎十八番の内『助六由縁江戸桜』」

出演
花川戸助六実は曽我五郎：市川團十郎白猿
福山かつぎ：市川新之助

「十二月大歌舞伎」

2022年12月5日（月）～26日（月）
東京都 歌舞伎座

昼の部

「道成寺」
「歌舞伎十八番の内『押戻し』」

出演
大館左馬五郎：市川團十郎白猿

「歌舞伎十八番の内『毛抜』八代目市川新之助初舞台相勤め申し候」

出演
粂寺弾正：市川新之助

夜の部

「十三代目市川團十郎白猿 八代目市川新之助 襲名披露『口上』」

出演：市川團十郎白猿、市川新之助

「歌舞伎十八番の内『助六由縁江戸桜』」

出演
花川戸助六実は曽我五郎：市川團十郎白猿