長塚圭史の初ミュージカル作品「夜の女たち」出演に江口のりこ・前田敦子ら

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KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「夜の女たち」の出演者が明らかになった。

上段左から江口のりこ、伊原六花、前田敦子。下段左から大東駿介、前田旺志郎、北村有起哉。

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これは溝口健二が監督した映画「夜の女たち」を、長塚圭史の上演台本・演出にてミュージカル化するもの。1948年に公開された映画「夜の女たち」では、戦後間もない大阪・釜ヶ崎を舞台に、生活苦から夜の闇に落ちていった女性たちが必死に生き抜こうとする姿が描かれる。出演者には、夫を戦争で失って“闇の女”へと落ちる主人公・大和田房子役の江口のりこ、進駐軍が駐屯するホールでダンサーとして生きる房子の妹を演じる前田敦子のほか、伊原六花前田旺志郎北村岳子福田転球大東駿介北村有起哉石橋徹郎中山義紘入手杏奈、山根海音、篠崎未伶雅、山口ルツコ、小熊綸、加瀬友音が名を連ねた。また音楽を荻野清子、振付を康本雅子が手がける。

本作は神奈川・KAAT神奈川芸術劇場の、“忘”をテーマとする2022年度メインシーズン開幕作品となる。長塚は上演に向けて「忘れてはいけない、知らなくてはいけないという思いで立ち上げるこの作品が、なぜ今我々はここにこうしてあるのかという近代を冷静に見つめる一助となると同時に、どんな悲惨の中でも生きていく人間のポジティブな底力を感じていただけたらと思います」とコメント。また初めてミュージカル作品を手がける長塚は、キャスティングについて「俳優陣も主にミュージカル界からではなく、ストレートプレイを中心に活動する方々に集まっていただきました。新しい時代を描く時、未開の領域へ触れるパワーが作品の核心に近づくものになるだろうと考えたからです」と述べ、「時代に真摯に向き合って、お客さまも共に歌い出したくなるようなミュージカルを(本当に初めてですが)作り上げていきたいと思います」と意気込みを語った。

江口は「あえて大変なものに立ち向かうのが長塚さんの演劇だと思っています。大変なものに巻き込まれた私ですが、今は沢山の方に力を借りて、新しい事に挑戦する喜びを感じています」と胸の内を明かし、前田は「長塚さんの舞台いつかいつかと密かに夢見てました。とてつもない挑戦を長塚さんの演出、江口さんはじめとする皆さんと挑ませていただける喜びを噛み締めながら『夜の女たち』として必死に生きてしっかり息をしていきたいです」と思いを述べた。

本作は9月3日から19日までのKAAT神奈川芸術劇場 ホール公演を皮切りに、10月16日まで福岡・愛知・山口・長野・兵庫を巡演する。神奈川公演のチケットは7月に発売予定。そのほかの公演のチケット情報については続報を待とう。長塚とキャストからのコメント全文は下記の通り。

長塚圭史コメント

「夜の女たち」は溝口健二監督の1948年の映画です。戦後間もない大阪釜ヶ崎(今のあいりん地区)を舞台に、空腹と、全く新しい価値観の中で、必死に生き抜く女性たちとその時代を描いていました。この映画はまだ占領下にあった実際のその時その場所で撮影しています。まるでドキュメンタリーフィルムのようです。

占領下。敗戦で一夜にして日本の価値観が真っ逆さまになった時代です。呆然とするもの、戦争孤児、身寄りが誰一人いなくなって生きる術がなくなったもの、自暴自棄になるものもいます。そういう中で連合軍、特に圧倒的多数だったアメリカ兵、いわゆる進駐軍が押し寄せてきます。禁止されていた音楽がなだれ込んでくる。敵性音楽が自由の象徴として聞こえてくる。

それは、目を背けたくなるような貧困や孤独、欺瞞や憤りと矛盾に溢れた時代であると同時に、人間の権利が改めて問われる時代の始まりでもありました。戦後急増したパンパンと呼ばれた街娼は、社会現象として捉えられました。しかしこれは貧困からのみ生じただけではなかったと言われています。全体主義と封建制度から突然解放された自由の中、女性たちがその権利を掴み始めた時、あらぬ方向へ膨張して弾けた現象でもあったのではないでしょうか。

今、また再び世界は戦時下におかれました。壊れゆく街をまざまざと目にするたびに、人間の恐ろしさを痛感します。未だにやめられずにいるのです。忘れてはいけない、知らなくてはいけないという思いで立ち上げるこの作品が、なぜ今我々はここにこうしてあるのかという近代を冷静に見つめる一助となると同時に、どんな悲惨の中でも生きていく人間のポジティブな底力を感じていただけたらと思います。

初めてのミュージカルです。俳優陣も主にミュージカル界からではなく、ストレートプレイを中心に活動する方々に集まっていただきました。新しい時代を描く時、未開の領域へ触れるパワーが作品の核心に近づくものになるだろうと考えたからです。そして私が心より信頼する荻野清子さんが音楽・作曲、振付は以前からご一緒したいと切望しておりました康本雅子さん。他にもチャレンジ精神に満ちた素晴らしい仲間たちが集まってくれました。時代に真摯に向き合って、お客さまも共に歌い出したくなるようなミュージカルを(本当に初めてですが)作り上げていきたいと思います。

江口のりこコメント

この芝居、1948年に公開された溝口健二監督の映画を長塚圭史さんが戯曲化し、演出し、しかもミュージカルにするそうです。私自身ミュージカルの経験はありません。あえて大変なものに立ち向かうのが長塚さんの演劇だと思っています。大変なものに巻き込まれた私ですが、今は沢山の方に力を借りて、新しい事に挑戦する喜びを感じています。是非、KAATへお越し下さい。

前田敦子コメント

長塚さんの舞台いつかいつかと密かに夢見てました。とてつもない挑戦を長塚さんの演出、江口さんはじめとする皆さんと挑ませていただける喜びを噛み締めながら「夜の女たち」として必死に生きてしっかり息をしていきたいです。

伊原六花コメント

映画「夜の女たち」を初めて観た時、悲惨な環境の中でも屈しない、女性達の生命力と逞しさを感じました。それと同時に、生きるために身につけなくてはならなかった逞しさの意味を考えて、苦しくもなりました。風化させてはいけないこの事実を、長塚圭史さんの演出でミュージカルとして届けられる。荻野清子さんの音楽、康本雅子さんの振り付けで表現できる。まだまだ想像出来ないところが多いですが、今を生きる者として、覚悟を持って飛び込もうと思います。

北村有起哉コメント

こまつ座公演「十一ぴきのネコ」のとき以来の演出の長塚くんと音楽の荻野清子さんとまたご一緒にできるのが心底嬉しいです。どんな舞台になるのかまったく想像できないところが、僕にとって今回の最大の魅力です。そして舞台は2年ぶりでこんなにブランクがあるのははじめてで、なんだか緊張しております。こんな風にドキドキできるなんて本当にありがたいです。皆さんご来場をお待ちしております!

大東駿介コメント

「王将」の初演、「ハングマン」、今回が3度目の参加となる長塚圭史作品。自分が今舞台に立つことをこれほど大切に思えているのは、圭史さんの演出から頂いたものが大きいと感じます。作品に愛情を持ち真摯に本に向き合う姿勢。不安や困難も受け入れ、新たな発想に転換するユーモアとアイデア。なにより演劇を心から楽しんでいる姿。その背中から多くを学びました。そんな圭史さんのミュージカル初挑戦を間近で見たい! 共に創りたい!!と思い、僕自身も初のミュージカルということで不安もありますが、全てを作品の栄養に変えて「夜の女たち」に挑みたいと思います。

前田旺志郎コメント

川北清役を演じさせていただく前田旺志郎です。正直、はじめてのミュージカルなのでとてもとても緊張してます。また、KAATには大スタジオに一度立たせていただいた事があるのですが、ホールは初演の「アルトゥロ・ウイの興隆」で初めて観劇して以来、自分もいつかここに立ってみたいと思っていたので、それが叶ってとても嬉しいです。まだどんな形になるのか想像もつきませんが、素晴らしい先輩たちがたくさんいるので、頼れるだけ頼って成長したいなと思ってます。

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KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース「夜の女たち」

2022年9月3日(土)~19日(月・祝)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 ホール

2022年9月23日(金・祝)~25日(日)
福岡県 北九州芸術劇場 中劇場

2022年9月30日(金)~10月2日(日)
愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

2022年10月6日(木)
山口県 山口市民会館 大ホール

2022年10月10日(月・祝)
長野県 まつもと市民芸術館 主ホール

2022年10月14日(金)~16日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

原作:久板栄二郎
映画脚本:依田義賢
上演台本・演出:長塚圭史
音楽:荻野清子
振付:康本雅子
出演:江口のりこ前田敦子 / 伊原六花前田旺志郎北村岳子福田転球 / 大東駿介北村有起哉 / 石橋徹郎中山義紘入手杏奈、山根海音、篠崎未伶雅、山口ルツコ、小熊綸、加瀬友音

※2022年8月26日追記:9月3日から8日までの公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。

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穂の国とよはし芸術劇場 PLAT @Plat_Toyohashi

豊橋公演は、9月30日 (金)18:30開演、10月1日 (土)13:00開演、2日 (日)13:00開演。乞うご期待!https://t.co/HxSuvVzCZd #穂の国とよはし芸術劇場 #豊橋 #江口のりこ #前田敦子

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