彩の国さいたま芸術劇場の新芸術監督・近藤良平が掲げるテーマは、“クロッシング!”

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近藤良平が4月に彩の国さいたま芸術劇場 芸術監督就任。本日2月14日に埼玉・彩の国さいたま芸術劇場にて、芸術監督記者会見と2022年度ラインナップ発表が行われた。

彩の国さいたま芸術劇場 芸術監督 近藤良平就任会見および2022年度ラインナップ発表会の様子。(撮影:宮川舞子)

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彩の国さいたま芸術劇場 芸術監督 近藤良平就任会見および2022年度ラインナップ発表会の様子。(撮影:宮川舞子)

会見では近藤が、彩の国さいたま芸術劇場の最寄駅であるJR与野本町駅から劇場へと、踊りながら向かう映像が映し出される。そしてその映像で着ていたのと同じ服装で会場に姿を現し、「与野本町駅からやって来ました」と和やかなムードを作り出す。

彩の国さいたま芸術劇場 芸術監督 近藤良平就任会見および2022年度ラインナップ発表会の様子。(撮影:宮川舞子)

着座した近藤は少し改まった口調で、「昨年4月に次期芸術監督になりまして、この4月に芸術監督に就任することになりました。(初代芸術監督の)諸井誠さん、(2代目の)蜷川幸雄さんに続き3代目になります。この劇場を引っ張っていくという点でこれまでお二人が遺してきたものはとても大きく、僕もそのことをしっかりと心に受け止めて引き継いでいきたいと思います」と、芸術監督就任への思いを語った。

さらに近藤は「僕はダンスが専門です。最初は必死に踊ってきましたが、ダンスには社会を変えていく力があると思うようになり、今はダンスと真剣に向き合って日々暮らしています。その中で芸術監督就任が決まったので、ダンスの力を利用して、皆さんにとって楽しい芸術文化を提供できたらと思います。また劇場は、ただの(作品の)発表の場としてだけではなく、ここから発展し合流し、新たなものを生み出すサンクチュアリのような場でもあると思っていて、そういった力も発揮していきたいなと。今はキューっと狭い世の中に生きていますが、今から発表するラインナップも含めて、今日は夢を語らせてください!」とニカッとした笑顔を見せた。

彩の国さいたま芸術劇場 芸術監督 近藤良平就任会見および2022年度ラインナップ発表会の様子。(撮影:宮川舞子)

続けて2022年度のラインナップを発表。近藤は大きなテーマとして“クロッシング!”を掲げ、「アーティストが交流し、考えを交わし合うこと。劇場が多くの人が出会い、クロスする場所となること。地域やオンラインなど、場所や技術を含めたうえでの交流を行うこと。そのような意味での“クロッシング!”を考えています」と話す。そのうえで、ジャンルの“クロッシング!”に関連する具体的な作品としては、「ジャンル・クロスI 近藤良平with長塚圭史『新世界』」「ジャンル・クロスII 近藤良平×松井周『導かれるように間違う』」、そして近藤率いるコンドルズの埼玉公演2022新作「Starting Over」を挙げた。

また“人が行き交う”という意味での“クロッシング!”作品としてはオープンシアター「ダンスのある星に生まれて2022」、10月から2024年2月の劇場大規模修繕期間中に実施予定のキャラバン企画「埼玉回遊」を挙げた。

彩の国さいたま芸術劇場 芸術監督 近藤良平就任会見および2022年度ラインナップ発表会の様子。(撮影:宮川舞子)

さらに“新しいシアターグループ構想”があると言い、「さいたまネクスト・シアターやさいたまゴールド・シアターのように、他世代や他ジャンルと交流できる新しいグループを作り、そこから生まれてくる表現の場を考えたい、という構想を持っています」と明かした。

そのほか、演劇では2020年に新型コロナウイルスの影響により一部公演が中止となった彩の国シェイクスピア・シリーズ第35弾「ヘンリー八世」の再演、藤田貴大をはじめとする作家たちの創作を予定していると発表。ダンスではディミトリス・パパイオアヌーの新作やさいたまダンス・ラボラトリ企画、さらに若手を起用した作品作りを行うほか、音楽では劇場恒例のエトワール・シリーズをはじめ、ホールの良さを生かしつつ、ジャンルを超えた形で音楽を楽しめるようなプログラムを考えていると語った。

近藤は「人々が行き交う劇場」を目指していると言い、「近年、実際に劇場がストップするという考えられないようなことが起きましたが、当たり前のようにみんながその存在を知っていて、ワクワクするものを観に行くワクワクする場所、“日常の劇場”となれれば」と芸術監督としての思いを語った。

彩の国さいたま芸術劇場 芸術監督 近藤良平就任会見および2022年度ラインナップ発表会の様子。(撮影:宮川舞子)

その後の質疑応答で記者から、世界をツアーしてきた近藤にとって理想的な劇場は?と問われると、近藤は「ルーマニアのシビウの演劇祭にはびっくりしましたね。劇場近くのいろいろな場所が劇場になっていて、当たり前のように人が移動して(芝居を)観に行く。劇場と場所が結びついているのが羨ましいなと思いました」と語りつつ「でも与野本町も、もっと遊べるんじゃないかと思っていて。駅から劇場まで、トゥクトゥクとかを走らせてみたいですね!」と話し、記者たちを和ませた。

また「埼玉回遊」の具体的な内容を問われると「まだ構想中」としながらも、近藤自身もできるだけ参加したいという思いや、オンラインを活用することも考えていると明かした。最後に埼玉の人たちへのメッセージを求められた近藤は「僕が引っ張るというよりは埼玉の人たちと協力し合って、みんなと一緒に笑ったり、真剣に向かい合ったりするようなことが繰り広げられたら。“アート・フォー・ライフ”、皆さんの人生の中にアートがある、という楽しい時間を過ごしていきたいなと思っています」と力強く語った。

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彩の国さいたま芸術劇場 ・埼玉会館 2022年度ラインナップ

ジャンル・クロスI 近藤良平with長塚圭史「新世界」

2022年4月29日(金・祝)~5月1日(日)

加藤訓子「META-XENAKIS~クセナキス生誕100年を祝う」

2022年5月12日(木)・13日(金)

イレブン・クラシックスVol.5 大萩康司(ギター)&江戸聖一郎(フルート)

2022年5月18日(水)

コンドルズ埼玉公演2022新作「Starting Over」

2022年6月4日(土)・5日(日)

ディミトリス・パパイオアヌー「TRANSVERSE ORIENTATION」

2022年6月30日(木)~7月3日(日)

大塚直哉レクチャー・コンサート バッハ“平均律”前夜~月明かりのもと書き写した楽譜たち~

2022年7月3日(日)

Noism×鼓童「鬼」

2022年7月8日(金)~10日(日)

ジャンル・クロスII 近藤良平×松井周「導かれるように間違う」

2022年7月8日(金)~18日(月・祝)

ピアノ・エトワール・シリーズVol.44 三浦謙司ピアノ・リサイタル

2022年7月18日(月・祝)

さいたまダンス・ラボラトリ企画Vol.6

2022年7月26日(火)~8月7日(日)
※ワークショップ・公開リハーサルあり

ユナイテッド・ユーロ ブラス・クインテット

2022年7月30日(土)

ピアノデュオ ドゥオール デュオ・セミナー

2022年8月3日(水)~6日(土)

オープンシアター「ダンスのある星に生まれて2022」

2022年8月20日(土)・21日(日)

さいたまダンス・ラボラトリ企画 岡田利規×湯浅永麻「わたしは幾つものナラティヴのバトルフィールド」

2022年9月

マームとジプシー「cocoon」

2022年9月

彩の国シェイクスピア・シリーズ「ヘンリー八世」

2022年9月16日(金)~25日(日)

ピアノ・エトワール・シリーズVol.45 松田華音ピアノ・リサイタル

2022年9月17日(土)

クロノス・クァルテット「ブラック・エンジェルズ」

2022年9月30日(金)

NHK交響楽団

2022年10月2日(日)

マギー・マラン「MayB」

2022年11月19日(土)・20日(日)

バッハ・コレギウム・ジャパン ベートーヴェン「第九」

2022年12月3日(土)

日本昔ばなしのダンス

2023年3月25日(土)・26日(日)

彩の国さいたま寄席 四季彩亭

2022年4月16日(土)、8月6日(土)、12月4日(日)、2023年2月4日(土)

光の庭プロムナード・コンサート

2022年4月23日(土) 第130回
2022年5月21日(土) 第131回「ばらまつりスペシャル」
2022年6月25日(土) 第132回
※ほか、夏休みスペシャルを予定。

埼玉会館ランチタイム・コンサート

2022年6月24日(金) 第53回 NHK交響楽団メンバーによるヴィオラ十重奏
2022年10月26日(水) 第54回 佐藤采香(ユーフォニアム)
2023年2月3日(金) 第55回 坂本彩&坂本リサ(ピアノデュオ)
2023年3月30日(木) 第56回 春休みスペシャル 東京交響楽団メンバーによるアンサンブル

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