異なる“日常”が2つの部屋で同時展開、庭劇団ペニノ「笑顔の砦」横浜で開幕

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庭劇団ペニノ「『笑顔の砦』RE-CREATION」が9月19日に神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオにて開幕した。

庭劇団ペニノ「『笑顔の砦』RE-CREATION」より。

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タニノクロウが作・演出を手がける「笑顔の砦」は、2006年に初演され、第52回岸田國士戯曲賞にノミネートされた作品。2018年には関西で活動する俳優、スタッフたちを中心としたリクリエーション版が立ち上げられ、今回はその関西バージョンの再演となる。

庭劇団ペニノ「『笑顔の砦』RE-CREATION」より。

物語は、とあるアパートの隣り合った2つの部屋で同時に展開する。こたつ、神棚、テレビ、ストーブなどが雑然と置かれた生活あふれる部屋と、何もないがらんどうの部屋。その前者へ、漁師の男3人がドヤドヤと入っていく。部屋の住人で一番年上の蘆田剛史(緒方晋)と、進んで台所に立ち朝食の支度を始める亮太(井上和也)、剛史と亮太のサポートに徹する健二(野村眞人)は、もう何年もその生活をしてきたというふうで、女の話やテレビの星占いに一喜一憂しながら、冗談を言い、豪快に笑い合う。

庭劇団ペニノ「『笑顔の砦』RE-CREATION」より。

ある日、がらんどうの部屋に住人が引っ越して来た。部屋の住人は老婆の瀧子(百元夏繪)で、息子の勉(たなべ勝也)は認知症が少し始まった瀧子を、かいがいしく世話している。勉に呼び出された孫のさくら(坂井初音)も現れるが、部屋には気まずい空気が流れるばかりで会話はない。またその頃、剛史が船長を務める船に、大吾(FOペレイラ宏一朗)が短期アルバイトとして参加することになった。日常に起きた小さな変化は、笑いや日々の忙しさによってせき止められていた、老いや将来に対する漠然とした不安をあぶりだしていき……。

特に大きな事件が起きるわけではなく、小さな出来事の積み重ねが、登場人物たちにちょっとした影響を与え、それがさざ波のように伝播していく。前半で豪快な船長ぶりを見せていた剛史が、隣人の“現実”に出会い、老いと孤独を自覚し沈思黙考する姿には、その丸まった肩でしか表現できない哀愁が漂っていた。舞台美術はカミイケタクヤ。

公演は9月23日まで神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ、28・29日に愛知・穂の国とよはし芸術劇場 PLAT アートスペースにて行われる。

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庭劇団ペニノ「『笑顔の砦』RE-CREATION」

2019年9月19日(木)~23日(月・祝)
神奈川県 KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ

2019年9月28日(土)・29日(日)
愛知県 穂の国とよはし芸術劇場 PLAT アートスペース

作・演出:タニノクロウ
出演(五十音順):井上和也、FOペレイラ宏一朗、緒方晋、坂井初音、たなべ勝也、野村眞人百元夏繪

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