岸田國士戯曲賞受賞の松原俊太郎「引き続き皆様と傑作を作っていければ」

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第63回岸田國士戯曲賞の授賞式が昨日4月23日に東京・学士会館で行われ、松原俊太郎の戯曲「山山」が岸田國士戯曲賞を受賞した。

第63回岸田國士戯曲賞授賞式の様子。地点の面々に囲まれる松原俊太郎(中央)。

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第63回岸田國士戯曲賞授賞式の様子。松原俊太郎。

受賞者の松原には、正賞として時計、副賞として20万円が贈られた。贈呈式ののち、選考委員を代表して岡田利規が選考過程を報告する。岡田は「私が選考委員になってからも単独受賞はありましたが、今回は少し違う印象でした。これまで、単独受賞の場合は選考委員の多くがその作品を推すことで単独受賞となりましたが、今回はそういうことではなかったです」と話す。さらに「個人的な感じですが、それは演劇の捉え方、どのような戯曲の言葉が求められているかに対する見解の違い、“分断”が、選考委員の間にあるということが、顕在化したのだと思います。そのことは、我々選考委員だけでなく演劇に関わる皆さんが取り組むべき問題だと思いますし、さらに演劇界の問題だけではなく最近の世界的な潮流としての“分断”と、決して別々に考えられるものではないのではないでしょうか。そこに必要なのは、おそらく議論していくことだと思います」と選考委員としての思いを述べた。

第63回岸田國士戯曲賞授賞式の様子。左から宮沢章夫、三浦基、松原俊太郎、岡田利規。

続けて松原が挨拶する。松原は「山山」の書籍を手にしつつ、「大変光栄です」とはにかみながら述べる。受賞の報せは地点のアトリエである京都・アンダースローで受けたと言い、「僕よりも地点の皆さんがとても喜んでくださった。また今回の受賞によって、母が『山山』を3回読んで、『ようやく面白さがわかった』と言ってくれました。岸田戯曲賞、すごいなと(笑)」と語り、会場から笑いが起きる。さらに松原は、「僕は演劇に出会うまでは書斎にこもって1人で(小説を)書いていたんですけど、今も書くのが1人であることは変わりませんが、そうして書いた戯曲が集団によって上演され、声になるという違いがある。演劇は個と集団のための表現だと思いますが、だからこそ僕は1人でも集団のことを考えながら書けるんだなと思います」と語った。また「僕は純粋劇作家と呼ばれていますが、今回の受賞によって、作・演出家との差異にようやく光が当たったのでは。そこで対立を深めていくのではなく、一緒に未来を作っていけたら。引き続き皆様と傑作を作っていければと思います」と語った。

左から宮沢章夫、柳美里。

その後、選考委員の宮沢章夫柳美里が乾杯の挨拶を述べる。柳は文学賞の選考委員はやらないと決めていたが、「ただ1つだけ断らないと決めていたのが岸田國士戯曲賞の選考委員でした。それは、当時24歳でほぼ無名だった私を世に送り出してくれたのが、岸田戯曲賞だったからです」と話す。そして「松原さんの『山山』はとても素晴らしく、このような作品を選べたことは光栄です」と祝辞を述べた。続けて宮沢は「2004年に岡田利規くんの戯曲を読んだときと、今回は同じ思いを感じた」と話し、「現代の劇言語はこういうものなのか、この強固な劇言語は何かと。演劇がただ俳優とのやり取りでつながっていくもの、というような考えでは理解し得ない、もっと違うことを感じることで言葉が響く作品」と「山山」を分析した。

三浦基

さらに会の後半では、親交ある面々が祝辞を述べた。まず登壇した地点の三浦基は、松原に「次はノーベル文学賞を取ってください」と言葉をかける。「ベケットもピランデッロもイェリネクもノーベル文学賞を受賞している。劇作家がノーベル文学賞を取る時代がもう1回くれば、先ほど岡田さんが指摘していた“分断”が、救われるのではないかと思います」とエールを送った。

松原俊太郎

続けて地点作品を多数手がけている空間現代の野口順哉、12月に東京・文学座アトリエにて松原の新作を演出する文学座の今井朋彦が祝辞を述べると、松原は静かな微笑みを浮かべて、その一言ひとことに耳を傾けていた。また会の終盤では、毎年岸田國士戯曲賞授賞式で恒例となっているパフォーマンスの代わりに、松原戯曲に臨む地点の稽古風景が映像によって紹介された。

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第63回岸田國士戯曲賞最終候補作品

・坂元裕二「またここか」(リトルモア刊)
・詩森ろば「アトムが来た日」(上演台本)
・瀬戸山美咲「わたし、と戦争」(上演台本)
・根本宗子「愛犬ポリーの死、そして家族の話」(上演台本)
・古川日出男「ローマ帝国の三島由紀夫」(「新潮」2018年10月号掲載)
松原俊太郎「山山」(「悲劇喜劇」2018年7月号掲載)
・松村翔子「反復と循環に付随するぼんやりの冒険」(上演台本)
・山田百次「郷愁の丘ロマントピア」(上演台本)

※作者五十音順。

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