鈴木裕美の演出に吉田鋼太郎「今までで一番文学的じゃないシラノに」

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5・6月に東京と兵庫で上演される「シラノ・ド・ベルジュラック」。公演に先駆け、本日4月11日に東京都内で製作発表記者会見が行われた。

「シラノ・ド・ベルジュラック」製作発表記者会見より、カメラに向かって手を振る黒木瞳(左)、吉田鋼太郎(右)。

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「シラノ・ド・ベルジュラック」チラシ表

エドモン・ロスタン作による「シラノ・ド・ベルジュラック」は、剣豪で詩人のシラノの生死を賭けた愛を描いた物語。今回の上演版では上演台本をマキノノゾミと鈴木哲也、演出を鈴木裕美、音楽を清塚信也が手がける。

舞台は17世紀のパリ。並外れて大きな鼻を持つ近衛騎士シラノ・ド・ベルジュラックは剣豪でありながら詩の才能に秀で、権力や虚栄を嫌う熱血漢だった。彼はいとこのロクサーヌに恋していたが、自分の容姿を恥じて思いを明かせずにいた。一方ロクサーヌはシラノと同じ青年隊に属するクリスチャンに恋をし、シラノに仲立ちを頼む。シラノは好青年のクリスチャンを気に入るが、彼の詩心のなさを知って自分が代わりにロクサーヌへの愛の言葉を語り……。キャストにはシラノ役の吉田鋼太郎、ロクサーヌ役の黒木瞳、クリスチャン役の大野拓朗白洲迅のほか、大石継太平野良、末次美紗緒、石川禅六角精児らが名を連ねた。

「シラノ・ド・ベルジュラック」製作発表記者会見より、左から吉田鋼太郎演じるシラノ、大野拓朗演じるクリスチャン、黒木瞳演じるロクサーヌ。

記者会見には鈴木、吉田、黒木、大野、白洲、そして楽士役で出演する清塚信也が出席した。抽選で選ばれた200名のオーディエンスが見守る中、会見は出演者たちによる朗読でスタート。清塚によるピアノの生演奏に乗せ、シラノがクリスチャンに代わってロクサーヌに愛を語り、ロクサーヌとクリスチャンの思いが通じ合う場面が披露された。

「シラノ・ド・ベルジュラック」製作発表記者会見より、左から鈴木裕美、白洲迅、黒木瞳、吉田鋼太郎、大野拓朗、清塚信也。

「シラノ・ド・ベルジュラック」製作発表記者会見より、鈴木裕美。

続いて、鈴木と吉田ら出演者が順番にコメントを述べた。鈴木は上演に際し、「ある意味で『忠臣蔵』的な要素を取り入れたい」と意欲を見せる。「ちょっと前の日本には『困ったときの忠臣蔵』という言葉があった。同じようにフランスでは『困ったときのシラノ・ド・ベルジュラック』と言うくらい、すごく愛されている作品」と本作を紹介しつつ、「“高級大衆演劇”のような感じでやりたい」と意気込んだ。さらに鈴木は「鋼太郎さんの“座長奮闘公演”と呼べるものにしたい」と言い、原作では具体的に描かれないシラノの100人斬りや、清塚らによる生演奏のシーンを取り入れるなど演出の一部を明かしつつ、「ミュージカルではないけど、その手法を取り入れた音楽で生き生きとやれたら」と構想を語った。

「シラノ・ド・ベルジュラック」製作発表記者会見より、吉田鋼太郎。

「シラノ・ド・ベルジュラック」製作発表記者会見より、左から吉田鋼太郎演じるシラノ、白洲迅演じるクリスチャン。

吉田は鈴木の発言を受け、「困ったからシラノをやるわけではありません(笑)」と述べつつ、「演劇界には『困ったときの鈴木裕美』という鉄則がある」と鈴木に厚い信頼を寄せる。またシラノを「権力やお金に魂を売らず、心意気をあの世まで持って行く、現代では見かけないタイプ」と紹介し、「お芝居を観て『なんて素敵な人生があるんだろう』と感じてもらえると思います」とコメントした。さらに本作について吉田が「今までで一番、文学的じゃない『シラノ』になると思う。古典文学の名作を堪能するつもりのお客様は来ない方がいいかも……」と述べると鈴木から「そんなことない!」と声が上がり、客席には大きな笑いが起きた。

「シラノ・ド・ベルジュラック」製作発表記者会見より、黒木瞳。

「シラノのラブレターならぬ、鋼太郎さんの熱いラブコールで引き受ける覚悟を決めました」と微笑むのは黒木。「ロクサーヌよりちょっと年上ではあるんですけど、わたくし(笑)。鋼太郎さんよりは少し“妹”なので、大丈夫かなと」と吉田に視線を送りつつ、「古典演劇ではありますが、ご覧になられた皆さんに楽しんでいただけるわかりやすいお芝居。心臓もどきどきしてまいりましたが、初日を楽しみにお待ちください」と呼びかけた。

「シラノ・ド・ベルジュラック」製作発表記者会見より、大野拓朗。

大野は自身の演じるクリスチャンについて「無邪気で口下手。シラノに『ほっとけないな』って思ってもらえるよう、まっすぐ演じたい。でもクリスチャンも成長して、最後はシラノと立場を逆転させるような見せ場もたくさんあります」とコメント。さらにWキャストの白洲との関係について質問されると、大野は「もうバッチバチですね!」と笑顔で回答。白洲も即座に「稽古場では一言もしゃべらない!」と続け、息の合った様子を見せた。

「シラノ・ド・ベルジュラック」製作発表記者会見より、白洲迅。

白洲は「日生劇場に立てること、吉田鋼太郎さん、黒木瞳さんと同じ舞台に立てることがうれしく、身の引き締まる思い」と真摯に語りつつ、「クリスチャンは熱い思いを言葉にできませんが、僕も思いを言葉にするのが下手くそ」と話して会場の笑いを誘う。また初めてのWキャストだと言う白洲が「自分の役を客観的に見られるありがたい経験。大野くんは本当に優しくて……言うても先輩ですから、学ばせていただきたい」と意気込みを語ると、吉田と大野から「“言うても先輩”って!」と口々にツッコみが入る。白洲は苦笑しながら「言葉を間違えました……」と訂正し、「切磋琢磨したい」と気合十分に締めくくった。

「シラノ・ド・ベルジュラック」製作発表記者会見より、吉田らの朗読に合わせてピアノを演奏する清塚信也。

音楽と楽士役を担当する清塚は、「一瞬たりとも飽きさせない作品。素晴らしい物語で、素晴らしい裕美さんの演出のもと、音楽も素晴らしくしなければ」と抱負を述べる。続けて「音楽は、映像と合わせるときはサポートしてくれと言われるんですが、今回の舞台はセッションのような演出のもと、楽しませていただいております。本番をお楽しみに」と期待を煽った。

「シラノ・ド・ベルジュラック」製作発表記者会見より、左から白洲迅、黒木瞳、吉田鋼太郎、大野拓朗。

最後に吉田が出席者を代表して挨拶。「演劇界にはこの春も魅力的な作品が目白押しですが、『シラノ』は一番面白いと思います。とにかく完璧なストーリーで、必ず感動してもらえる。僕たちの責任はすごく重いですが、うまく仕上がれば最高の芝居になります。笑って泣けます、わくわくします、どきどきします、勇気をもらえます、人を愛したくなります、人から愛されたくなります。劇場でお待ちしています!」と熱っぽく来場者に呼びかけ、会見は終了した。

公演は5月15日から30日まで東京・日生劇場、6月8日から10日まで兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて。

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「シラノ・ド・ベルジュラック」

2018年5月15日(火)~30日(水)
東京都 日生劇場

2018年6月8日(金)~10日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

作:エドモン・ロスタン
上演台本:マキノノゾミ、鈴木哲也
演出:鈴木裕美
翻訳:石野香奈子
音楽:清塚信也

キャスト

シラノ・ド・ベルジュラック:吉田鋼太郎
ロクサーヌ:黒木瞳
クリスチャン(Wキャスト):大野拓朗 / 白洲迅

ル・ブレ:大石継太
ヴァルヴァーニ子爵:平野良
末次美紗緒
ラグノー:石川禅
ド・ギッシュ伯爵:六角精児

花王おさむ
若杉宏二

秋元龍太朗
飯田一徳
石井咲
尾関陸
小原和彦
齋籐慎平
柴一平
高橋ひろし
谷畑聡
新田健太
藤代太一
細川洋平
本多剛幸
村井麻友美
安田カナ

楽士:清塚信也
楽士:朝里奈津美

※初出時、人名表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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