今月のお笑い 7本目 [バックナンバー]

ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2022年11月のお笑い、どうだった?」

「M-1」、進化する漫才、赤もみじ解散、野田クリスタルの発明、きしたかのは宝、本音を語る時代

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ウエストランド、「M-1グランプリ2022」決勝進出!

ウエストランド井口と構成作家・飯塚大悟が毎月のお笑い界の出来事を勝手に振り返る連載「今月のお笑い」。今回は、決勝進出者の発表から2日後というホットなうちに「M-1」の話を聞くことができた。漫才がこれほど進化したのはなぜなのか、「赤もみじの道程」から見る“大ドキュメンタリー時代”、そしてやっぱりきしたかのの話題にも触れる。

構成 / 狩野有理 ヘッダーイラスト / 清野とおる

※取材は12月2日に実施。

がんばれ、ウエストランド

飯塚 ここに来る前、太田出版に行ってきたんですよ。「クイック・ジャパン」の2022年のお笑い系配信コンテンツを振り返る企画に参加させていただいて。それで今からは、今月のお笑いを振り返るっていう。

井口 ご意見番的な立場になってますね。

飯塚 やたらと振り返ってる(笑)。たぶんこの連載のおかげで呼んでいただけたんだと思います。裏方のくせにペラペラしゃべる奴だという印象が付いてるのかも。

──飯塚さん、さっそく井口さんにお渡ししましょうか。

飯塚 そうですね。

井口 ?

──じゃーん。開けてください。

井口 うわ、なんですか?(包み紙を開ける)

プレゼントを受け取るウエストランド井口。

包装紙をはがすウエストランド井口。

箱を開けるウエストランド井口。

箱に入っていた瓶を取り出すウエストランド井口。

飯塚 スペインビール。「M-1」決勝進出、おめでとうございます。

井口 えー、ありがとうございます! なんて書いてあるんですか?

──「M-1GP 2022 Champion Westland」。飯塚さんからのメッセージです。

井口 チャンピオンって(笑)。

飯塚 決勝前に飲んでもいいし、優勝してから飲んでもいいし。

井口 えー。こういうことなかったんで、うれしいです。ありがとうございます。

瓶に書いてある文字を確認するウエストランド井口。

筆記体のクセが強すぎて書いてある文字をよく読めないウエストランド井口。

うれしそうなウエストランド井口。

漫才のすさまじい進化の原因は

──ではでは、やはり「M-1」の話からいきましょうか。

井口 いやーとりあえず、よかったですね。

飯塚 「(ウエストランドが決勝進出して)よかったね」って、僕も言われます。僕が「ありがとうございます」と返すのもおかしいんですけど(笑)。

──同じタイタンからキュウも進出しました。

井口 この「タイタンから2組」のすごさって世間に伝わっていますかね? そもそもタイタン所属で「M-1」にエントリーしているのは6組しかいないんですよ。3分の1がファイナリストですから。とんでもないことなんです。会見でも言いましたけど、よしもと以外で東京の事務所から複数組が決勝に行くことも初で。さすがに(太田光代)社長もテンション上がっているという噂を聞きました。

飯塚 この連載のおかげもあると言っちゃってもいいかな?

井口 まあ、チラつきますしね。ここで話すから絶対行かなきゃっていうプレッシャーが。

飯塚 佐久間(宣行)さんのYouTubeに出たり、東野(幸治)さんにかわいがってもらっていたり、ナタリーの連載もそうだけど、ウエストランドの注目度は上がってるとは思うんだよね。井口くんは今“キテる”芸人だと思うんだけど、この1年って去年より断然仕事が増えたでしょ?

井口 そうですね。特に下半期は。めちゃくちゃいろんなことをやらせてもらって、その積み重ねが確実に生きているとは思います。

飯塚 テレビ東京の板川(侑右)さんが「収録に来たときのウエストランドのパワーがすごかった」って言ってた。

井口 本当ですか(笑)。いろんな経験をさせてもらって力が付いたってこともあるでしょうけど、知ってもらえているのがだいぶ予選でのやりやすさにもつながっていたと思います。飯塚さんは準決勝、観たんですか?

飯塚 リアルタイムでは観られなかったけど、配信を買って観た。

井口 どうですか? 決勝のメンバー。

飯塚 このメンバーを見ると、漫才という文化がすごいスピードで進化しているなと思う。霜降り明星とか、和牛とか、かまいたちが出ていた3、4年前とは競っているものが全然違うというか。いわゆる正統派みたいな人がほぼいない。

井口 それってどうなんですか? 進化と言えばいいですけど、ぶっ壊れてるんじゃないかという気もしますけど(笑)。

飯塚 そうだよね。この流れが正しいのかどうかは誰もわからない(笑)。

井口 以前は、「すごいウケてるけど、はちゃめちゃだしな」ということで落ちていた人もいると思うんですよ。それがなくなった感じはします。

飯塚 かつては知名度ある人がウケやすいということもあった気がするけど、今は逆だよね。お客さんはニュースターの誕生を願っているから、知名度の高い人のほうがハードルが上がっている空気感がある。

井口 観に来ているのがお笑い好きな人たちですもんね。新しいものを求めているでしょうし。

飯塚 漫才がどんどん進化してるのって、「M-1」の動画配信も原因の1つだと思うんですよ。あれを観ることによって、芸人さんもお客さんの目もどんどん研ぎ澄まされていっている。

井口 ちょっと前は、もう少し同じ種目感がありましたよね。大げさに言えば「デート」みたいな題材で、その中で誰が一番面白いかという戦いだった。今は、ほかの人といかに違うことをやるかという大会になっている感じがします。

飯塚 今まではもっとシンプルにボケとツッコミの応酬で、1個1個の面白いボケを段積みしていくようなネタが多かったけど、4分間で1つのストーリーを描く作品性の高いものが増えた気がする。漫才がコント化しているというか、2人の会話劇の妙を見せるネタが多かった。そういう意味では、ウエストランドは異色なんだけど。

井口 あんまり僕は人のネタ見ないようにしているのでわかりませんけど、僕らと被ってる奴なんていないだろという感じでやってます。ただ、後輩とライブを一緒にやってきたのは大きいかもしれません。「漫才工房」で言うと、ストレッチーズママタルトも準決勝まで一緒に進んでいますし、古くならないためにも意味があったなと。

※編集部注:「漫才工房」はウエストランドが中心となって毎月開催している新ネタライブ。

ウエストランド井口(左)と作家・飯塚大悟(右)。

ネタをがんばってきたんだなあ(しみじみ)

──井口さんはこの決勝メンバーの中にご自身がいることをどう思いますか?

井口 だいぶ様変わりしましたよね。初の人も多いし、僕が最年長になっちゃいましたし。年齢の高さで言うと、僕らとキュウが上位4人を占めているので、タイタンが平均年齢を上げちゃってるんですよ。なんか……ずっとネタをがんばってきたんだなあと思います。「オンバト」(NHK総合)出て、「THE MANZAI」で認定漫才師になって、「M-1」にも挑戦していることを考えると。見ている人からしたら「どっかで行ききれよ!」という感じでしょうけど(笑)。

飯塚 「オンバト」も「レッドカーペット」も全部出てる人いないんじゃない? 錦鯉だって出てないでしょ。この10年くらいのお笑い史、どこ切ってもウエストランドがいるっていう(笑)。

井口 そこでずっと粘り続けているっていうのは相当ですよ。

──準決勝の手応えはご本人的にどうでした?

井口 ニューピアホールの準決勝にしては温かい気がしました。前は、受かる人と落ちる人の差が明らかにわかるくらいでしたから。寄席向きの正統派なネタがめちゃくちゃウケていて、全然通用しない感じでしたけど、今回はライブの地続きという雰囲気がありましたね。お客さんが変わってるのかな。

──ベストアマチュア賞の深海魚がトップバッターで登場したのも影響したのかもしれませんね。温かい目で観る態勢が整っていたというか。

井口 ベストアマチュア賞が深海魚でよかったですよ。ムカつく奴だったら「なんでこいつらが準決勝の舞台に立つんだよ」みたいになっちゃいますから。毎回深海魚でいいんじゃないですか?

飯塚 勝手にBKB(バイク川崎バイク)さん枠にしないであげてよ。深海魚が決勝に行く未来も全然あるから。

※編集部注:バイク川崎バイクは長年「M-1」「キングオブコント」などの賞レース決勝の前説を担当し、会場を盛り上げている。

「M-1グランプリ2022」準々決勝でネタを披露するウエストランド。

「M-1グランプリ2022」準決勝でネタを披露するウエストランド。

──決勝はまた準決勝の雰囲気とは異なると思いますが。

井口 難しいですよね。考えすぎてもよくないような気もしますから。審査員も知らされていませんし、順番も笑神籤ですし。

飯塚 不確定要素が多いよね。僕は、どういう空気だったらウエストランドに有利なのかなって勝手にシミュレーションしちゃってる。会場が重くて、重いのにセンスの漫才が続いて、みんなウケ切らないときにウエストランドの出番が回ってきたらめっちゃハネるんじゃないか、とか。

井口 ただ、「みんなウケてんじゃねえかよ!」のパターンも全然ありますからね。今回の準決勝がそうだったんですよ。僕らはCグループのトリだったのでいい位置だと思っていたんですけど、「Aからウケてんのかよ!」ってなりましたから。

飯塚 2020年にウエストランドが決勝に行ったときは、ウエストランド応援体制で観戦していたんだよ。おせつときょうたのきょうたとラブレターズの塚本くんと、旧知の仲間たちが大結集して。

井口 少ないなあ!(笑)

飯塚 ウエストランドが10番目に出てきて、しゃべり出した数十秒で「あ、なんかダメかも……!」ってなった。で、得点が出たあとは「せめて平場でなんか爪あと残してくれ!」と願ったんだけど、なんもなく終わって、みんなそそくさと帰った。

井口 (笑)。まあ、それを1回経験してますから。

飯塚 ダウンタウンさんとも何度も共演しているしね。

井口 もし松本(人志)さんが審査員をやられるのであれば、どういう奴か知ってくれているのはありがたいですね。前回松本さんが「もっと刺してほしかった」と言っていたので、こっちはどうなっても知らないです。万が一おかしなことになっても「あなたが言ってましたよね!?」って言います。

──決勝進出者発表会見(参考記事:M-1初の決勝、ダイヤモンド「こんないい年になるとは」男ブラ「エッチな気持ち」)のこともお聞かせいただけますか?

井口 いや、会見ってあんなんでしたっけ?

飯塚 GYAO!の生配信を観ていたけど、受け答えがシュールな人ばっかりだった(笑)。MCのかまいたちさんもあまり絡んだことのないコンビもいただろうから、井口くんがいてよかったよ。裏回ししてたもんね。初じゃない?「会見裏回しファイナリスト」は。

「M-1」決勝進出者発表会見で、キュウの話にツッコミを入れるウエストランド井口(左端)。

井口 いやいやいや(笑)。前はもうちょっと厳かだったというか、なんならちょっと涙も垣間見えるくらいの感じだったと思うんですよ。僕は「感動とかいらないよ」と思う派ですけど、さすがに今回はもうちょっと厳かな感じでやってくれよと思いました。会見のあとのマスコミ向けの質疑応答も地獄だったんですから。みんなロートーンで、シュールなボケをしていくだけの時間。で、質問2つで「以上で終わりです」。何が聞けたんだよ!

──質疑応答の場でも井口さんがツッコミ役をしてくれていました。

井口 バスッとツッコむ人があんまりいなかったんで。

飯塚 2人ともボケるコンビが多かったからね。

──会見の去り際にこちらに気づいて手を振ってくれた井口さんの写真も載せておきます。

井口 岡山のローカルタレント(※)とお笑いナタリーっていう、僕の知り合いしか質問してきてないんだから。どうなってんだよ。

※編集部注:ウエストランドの現場にいつもいる、岡山のローカルタレント相田翔吾。赤ジャケットがトレードマーク。

退場時、こちらに手を振るウエストランド井口とヨネダ2000。

──賞レースと言えば、「THE W」の決勝は12月10日(土)に開催です。飯塚さんは構成作家として携わっていらっしゃいますね。

飯塚 今年は放送が土曜日になり、ファイナリストが12枠に増え、審査員も新たな方を迎えます(参考記事:「THE W」審査員6名が明らかに、初はドランクドラゴン塚地&マヂラブ野田)。

──ファーストステージは3つのブロックに分かれて戦います。

飯塚 大会サポーターのニューヨークはその方式を肯定的に捉えてくれてました。4人の中から1人ずつ勝ち抜けるっていうのは、ほかの賞レースと比べて順番の不利が少ないんじゃないかって。本当はどの賞レースも、全組観終わったあとに点数を付けるのが一番なんでしょうけど、それは演出的に難しいから。「M-1」決勝メンバーはガラッと変わりましたけど、「THE W」は決勝常連組が勝ち上がってきてます(参考記事:エルフ、爛々、さとなかほがらか、フタリシズカかりこる、河邑ミクら「THE W」決勝へ)。

──ファイナリスト経験者はAマッソ紅しょうがにぼしいわしTEAM BANANAヨネダ2000天才ピアニストスパイクの7組。初登場のさとなかほがらかさんは2022年5月に浅井企画の仮所属になったという新顔です。

飯塚 芸人さんでも知らなかったと言っている人が多いですね。

井口 僕も知らなかったです。コンビですか?

飯塚 ピン。浅井企画からはおそらくどぶろっく以来のファイナリストだから、河本くんの友達の三野マネージャーも喜んでたよ。

井口 他事務所なのに基本僕らのことしかツイートしない三野さんが。

赤もみじから見る「大ドキュメンタリー時代」

井口 解散のニュースで言うと、赤もみじか。

飯塚 ニューヨークが、YouTubeラジオで「大ドキュメンタリー時代に突入してる」と言っていて。「シン・りょう」とか、自分たちもやっていることを踏まえてだと思うけど、嶋佐さんは「この流れを止められなかった」と話してた。赤もみじの解散ドキュメンタリーと解散ライブ(「赤もみじの道程」)についてはいろんな意見が出てるね。

井口 ファンの人は「解散の理由をちゃんと知りたい」と言いますけど、今回いざ覗いてみたら「こんなんだったら知りたくなかった」みたいなことになったわけじゃないですか。諸刃の剣というか、うまくやらないとマイナスしかない。言いましたけどね? 僕は。「こんなのやるな」って事前に止めたんですから。

飯塚 この連載でも話したよね。芸人の解散をエモく描きすぎじゃないかと。みんながドキュメント性を求めるから、今回みたいな深刻なドキュメンタリーも生まれてくるわけで。「こんなものは見たくなかった」とか「やり方が違うのでは」って意見が出るのもわかるけど、みんなが求めた結果でもあるとは言いたい。お笑いに限らずだけど、ファンが妄想を押し付けてしまっている部分もあるのかなって。

井口 それは本当に思いますね。「M-1」のアナザーストーリーとか、ニューヨークの成功例もあって、みんな始まる前から「こうであって欲しい」がすごい強くあるじゃないですか。

飯塚 「シン・りょう」は、比較的まだ知られていない、ネタも見たことのないくらいの超若手の、小さな揉め事をクローズアップしたからエンタメになったと思う。でも、みんなが大好きで、ネタも平場も天才的に面白いことを知ってる、才能のある2人の生きるか死ぬかの話をエンタメ化するのは簡単ではなかった。あのドキュメントを作った裏方さんの個人攻撃とか人格否定とかをしている人も見かけてしまって、後味が悪かった。

井口 覗かないほうがいいこともあるということですよ。それが今回でわかったんじゃないですか? 赤もみじを犠牲にして。解散するコンビはみんなこうなんだと思ってもらえれば。

飯塚 逆にあれを見たら解散するしかないことがわかったし、それぞれが赤もみじ以外の道で活躍すればいいんだってプラスに見る方法もありましたね。あと、コンビ解散を今生の別れみたいにしすぎないほうがいいと思う。別にやりたくなったらまたやればいいわけだし、いつでも戻ってこれるくらいの雰囲気を作ってあげてもいいのかなって。

特番に“発明”をぶつけてくる野田クリスタル

飯塚 「ドラフトコント」(フジテレビ)(参考記事:「ドラフトコント2022」ビスブラ原田、野田クリスタル、岡野陽一ら候補20名発表)は、みんなが正解を探ってる感じが面白かったです。“本気すぎるネタ”だとテレビ的に盛り上がりに欠けるんじゃないかとか、“お祭り的なネタ”だと本気度が足りないと思われてしまうんじゃないかとか、そのあたりを各グループが探っているのがすごく伝わった。

井口 ちゃんと競っているヒリヒリ感もあって。

飯塚 バラエティ番組の企画とは言え、「あのチームはイマイチ」って言われるのは嫌だもんね。僕はチーム春日が特に印象的でした。だいたいこういう番組だと、それぞれが得意なパターンを組み合わせてコントを作ると思うんだけど、ネタ作りを担当した(マヂカルラブリー)野田さんは「こんなの見たことない」という発明みたいなものをこの「ドラフトコント」の場に持ってきた。

──メンバーの持ちギャグを書いたカンペを野田さんが出して、実際にその場でカンペ通りに動いてもらうというコントでした。ご本人もYouTubeチャンネルで振り返っています。

飯塚 ネタ台本の締め切りまで期間がなかったり、全員集まってネタを合わせられなかったり、実はかなり厳しい条件下で苦心の末に生まれたネタだったと話していたけど、あの豪華な演者たちを贅沢に使うのも戦略だと思うくらいネタが秀逸だと思いました。

井口 チーム田中のう大さんもすごかったです。かもめんたるは今年の「M-1」でも準決勝まで行きましたし、ここに来てまたちゃんと評価されている感じがします。舞台やドラマにも引っ張りだこで、先日会ったときに「大変そうですね」と話しかけたら、「大変だけど、なりたかった形」だと言っていました。「キングオブコント」獲った直後は本当に自分の力が出せる仕事ばかりじゃなくてしんどい時期もあったんでしょうけど。この前、東京03さんのラジオコント番組「東京03の好きにさせるかッ!」(NHKラジオ第1)の収録に行かせてもらったんですけど、そのコント台本もう大さんが書いてくれていて。僕に当て書きしてくれていたのですごいやりやすかったです。う大さんが書き物で無双してる感じはありますね。

飯塚 昔は「ネタで売れたら次はテレビバラエティ」という選択肢しかなかったけど、今はいろんなエンタメが増えた結果、自分の得意分野で活躍できる時代になっている気もする。

ウエストランド井口(左)と作家・飯塚大悟(右)。

きしたかのは宝

──11月からはこぼれてしまったんですが、今日12月2日に出したニュースで、きしたかのが「芸人雑誌」全種で表紙というのがありました(参考記事:「芸人雑誌」最新刊、3種類の表紙は全部きしたかの)。

井口 この連載でもいずれきしたかのがこういうふうに人気者になるっていう話をしていましたよね。

飯塚 佐久間さんのYouTubeでヒコロヒーさんが「変な売れ方せんといてほしい」と言っていましたけど、みんな売れ方を心配してる(笑)。宝なんでしょうね、お笑い界の。ちゃんと正しく売れてほしいっていう。

井口 この前きしたかのに会って聞いたのは、忙しくてYouTubeを撮る時間がなくなっているらしいです。今はあくまで個人でやっているものなので、スケジュールを押さえられない。

飯塚 YouTubeは絶対ちゃんとやったほうがいいよね。さらば青春の光もあんなに忙しいのにYouTubeを撮る時間だけは確保していて、それでファンがずっと増え続けてる。

井口 こんなに心配して毎回話題に出しているのに、あっちからは全然言ってこないんだよなー。

「つぶぞろい」復活もこの連載がきっかけ

──飯塚さんがかつて主催していた「つぶぞろい」が約10年ぶりに開催されるニュースもありました(参考記事:“伝説のライブ”作家飯塚の「つぶぞろい」10年ぶり復活、三四郎、ウエランら集結)。

飯塚 もともとは2011年に新宿バイタスという地下の小さい劇場で始めたライブで、ウエストランドとか、三四郎とか、ラブレターズとか、マヂカルラブリーとか、自分が面白いと思った芸人さんを集めてやっていました。自称「伝説の地下ライブ」です(笑)。10年経ってせっかくこのメンバーが集結するし、しかも草月ホールできるので、普通のライブで終わらせるつもりはないです。

──当時観に来ていた人も、今回初めて知った人も楽しめそうです。

飯塚 そもそもはこの連載の1回目で「つぶぞろい」の話をしたと思うんですけど、ニッポン放送の石井(玄)さんがそれを読んで、「やりましょう」と。

井口 この連載発ってことですね。

──え、すごくいい連載ってことじゃないですか。

飯塚 今日も初対面の人に言われましたよ。「読んでます」って。

井口 僕もけっこう言われます。

──よかった、よかった。

飯塚 ただ嫌なのが、嫌って言うと語弊がありますけど(笑)、すごい一生懸命、何カ月もかけて作った特番より全然こっち(連載)のほうが言われるんですよ。切ないです。もっとほかにも褒められたいことあるのに。

井口 まあ、こっちは飯塚さんが出役ですから。

飯塚 だから、さっきの「大ドキュメンタリー時代」の話に戻るけど、YouTubeで企画を一生懸命考えてやっても労力のわりにそんなに反響がないからドキュメントが増えるんだと思う。「M-1」の自分たちの予選動画を観て自分たちで分析する動画がいっぱい出たりとか。一大ドキュメントブームにみんなが走っていっているという。

──そして12月27日(火)にはこの連載のイベント「ライブ!!今月のお笑い」があります。チケットはこの記事の掲載と同時にイープラスで販売開始です。

井口 このシールは?

「ライブ!!今月のお笑い」シール

「ライブ!!今月のお笑い」シールをPCに貼るとこんな感じに。

──会場で、2回目の注文をしてくれた人にあげます! 今後の連載のゲスト資金のため、来場者のみなさんどうぞお願いします。

井口 で、何やるんですか?

──「今年のお笑い」として2022年のお笑い界を振り返っていただこうかなと思っています。もちろん、「M-1」の話も思う存分してください。ちなみに記事版の「12月のお笑い」(1月頭掲載予定)には、イベントでは話さないオリジナルの部分も用意しますので、記事は記事で楽しんでもらえると思います。

「今から乳毛で○○しま~す」みたいなネタ、久々に見た

井口 「M-1」落ちちゃったけど面白かった人、前回も聞きましたけどまた言っておきます? 本人がこの記事をRTしてくれるかもしれませんし。

飯塚 それもけっこう今トレンドになっているんだよね。自分もやってるけど「落ちたけど面白い人」を紹介するブーム。TP(たかはし)はサイゾーWebで記事(「TPの芸人礼賛」)を書いてるし、能町みね子さんがラジオで言っていたり、スーパーマラドーナさんやユウキロックさんもYouTubeで語っているし。落選した人を褒めるのも飽和状態(笑)。

──前回の取材日にはまだ全部の3回戦動画が上がっていなかったので、改めて気になった人がいればぜひ。

飯塚 準々決勝まで行ってる人は間違いなく面白いから、3回戦で落ちちゃって面白かった人で言うと、人間横丁。何千組といる中で人間横丁みたいなコンビは本当に少ないと思うから、そういう人はウケ量とかじゃなくて別枠で入っていてもいいのかなと思った。

井口 面白かったですね。あれで落ちちゃうんだっていう。赤もみじが解散したので、「漫才工房」に人間横丁を入れようという話になったんですけど、あんなピュアな人たちをここに入れるのはかわいそうだなと思ってやめました。あんなに罵詈雑言が飛び交う楽屋にはいさせられない(笑)。

飯塚 確かに、人間横丁をウエストランドに触れさせたくないかも。ウエストランドのこと「ヘイトスピーチ漫才」って言ってる人いたからね。

井口 ちょっと待ってくれよ!(笑)こっちは笑わそうとしてるんだよ。

飯塚 そういうジャンルなんだ、と思った。

井口 違います!

飯塚 あとマタンゴっていうマセキの男女コンビも面白かったし、準々行ったけどリニアの今年のネタも相当よかった。リニアは今年で解散しようとしていたんだよね。準々決勝まで進んだことでもう1年やることにしたと酒井くんがnoteで書いていて。

井口 また闘志に火が付いたんでしょうね。「M-1」のヒリヒリって本当に嫌だけど楽しいところもあるので。あそこで評価されるとやっぱりうれしいですから。

飯塚 今年は「キングオブコント」も「M-1」も予選からたくさん見て、最新鋭のネタをたくさん浴びたんだけど、先週「おもしろ荘」(日本テレビ)のオーディションで久々にリズムネタとかを見て「こんなお笑いあったな!」ってびっくりした(笑)(参考記事:「おもしろ荘」最終選考にチェリー大作戦、ひつじねいり、どんちっち、YELLOWwwら)。

井口 あはははは(笑)。研ぎ澄まされたネタばっかり見てたから。

飯塚 でも、そういう芸人さんたちが生きにくい世の中だよね。漫才は漫才らしく、コントはコントらしくないと「M-1」も「キングオブコント」も獲りにくいから。

井口 「歌ネタ王」はなくなっちゃいましたしね。

飯塚 ピンの人には「R-1」があるけど、リズムネタのようなコンビは売れるきっかけになる場が減っている気がする。流行語大賞を獲るような、お茶の間のスターみたいな人が生まれにくいのかなとは思った。

井口 以前はそれが主流の時代があったわけですもんね。「エンタの神様」(日本テレビ)とか。

飯塚 だからオーディションで「今から乳毛で○○しま~す」みたいなネタを久々に目の当たりにして、「うわ! 懐かしい!」ってうれしくなってしまった(笑)。

ウエストランド井口(左)と作家・飯塚大悟(右)。

爆笑問題・田中さんが褒めてくれたから大丈夫

──「M-1」決勝まではどう過ごしますか?

井口 ここからはもう調整とかではない気もしますね。できることは、しっかり寝るっていうことだけ。

──最近はサッカー仕事も増えてあまり寝ていないそうですが。

井口 今日も「ポップUP!」(フジテレビ)に行かせてもらったり、ABEMAのスタジオに呼んでもらったりしています。昔はワールドカップに関われるのなんか一部の人だけっていう感じでしたけど、ネット番組とかもあって幅広くなっていますよね。ユニホームも早めに買っておいてよかったです。

飯塚 日本・コスタリカ戦の試合の時間帯に「オードリーの1Hネタライブ」があって、ウエストランドがゲストで出ていたんですけど、井口くんがエンディングにユニホーム着て出てきてました。

井口 「あいつサッカー好きなのに全然気にしてねえな」と思われないようにしたんですけど。

飯塚 みんな「M-1」準決勝の激励をしようとしてたのに、ユニホーム着てきたから戸惑ってた。

井口 「こいつなんなんだ」みたいな空気になってましたね(笑)。でも、本当にありがたかったです。あそこにいたみんなが「(決勝)行けるよ」と言ってくれて。やっぱり、賞レース決勝を経験している人は“決勝に行く感じ”をすごくわかっているじゃないですか。「これだったら行ける」みたいな感覚って、あやふやのようで意外とちゃんとあるというか。ルシファー吉岡さんとかゾフィーの上田さんとか、ファイナリストの人たちが軒並み言ってくれたのは自信になりました。

飯塚 以前、ニッチェが営業でやっていたネタを東京03の飯塚さんに「いいネタだね」と言ってもらったらしくて、僕もニッチェもあまりそうは思っていなかったんだけど、叩いていくと確かにいいネタに仕上がってきて、賞レースでも使える勝負ネタの1つになったことがある。なんか、そういう人から気付かされることってあるよね。

※編集部注:飯塚はニッチェの単独ライブに毎回構成として参加している。

井口 今の形のネタは去年の11月くらいにできて、12月の「タイタンライブ」でやったんですけど、たまたま見てくれていた(爆笑問題)田中さんが「いいネタじゃん」と珍しく言ってくれたんですよ。そのときからなんとなく自信はあって。ただ、少し前に田中さんに会ったときにその話をしたらマジで1ミリもピンときてない感じでしたけど。何が怖いって、「そんなの覚えてねーよ!」とかも言わず、ずっとこっちを見てるだけだったっていう(笑)。

──さて今月はこんなところでお開きです。決勝、楽しみにしていますから、体調を整えて臨んでください。

ウエストランド井口

「M-1GP 2022 Champion Westland」!

イベント情報

ライブ!!今月のお笑い~井口と飯塚の楽しい連載~

日時:2022年12月27日(火)19:00開場 19:30開演(約2時間)
会場:東京・阿佐ヶ谷ロフトA
料金:前売2000円 当日2500円(別途飲食代500円以上) / 配信1500円
<出演者>
ウエストランド井口 / 飯塚大悟

チケット

会場観覧:イープラス(先着)
販売期間:12月6日(火)18:00~12月26日(火)23:59

配信視聴:ツイキャス
販売期間:12月6日(火)18:00~12月31日(土)21:59
視聴期間:12月27日(火)19:30~12月31日(土)23:59

つぶぞろい2023 ~みんな売れて大復活ライブ~ in 草月ホール

日時:2023年1月22日(日)17:30開場 18:00開演
会場:東京・草月ホール
料金:4000円
チケット:2022年12月11日(日)23:59までチケットぴあにて二次先行(抽選)販売中。
<出演者>
三四郎 / マヂカルラブリー村上 / ウエストランド / ラブレターズ ほか

井口浩之(イグチヒロユキ)

1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太(コウモトフトシ)とウエストランドを結成。2013年4月に「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年、2013年の「THE MANZAI」認定漫才師、「M-1グランプリ」では2020年に初めてファイナリストとなり、2022年に返り咲き。12月18日(土)、決勝のステージに立つ。ラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeなどで配信中。タイタン所属。

飯塚大悟(イイヅカダイゴ)

1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「ヒルナンデス!」(日本テレビ)、「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」(テレビ朝日)、「水曜日のダウンタウン」(TBS)、「トークィーンズ」(フジテレビ)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など。書籍「深解釈 オールナイトニッポン~10人の放送作家から読み解くラジオの今~」(扶桑社)販売中。

※記事初出時より、「おもしろ荘」の参考記事を追記しました。

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