2020年、いつもと違う年 その4 [バックナンバー]

ZOMMY(ゾフィー、ザ・マミィ)×ユーロライブ小西朝子氏

久々の新ネタライブでやっと呼吸できた気がした

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新型コロナウイルスの流行で図らずも特別な年になった2020年を、お笑いに携わる人たちと気のおもむくままに振り返るインタビュー企画。「勇者ああああ」板川侑右さん×ラブレターズかもめんたる・う大さん×かが屋・賀屋さんTBSラジオ宮嵜守史さん×ウエストランドに続く第4回はユーロライブで「テアトロコント」などを手がける小西朝子さんと、ゾフィーザ・マミィのインタビューを掲載します。夏に予定していたツーマンライブ「ZOMMY2」の中止を経て10月に開催された「ZOMMY+ vol.1」の終演後、新ネタを3本ずつ披露して久々の感覚を味わった2組は「ようやく今日、2020年が始まった」と話してくれました。

取材・文・撮影 / 狩野有理

ゾフィー×ザ・マミィ×小西朝子さん インタビュー

初めて即完した単独の中止、最後まで粘った

──今日10月24日にゲストを迎える新しい形の「ZOMMY+」としてそのvol.1が無事開催できました(参考記事:ゾフィーとザ・マミィ「ZOMMY+」で再起動、キングオブコント獲っても一生やりたい)。新型コロナの影響でライブの実施が難しい中、久しぶりに新ネタを3本下ろすストイックな舞台に立ってみていかがでしたか?

ザ・マミィ林田洋平 芸人の本来の姿みたいなものを取り戻せた感じがします。久しぶりに新ネタをわーっと一気に下ろして、「ネタってこんなにしゃべるんだっけ?」って思いました(笑)。

ザ・マミィ酒井尚 芸歴1年目とかに戻った感じ。

ゾフィー上田航平 わかる。今日も昼の部で1回目やったときに、今まで2人でどうやってたか忘れちゃって。マミィが大きい声を出してるのを見て、「そういえば俺もおっきな声をいっぱい出してたな」ってだんだん感覚を思い出したんだよ。だから夜公演は大きい声出して、「はあっ!」ってなった。「そうだ俺、デフォルトこれだった!」って。

「ZOMMY+ vol.1」で新ネタを披露するゾフィー。上田さん(右)は大きい声を出していました。

林田 息ができた(笑)。

上田 そうそう。呼吸できた気がした。

林田 ようやく始まった感じですね。

上田 本当にそうだわ。今日始まった、2020年が。

ゾフィー・サイトウナオキ もう終わるのに(笑)。

──このインタビューは新型コロナによって思いもよらず特別な1年になった2020年をざっくばらんに振り返ろうというものです。まずはゾフィーのお二人、3月に予定していた単独ライブ「君はシリアス」が中止になってしまいましたね。

上田 ちょうど同じ時期だったやさしいズの単独が1週間くらい前に中止になったんです。そこで「もしかしたら自分たちも」というのを意識しだして、なんとか耐え忍んで準備を進めているところでした。でも通し稽古に入るときに「外出自粛を」という呼びかけが1段階強まってしまって。そこでスタッフさんたちと相談しました。

サイトウ もし1人でも(感染者が)出て、お笑いやってるのに笑えなくなるのは意味わかんないって言ってたよね。

──本末転倒ですもんね。ザ・マミィは自分たち主体の公演でできなかったものはありますか?

林田 2月末に新ネタライブをやろうとしていたんですけど、事務所の判断で前日に中止になりました。その時期に吉本(興業)さんの公演が全部中止になるっていう話があって、芸人の間では「ライブできなくなるんだ」という空気が漂い始めていましたね。

酒井 (新ネタライブが中止になって)僕は気が楽になった部分もありました。

「ZOMMY+ vol.1」で新ネタを披露するザ・マミィ。

林田 新ネタだからね(笑)。ネタ作りがけっこうギリギリで「これで行くしかない!」って覚悟を決めて、1回収録に行ったんですよ。で、終わったら稽古しようということになっていたんですが、収録の現場で中止と聞かされて。もちろんショックだったんですけど、「ハアァ~」みたいな(笑)。わけわかんない気持ちになりました。

酒井 開放された感じでした。

上田 わかる。俺らは1週間前に中止になったけど、完成度で言ったら80%くらいだったの。そこで中止が決まって「ああー」ってなって、80%からはもう作らなかった。そこまで作ってたら完成させとけばいいのに、「はい、もうおしまーい」って(笑)。

林田 やっぱり見せるから作るんですよね。

上田 もちろん作りたくて作ってるけど、そのゴールがあるから作るっていうのはあるよね。だからこの状況になったことで全部止まった。

酒井 サイトウさんは今までもずっと止まって……?

サイトウ 止まってねえわ! 俺は単独が中止になることに対して最後まで粘ってました。今回の単独は初めてチケットが即完したんです。去年は面白いものができたのに客席が埋まらないってめちゃくちゃ悔しい思いをして、初めて完売した状態でやれることがうれしかったので、なんとしてもやりたかった。

上田 それはあった。ふくちゃんの「謝罪会見」をやった前回の単独は、人力舎の養成所生にお願いして席に座ってもらって、それでも埋まらないみたいな状況で。

サイトウ だから俺は「悔しい、やりたい」が強かったですね。

上田 そういういろんな感情全部が相殺されて、俺は無になったんですよ。中止が決まって喫茶店でお茶しながらタバコ吸って、サウナ行って、帰って、寝ました。一気に普通の日常に戻りましたね。

小西朝子さんと、ゾフィー、ザ・マミィ。林田さんも愛用の写ルンですで撮影しました。

──小西さんはどうでしょう? ユーロライブのあるユーロスペース全体は4月から5月いっぱいまで休館していましたが。

小西朝子 ユーロライブとしては3月は「渋谷らくご」をやって、月末には「テアトロコント」の特別編としてミズタニーのベストセレクションを予定していました。その頃、東京芸術劇場で「さまぁ~ずライブ」をやっていたのもあって、予定通りできそうなムードではあったんですが、公演が始まる週に都から「土日は特に外出を控えてください」というアナウンスが出たんです。さらに土曜日は雪が降るくらいすごく寒くなるという予報が出ていて、ただ寒いから体調を崩したのか、コロナなのかわからなくなるのが嫌だなっていうのをミズタニーの水谷(圭一)さんと相談して、土日の公演だけ中止することに決めました。

上田 その頃ってみんな価値観バラバラでしたよね。「ヤバい」って言う人もいれば、「別に問題ない」っていう人もいて。

小西 そうでしたね、このときは。

──「自粛」という言葉のために主催者側は決断するのに苦労したと思います。

小西 本当にそうでした。ちなみに私はさまぁ~ずさんのライブと同時期に下の階のシアターイーストでやっていた玉田企画の公演(参考記事:玉田企画「今が、オールタイムベスト」開幕、玉田真也「相反する感覚描けた」と自信)に携わっていたんですが、劇場から「ダメ」とは言われないんだったらやろうか、という判断でした。芸劇は都の劇場なので感染症対策もしっかりやってくれていましたしね。

生活の知恵を伝えたくて始めた「ねずみ汁」

──その後、緊急事態宣言で外出すら難しくなった日々をどんなふうにお過ごしでしたか?

小西 私は在宅ワークに切り替えて、ずっと貸しホールのキャンセル対応をしていました。4月はみんな中止にせざるを得なかったので、わりとサクサク判断していって。だから3月のほうが大変でしたね。中止にしてもやるにしても、何をどう判断すればいいのか手探りだったので、一斉に休みましょうっていうほうが気持ち的に楽ではありました。

林田 芸人はこの時期、配信ライブが急増しましたよね。家で大きい声出してがんばって、終わって静かになって1人で眠る、みたいな毎日でした。

酒井 僕はマジつまんなかったです。女の子と遊べないから。

──通常時の酒井さんは女の子と遊び放題なんですか?

ザ・マミィ酒井さん(右)

酒井 そうですね。でもガールズバーも行けないですし、女の子を誘うわけにもいかないですし。だからマ~ジ、つまんなかったです。

一同 あはははは!(笑)

酒井 でもそんなときに、自分が見つけた生活の知恵だったり、なんにもなくても楽しいことはできるんだよっていうのをみなさんに教えたくて、YouTubeチャンネル(日々の暮らしを紹介するVlog「ねずみ汁」)を作ったんです。

林田 そういうコンセプトだったんだ(笑)。

酒井 自分の中で食の幅も広げたかったの。早起きするようになったから公園や森に行って、どんぐり拾って食べたりして。

サイトウ 俺はもう(経営している)居酒屋のほうがバタバタで。お店閉めて、資金繰りして……って動きまくってました。だからすみません! お笑いに関しては本当に何もしてなかったです。

上田 俺はそのときすでに「今年はオフ」みたいな気になっちゃってたなあ。(かもめんたる)う大さんに「これは神様が怒ったんだ。今年はもう何もするなってことだよ」って怖いことも言われて(笑)。単独ライブまではめちゃくちゃネタを作っていたから、1回全部ストップして、ゲームを買ってみたりとか、娯楽を片っ端からやって過ごしていました。

サイトウ 満喫してるじゃねえか(笑)。

上田 そうね。つらいというよりは、たくさん寝たり、たくさん映画観たり、逆に楽しい日々で。どうせみんなオフなんだからいいじゃん、みたいな。この隙に何か新しいことやってやろうとはならなかった。今年は「キングオブコント」も「M-1」もないだろうと思ってたから、変にがんばってメンタルやられないように、寝て、起きて、ごはん食べてっていう普通の毎日を送っていましたね。

ライブは野菜。やらないと身体にガタがくる

──お笑いを含めたエンタメ界が再開方法を模索する中で「無観客配信ライブ」という形も登場しました。

サイトウ 俺らはあんまり出てないよね? 「やついフェス」くらい。しかもリモートで、俺ちょっとしか出ていないし。出てたのかもわからないし。

──と言うと?

上田 俺がほぼ1人でコントをやっていて、一瞬だけサイトウさんがLINEのビデオ電話で出るっていう内容だったんです。

林田 お客さんにどう見えているか2人共わかんない(笑)。

上田 そうそう。それはそれで配信されているから、サイトウさんは2個離れた空間からライブに出ているっていう。

サイトウ スーツだけは着ましたよ(笑)。そのくらいだよね、俺らは。

上田 そうだね。でも俺、この辺から体調崩しちゃって。さっきめっちゃ楽しく普通の生活を満喫していたって言ったじゃないですか。サイトウさんが「チェだぜ!!」100本ノック(参考記事:ゾフィーサイトウ「チェだぜ」100本達成に感慨「これで流行らなかったらチェだぜ!!」)をやっていたので、家で鼻くそほじりながらRTしているような毎日だったんですけど、6月以降ずーっとだるくて。

林田 気分的なものですか?

上田 そうだと思う。当たり前だったライブが一切なくなったのがここへきて効いてきた。ライブって野菜なんだよ。

林田 え、「ライブって野菜」?

──どういうことですか?

小西朝子さんと、ゾフィー、ザ・マミィ。

上田 野菜って別に食べてなくても大丈夫じゃないですか。でもいつか身体にガタくるじゃないですか。……それです。

小西 ただちに影響はないけど?

上田 そうそう。ライブがない日々が積み重なって、あるとき急に調子を崩しましたね。ずっとなんかモヤモヤしてて。

酒井 あと、配信酔いしませんでした? ずっと画面見て文字を追って、「もういいよ配信!」みたいな。で、久々にライブ出たとき一撃で喉潰しました。

上田 わかる(笑)。

林田 僕ら無観客ライブで新ネタを下ろして、お客さんの前で一切やることなく無観客のバトルライブで叩くっていう変な経験しましたよ。

──ウケ具合を把握できていないネタを、ウケ具合がわからない環境で披露するという。

林田 で、画面の向こうにいるお客さんが投票して勝敗を決める。なんかもうよくわからないサイクルに入ってましたね。

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試行錯誤したコント村撮影、新ネタで息吹き返した

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大槻モヨ子 @lolita884

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