カクバリズムの20周年公演ファイナルが立川で大団円!レーベルは新たな船出へ

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カクバリズムの20周年記念イベント「KAKUBARHYTHM 20years Anniversary Special」のクライマックスシリーズ最終公演が、11月23日に東京・立川ステージガーデンで開催された。

「KAKUBARHYTHM 20years Anniversary Special Vol.10 Final」のフィナーレの様子。(撮影:三浦知也)

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イベントの開演を宣言する角張渉。(撮影:三浦知也)

「KAKUBARHYTHM 20years Anniversary Special」はレーベルの設立20周年を記念して企画されたもの。今年4月開催の東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)公演を皮切りに、全国4都市でカクバリズム所属アーティストとゲスト陣によるライブが繰り広げられた。冷たい雨がちらつくあいにくの天気となった最終公演当日、立川ステージガーデンには20周年を祝うべく多くのファンがオープンから来場。その客層は老若男女さまざまで、子供連れのグループ客も目立つなど、カクバリズムがファンと歩んできた20年という歳月を感じさせる光景が広がっていた。この日のライブはMAIN STAGEと、会場の2階後方のホワイエエリアにDJブースを設置したSUB STAGEの2ステージ制で実施。SUB STAGEではDJとして登場したMU-STARSが多彩な選曲でオープニングや転換の時間を盛り上げたほか、Ogawa & TokoroとMasatomo Yoshizawa, XTALによるライブパフォーマンスも行われた。

思い出野郎Aチーム(撮影:三浦知也)

MAIN STAGEでは、カクバリズムの代表である角張渉が出演アーティストを1組ずつ紹介しながらステージへ送り出していく。トップバッターを務める思い出野郎Aチームは手話通訳チームとともに登場。人気曲「楽しく暮らそう」でライブの幕を開けると、そのまま「独りの夜は終わりさベイベー 君がどこにいても 今夜一緒に踊らないか それぞれの場所で」と語りかけるように歌う「独りの夜は」を繰り出し、オーディエンスの心をグッとつかんだ。高橋一(Trumpet, Vo)は「この20年で世の中はめちゃくちゃ悪くなってるけど、今日のステージを観てもらえればいい音楽はずっと生まれていることがわかると思います。これもひとえに皆さまのおかげということで、この先も一緒に楽しんでいきましょう」と呼びかけると「週末はソウルバンド」「ダンスに間に合う」などのキラーチューンを届け、場内を彩り豊かなサウンドで満たした。

Homecomings(撮影:廣田達也)

続いてステージに現れたのはHomecomings。中学生時代からカクバリズムが憧れのレーベルだったという福富優樹(G)が「気付いたら自分たちもそこにいられて、記念すべき日に一緒に演奏できることを誇りに思います」と短く挨拶し、「i care」「Cakes」で4人の息の合ったバンドアンサンブルを響かせた。そしてホムカミはお互いの感触を確かめるように静かに音を重ねたのち、石田成美(Dr)のドラムカウントを合図に「Blue Hour」を演奏。畳野彩加(Vo, G)の澄んだ歌声と、福田穂那美(B, Cho)、石田による美しいコーラスの重なりをじっくりと聴かせオーディエンスを魅了した。

Hei Tanaka(撮影:廣田達也)

Hei Tanakaはサポートメンバーに小林ムツミ(Per / Mumbia Y Sus Candelosos、民謡クルセイダーズ)を迎えた7人編成で登場。セッション的な音の重なりが印象的な「宮古」、タイトルにあるシンプルな言葉の羅列で不思議なグルーヴを生み出す「バン!ドカン!」を演奏して観客の体を揺らしていく。田中馨(Vo, B)以外のメンバーもマイクを取る「やみよのさくせい」では、曲中にあだち麗三郎(A.Sax)が「食べるのも忘れてレーベルのことばっか考えてるあいつ / 20周年マジで本当におめでとうございます / 角張さん ありがとう」と歌詞を変えて角張へ感謝の気持ちを伝えた。Hei Tanakaは最後に「エイヤ」をプレイし、終始お祭りムードだったステージをあとにした。

スカート(撮影:三浦知也)

スカートのステージは、抜け感のある軽やかなサウンドに、澤部渡ならではのどこか影のある歌詞を乗せた「海岸線再訪」で幕開け。そのまま最新アルバム「SONGS」収録の「Aを弾け」、エバーグリーンなポップナンバー「視界良好」を畳みかけると、客席からは大きな拍手が沸き起こった。澤部の「カクバリズムに入って最初に作ったレコードの曲をやります」というひと言で「CALL」の演奏がスタート。岩崎なおみ(B)のベースイントロから徐々に疾走感が増していくバンドサウンドに、オーディエンスは気持ちよさそうに体を委ねていた。スカートはライブ終盤、澤部のメロディセンスが光る「窓辺にて」「静かな夜がいい」を熱演して、ゆっくりとステージをあとにした。

片想い(撮影:三浦知也)

片想いがオープニングナンバーに選んだのは、代表曲の1つ「Party Kills Me(パーティーに殺される!)」。息の合ったバンドアンサンブルの中で歌われる「ぼく音楽やめてもいいよ でも音楽止めたらやだよ」というフレーズは強烈で、オーディエンスの心を打つ。MC.sirafu(G, Key, Trumpet)が「バンドは進んでいかなければいけないので、今日は新曲ばっかりやります」と宣言すると、新曲「バタ供のうた」「チャイスー」を披露。さまざまなジャンルを飲み込んだ無国籍感漂う音楽性と、彼ららしいコミカルなステージパフォーマンスでファンを楽しませた。そしてラストの玉置浩二「田園」のカバーでは、そのエモーショナルな演奏に観客も拳を突き上げて応えるなど、一体感のあるステージが繰り広げられた。

mei ehara(撮影:三浦知也)

イベントの前半戦を締めくくるmei eharaは、バンドを従えて登場すると1曲目に「戻らない」をセレクト。彼女は続く「昼間から夜」「群れになって」「不確か」で、どこか涼しげな歌声でオーディエンスを惹き付け、繊細かつメランコリックな世界へと導いた。MCでは「カクバリズムが20年続いてなかったら私はここにいないし、素敵な先輩たちにも出会えていなかった。なので今はとても充実した日々を送っています」とこの日のステージに立った感想を述べた。12月に7inchシングルをリリースするmei。ライブ終盤、彼女は本作のレコーディングに参加した思い出野郎Aチームの高橋をステージに呼び込むと、「ピクチャー」「ゲームオーバー」の2曲をしっとりと歌い上げてパフォーマンスを終えた。

在日ファンクとmei ehara。(撮影:廣田達也)

そろいのスーツでステージに登場した在日ファンクは「ダンボール肉まん」で颯爽とライブをスタート。パワフルなファンクサウンドに乗せて、浜野謙太(Vo)はキレキレのダンスパフォーマンスを繰り広げながら観客を煽る。バンドは間髪を容れずに「爆弾こわい」を演奏、エネルギッシュな演奏でさらなる興奮を誘う。曲中で浜野がジェームス・ブラウン顔負けのダイナミックなマイクアクションを見せると客席のあちこちから喝采が飛んだ。続く「京都」にはゲストでmeiが参加し、満面の笑顔で浜野とのデュエットを披露した。ひとしきり会場を盛り上げた在日ファンクは新曲「身に起こる」を演奏。ミドルテンポの楽曲をじっくり届けてステージをあとにした。

キセル(撮影:三田村亮)

この日のキセルは、辻村豪文(Vo, G)、辻村友晴(Vo, B)の兄弟にサポートメンバーの吉澤成友(G / YOUR SONG IS GOOD)、野村卓史(Key / グッドラックヘイワ)を迎えた4人編成。1曲目「偶々」の演奏がスタートすると、さりげない演奏に乗って豪文の朴訥な歌声が煙のように場内に漂う。「寝言の時間」「わたしは知らない」「ベガ」の3曲は、いつもは歌とギターをメインで担当する豪文がドラムを叩きながら歌うという変則的なスタイルで届けられた。5曲目の「演歌」は兄弟のみで演奏。古き良き時代の大衆歌謡を思わせるノスタルジックなメロディを2人は朗々と歌い届けた。

VIDEOTAPEMUSIC(撮影:三浦知也)

VIDEOTAPEMUSICのライブは新曲「Izayoi」で幕開け。エキゾチックなサウンドとシンクロした映像がステージ後方のスクリーンに投影される。情熱的なラテンチューン「Kung-Fu Mambo」、世界中の料理の音をサウンドにちりばめた「Funny Meal」といったダンサブルな楽曲が立て続けに届けられると観客たちは心地よさそうに体を揺らしていた。続けてVIDEOTAPEMUSICは、mmmの涼しげな歌声をフィーチャーしたメロウな「Summer We Know」をプレイ。MCで地元の立川で演奏できることの喜びを述べると、新曲「夜の声」をしっとりと届けてステージを終えた。

二階堂和美(撮影:三田村亮)

ふんわりとしたドレスに身を包んだ二階堂和美は、松任谷由実「A HAPPY NEW YEAR」、さだまさし「関白宣言」をアコースティックギターの弾き語りで楽しげにカバー。続けて、地元・広島の盟友であるピアニスト黒瀬みどりを呼び込むと彼女の伴奏に乗せ、ジャズスタンダード「On The Sunny Side Of The Street」を伸びやかに歌い上げ、自ら考えたという日本語詞を会場いっぱいに響かせた。終盤では「めざめの歌」「いのちの記憶」といったオリジナル曲を熱唱。あらゆる感情を解き放つかのような自由かつエモーショナルな歌唱で観客を圧倒した。

cero(撮影:三浦知也)

会場のある立川周辺でミュージックビデオの撮影をしたという人気曲「Summer Soul」を演奏し、リハーサルの段階からフロアを盛り上げていたcero。本番は「Nemesis」で幕開け。幻想的なサウンドに角銅真実(Per, Cho)、小田朋美(Key, Cho / CRCK/LCKS)のコーラスが絡み壮大なサウンドスケープが紡がれていく。スぺーシーなアップチューン「Fdf」でフロアを盛り上げると、高城晶平(Vo, Flute, G)がアコースティックギターを手にして3曲目の「Cupola」へ。メランコリックなサウンドに乗せて高城は艶やかな歌声を響かせる。ミディアムチューン「outdoors」から「Poly Life Multi Soul」へとシームレスに演奏が移行すると場内のボルテージが上昇。バンドが繰り出すダンサブルな四つ打ちのビートがフロアを揺らした。

YOUR SONG IS GOOD(撮影:三浦知也)

イベントのトリを飾ったのはYOUR SONG IS GOOD。この日のライブには2020年12月に病気療養のためにバンドを脱退したシライシコウジ(G)が出演し、ファンの前で最後のパフォーマンスを披露した。シライシのラストステージの1曲目に用意されたのは「GOOD BYE」。陽気な演奏に乗せてサイトウ“JxJx”ジュン(Organ, Vo)が「Bye Bye」と歌いながら手を振ると観客も笑顔でそれに応え、場内に温かな一体感が生まれる。シライシも自らの持ち味である小気味のいいギターカッティングで楽曲を大いに盛り上げていた。ラテン調の「Double Sider」、ゆったりとしたダンスチューン「Motion」でフロアをじわじわと温めたユアソンは満を持してライブでのキラーチューン「On」をプレイ。めくるめく盛り上がっていくアッパーな演奏に場内は爆発的な盛り上がりを見せた。「NETTAI BOY ~熱帯ボーイ~」に続く「THE OUTRO」の演奏時には、活動初期から今に至るまでのユアソンの写真が次々とスクリーンに映し出され感動的なムードが場内に広がった。

「KAKUBARHYTHM 20years Anniversary Special Vol.10 Final」のフィナーレの様子。(撮影:廣田達也)

アンコールでは、この日の出演アーティストがステージに集合。MC.sirafuが作詞作曲、JxJxがプロデュースを手がけた宮崎カーフェリーの新船「フェリーたかちほ」のプロモーションソング「Blue Magic」をセッションした。レーベルの新たな船出を観客が見守る中、20周年ライブは賑やかにフィナーレを迎えた。

※高城晶平の「高」ははしご高が正式表記。

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kakubari wataru @wataru_kakubari

新たな船出が始まる・・・!そして今だに立川の疲れが抜けない笑!本当に皆様ありがとうございました。インスタなどで振り返っていきたいのですが、振り返る前に目の前にやることが満載でして、すでに難航してます笑 https://t.co/ExrvnhLAbS

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