フィッシュマンズ、くるり、折坂悠太、カネコアヤノが競演!秋の夜風に乗せて届けた豪華セッション

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9月11日に埼玉・秩父ミューズパークにて野外イベント「WIND PARADE '22」が開催された。

フィッシュマンズ、岸田繁(くるり)、折坂悠太、カネコアヤノのコラボの様子。(撮影:勝永裕介)

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「WIND PARADE」は「大空の下、風を感じながら楽しむ世代を超えたグッドミュージック」をテーマとして掲げるイベントで、今回が初の開催となる。フィッシュマンズくるり折坂悠太(重奏)、カネコアヤノの4組が、チケットがソールドアウトした満員の会場でパフォーマンスを披露。またヘッドライナーとなるフィッシュマンズのステージでは、4組による豪華なコラボも飛び出した。

折坂悠太(撮影:勝永裕介)

見渡す限り抜けるような青空に恵まれたこの日の天気は秋晴れそのもの。カラッとした日差しの中、ふいに柔らかい風が頬をなでる、「WIND PARADE」の名にふさわしい絶好のコンディションでイベントは幕を開けた。トップバッターを務める折坂悠太は、yatchi(Pf)、senoo ricky(Dr)、宮田あずみ(B)、山内弘太(G)、ハラナツコ(Sax)、宮坂遼太郎(Per)からなる重奏編成で「坂道」をパフォーマンスし、ゆったりとライブをスタート。演奏後に「『WIND PARADE』へようこそ。折坂悠太(重奏)でございます」と挨拶すると、歓声と大きな拍手が沸き起こる。その後、折坂は「今日は皆さんといい風を吹かせられればと思います」と語り、「朝顔」「針の穴」「鯱」を立て続けに演奏。しなやかさと荒々しさが共存するステージングで観客を釘付けにした。続けて、未音源化曲「無言」や「爆発」が披露され、観客は穏やかなムードの演奏に酔いしれるように聴き入る。ラストに折坂はアコギの乾いた音色を響かせながら「さびしさ」をパフォーマンスし、壮大な演奏で会場中を包み込んだ。

くるり(撮影:勝永裕介)

くるりは岸田繁(Vo, G)いわく「温かい音質」の拍手に迎えられ、1曲目に「琥珀色の街、上海蟹の朝」をパフォーマンス。イントロのギターフレーズだけでオーディエンスが沸き立った「ばらの花」では、瑞々しいバンドサウンドが心地よく広がっていく。「ワンダーフォーゲル」を続け、ライブ冒頭から大きな盛り上がりを作り上げた岸田は、4曲を終えたMCで「みんなブーブーで来たの? 僕らは電車で来ました。銀色の魚肉ソーセージみたいな、(特急)ラビューに乗って」と語り、会場に和やかなムードをもたらしたまま「ハイウェイ」へ。この曲ではアコースティックギターを弾き語る岸田の歌声に佐藤征史(B)の柔らかなコーラスが寄り添い、しなやかな音色がミューズパークに響きわたった。

くるり(撮影:勝永裕介)

その後もくるりは、1曲ごとにガラリと景色を変える彩り豊かなサウンドで聴衆を楽しませてゆく。骨太なバンドアンサンブルとスケール感のある美しいハーモニーがオーディエンスの胸を打った「How To Go」が披露されたのちに岸田の口から語られたのは、自身のフィッシュマンズについての思い出。「私と佐藤がクソ大学生やった頃に『宇宙 日本 世田谷』を擦り切れるほど聴いてたんです。今回このイベントがあるってことで、ひさしぶりに聴いたんだけど、『タイムカプセルを開けるってこういうことなんやな』ってくらい、体に浸透してきました」と伝えた岸田は「上京するタイミングで(フィッシュマンズの)アルバムと出会い、たくさんのインスピレーションをいただいたので、お返ししていければと思います」と語り、そのまま1998年発表のメジャーデビュー曲「東京」の演奏へ。24年の時を経てもなお色褪せない衝動を、秩父の青空の下で思い切り鳴らした。

カネコアヤノ(撮影:勝永裕介)

徐々に日が傾き始めた16:30頃、ステージに現れたのは林宏敏(G)、本村拓磨(B / ゆうらん船)、Hikari Sakashita(Dr / San hb)からなるバンドメンバーを引き連れたカネコアヤノ。4人は「セゾン」でライブの火蓋を切って落とすと、「愛のままを」「ごあいさつ」「明け方」を立て続けに披露し、会場に差し込む鋭い西日を物ともせず、いつにも増して力強い歌声とソリッドなバンドサウンドを響かせていく。「エメラルド」「朝になって夢からさめて」とゆったりしたテンポのナンバーが2曲続けて披露されると、熱気で浸された会場が一時的にクールダウン。続く「祝日」では歌い出しの繊細なウィスパーボイスから徐々にカネコの歌声が熱を帯び始め、圧巻のパフォーマンスが届けられた。その後、大胆な転調が印象的な「サマーバケーション」からライブでの定番曲「アーケード」が畳みかけられると、会場の空気は瞬く間にヒートアップする。そしてラストに新曲がパフォーマンスされる頃には、夕暮れがもう目の前に。4人は会場に満ちていく涼やかな空気に負けじと、熱の迸るような轟音を響かせた。

フィッシュマンズ(撮影:勝永裕介)

茂木欣一(Dr, Vo)、柏原譲(B)、HAKASE-SUN(Key / LITTLE TEMPOOKI DUB AINU BAND)、関口"ダーツ"道生(G)、原田郁子(Vo / クラムボン)、木暮晋也(G / ヒックスヴィル)という布陣で「WIND PARADE」のステージに姿を見せたフィッシュマンズは「Go Go Round This World!」でライブをスタートさせた。茂木は事前のインタビューで「僕ら独自のアンサンブルを、大きな音で思いっきり感じてもらいたい」と語っていたが、その言葉通り、6人がアグレッシブに放つ圧倒的なスケールのアンサンブルは一瞬にして聴衆を惹き付け、興奮の渦を作り出してゆく。エバーグリーンな茂木のボーカルが心地よい浮遊感を醸成した「なんてったの」、原田の温かくも切ない歌声が空間に溶けてゆく「頼りない天使」を届けると、茂木は「ひさしぶりに野外で思い切りフィッシュマンズの曲を鳴らすことができるということで、思い切りやりたいと思います!」と、弾けるような笑顔で思いを語った。

フィッシュマンズとカネコアヤノのコラボの様子。(撮影:勝永裕介)

その後も「ひこうき」「Smilin' Days, Summer Holiday」と名曲を惜しみなく奏で届けるフィッシュマンズ。バンドの演奏と見事にシンクロしたドラマチックな照明演出も相まって、曲を重ねるごとに彼らが提示する豊かな音の世界観が深まってゆく中、「WALKING IN THE RHYTHM」ではカネコがゲストボーカルとしてステージに姿を見せる。茂木、原田と向かい合った彼女は力強く空気を震わせる歌声で観客の心を揺さぶり、バンドメンバーがスリリングなセッションを展開したシーンでは思いのままのシャウトで楽曲に没頭した。

フィッシュマンズ、岸田繁(くるり)、折坂悠太、カネコアヤノのコラボの様子。(撮影:勝永裕介)

「みんなでじっくり音楽を感じることができて、本当に素晴らしい夜になりました。感謝しています」。ライブ終盤にそう語った茂木がカネコ、折坂、岸田の3人をステージに呼び込むと、会場は大きな歓声に包まれる。豪華な共演に興奮を隠しきれない様子の観客たちが見守る中、ここで届けられたのは「ナイトクルージング」。繊細な揺らぎをたたえた折坂のボーカルから、深くまっすぐに心に沁みわたる岸田の歌声へ。この日限りのマイクリレーを目の当たりにした会場は、異様なほどの熱気に包まれてゆく。折坂が操るラジオ、岸田が奏でるギター、言葉にならない思いを昇華するカネコの歌声がバンドアンサンブルを豊かに彩り、圧倒的な音の波を作り出したコラボレーションに、茂木は「最高!」と声を上げた。4組によるセッションの幸福な余韻を引きずりながら、フィッシュマンズが最後に届けたのは「SEASON」。夜風の上を心地よく疾走してゆくサウンドともに「WIND PARADE」は終演を迎え、茂木は大きな喝采を浴びながら「最高の夜です。本当にありがとう!」と、聴衆に何度も感謝を伝えた。

なおこのイベントの模様が、uP!!!およびTELASAにて10月14日19:00から10月23日23:59まで配信されることが決定。視聴チケットは10月23日19:00まで各サイトで販売されている。またすでに発表されている通り、11月にはWOWOWで放送および配信が行われる。

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「WIND PARADE '22」2022年9月11日 秩父ミューズパークセットリスト

折坂悠太

01. 坂道
02. 芍薬
03. あさま
04. 朝顔
05. 針の穴
06. 鯱
07. 無言
08. 爆発
09. 心
10. さびしさ

くるり

01. 琥珀色の街、上海蟹の朝
02. ばらの花
03. ワンダーフォーゲル
04. ポケットの中
05. ハイウェイ
06. 太陽のブルース
07. everybody feels the same
08. How To Go
09. 東京
10. ロックンロール

カネコアヤノ

01. セゾン
02. 愛のままを
03. ごあいさつ
04. 明け方
05. 爛漫
06. エメラルド
07. 朝になって夢からさめて
08. 祝日
09. サマーバケーション
10. アーケード
11. わたしたちへ
12. 新曲

フィッシュマンズ

01. Go Go Round This World!
02. なんてったの
03. 頼りない天使
04. ひこうき
05. Smilin' Days, Summer Holiday
06. WALKING IN THE RHYTHM(フィッシュマンズ×カネコアヤノ
07. Weather Report
08. いかれたBaby
09. ナイトクルージング(フィッシュマンズ×岸田繁×折坂悠太×カネコアヤノ)
10. SEASON

読者の反応

永田崇人 @27Takato

凄く行きたかった。最強の布陣 https://t.co/GhiU3hpF0H

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