映像で音楽を奏でる人々 第22回 [バックナンバー]
「主役は絶対に音楽」仲原達彦がA&R視点で映し出す3分間のストーリー
イベンター、レコード会社勤務、映像作家……特殊な経歴を歩むからこそ見えるもの
2022年12月27日 17:30 9
ミュージックビデオは自分だけのものじゃない
映像作家としての転機になった作品を挙げるとすれば、最初に思い浮かぶのが
もう1つ転機を挙げるとすると、コロナ禍が始まった頃にたくさんの公演が中止になって、いろんなアーティストが試行錯誤しながらライブ映像を無料で配信する中で、ceroがいち早く有料制での配信ライブを開催したことです(参照:cero、明日21時より有料制のライブ配信)。その際に企画と監督を担当して、MV制作だけじゃない方法でミュージシャンやレーベルに貢献できた感覚があった。あの日を境に映像に対してより真剣に向き合うようになったし、機材を買ったり勉強したりして、外部の仕事やライブ配信、収録の現場を積極的に受けるようになりました。
映画のワンシーンをそのまま切り出したい
僕の作品は「撮ってみないとわからない」という作品も多いかもしれません。イメージは自分の頭の中にしかなくて、それを説明しないままにしているというか。「ロープウェー」のMVで言うと、高城くんと飴屋さんに「それぞれの思い出の場所に連れて行ってください」とだけお伝えして撮影したんです。お二人の昔住んでいた家とかが映っているんですけど、それを表立って言いたいわけではなくて、僕だけがわかっていればいい。観る人に「ここが飴屋さんの思い出の場所なんだな」と思われなくてもいいというか、僕と飴屋さんだけが共通の認識を持っていれば物語として伝わるものがある気がするんです。
MVは3分くらいの作品が多いけど、映画で考えると3分ってワンシーンじゃないですか。MVで表現したいストーリーがあるとして、僕は2時間の映画を3分のダイジェストにするのでなく、その映画のワンシーン3分をそのまま切り出すようなイメージで作っています。ミツメの「エスパー」も自分の中で前後にストーリーがあるんですが、そのうちの出会いのシーンだけを切り出したイメージで撮っていて。ミツメの4人は同じ方向に進んでいるんだけど、
若い世代のミュージシャンとの出会い
僕がこれまでMVを撮ったミュージシャンは、A&Rとして自分が関わっていたり、もともと友達だったりというケースが多かったんですね。でも最近は
リュックと添い寝ごはんの「home」は、バンドのイメージをそのまま形にできた手応えがあって、彼らとしても納得のいく作品になったみたいでうれしかったです。やっぱり若い子と仕事をするとめちゃくちゃ刺激があります。僕が年上のミュージシャンと一緒にいて居心地がよかったのは、上下関係とか気にせずフラットに接してくれたことなんですよ。若いからってバカにしないというか、「若いね」とは言われるけどやることをやれば認めてもらえている感じがして。僕も相手が若いからという接し方はしていなくて、同世代の友達と一緒にいる感覚とあまり変わらないし、向こうもそう思ってくれていたらいいなと思います。
A&Rだからこそ見えるもの
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