アイドルのセカンドキャリアを考える 第4回 [バックナンバー]

遠藤舞が初めて「これをやりたい」と思えたボイストレーナーの道(聞き手:レナ)

いつか来る“その日”から目を背けない

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引退後に異なる仕事に就いて新たな人生を送る “元アイドル”たちに、セカンドキャリアをどう形成したのか話を聞く本連載「アイドルのセカンドキャリアを考える」。ナビゲーターは元バニラビーンズのレナが担当している。今回はレナとは旧知の仲であるアイドリング!!!の元リーダー・遠藤舞に話を聞く。

アイドリング!!!時代から歌唱力を高く評価され、卒業後の2014年からソロアーティストとして活躍していた遠藤。彼女は2017年をもって芸能界を引退し、現在はボイストレーナーとして活動している。今回は遠藤にセカンドキャリアの話題を中心に、メンタルケアの重要性や誹謗中傷との向き合い方についても語ってもらった。

取材 / レナ / 下原研二 撮影 / 曽我美芽

スカウトから2カ月でアイドルデビュー

レナ この連載ではセカンドキャリアについてお話を聞いているんですけど、舞ちゃんがアイドルを志したきっかけはなんだったんですか?

遠藤舞 もともとは美容学校に進学する予定で、芸能界に入るつもりはなかったんです。たまたま渋谷でスカウトされて、いただいた名刺を見たら相武紗季さんが所属している事務所で。家族に話したら、私の父親が相武さんのファンだったから「サインをもらって来てほしい」と頼まれて、それで事務所に潜入したという流れです(笑)。

レナ (笑)。スカウトされたのはアイドリング!!!としてデビューするどのくらい前のこと?

遠藤 アイドリング!!!としてのデビューが2006年10月だから、スカウトされたのはその年の8月とかじゃないかな。まず事務所の面接を受けて、そのあとすぐにアイドリング!!!のオーディションがあったと思う。そう考えると短いですよね。下積み時代なし(笑)。

遠藤舞

レナ そのあとすぐにテレビ番組(※アイドリング!!!のレギュラー番組「アイドリング!!!」)に出てたから、私はいち視聴者として観てました。メンバーの中に「アイドルで頂点を取るぞ!」みたいな雰囲気はあった?

遠藤 うーん、「アイドルを目指して入りました!」という子はほとんどいなかったんじゃないかな。みんな芸能界のステップの1段目として、知名度を上げたり、経験を積むためにアイドルを選ぶ、みたいな風潮があった頃だから。アイドルの場合、歌、ダンス、お芝居、バラエティ、グラビアみたいになんでもやらせてもらえるでしょう? そこから芽が出たものとか、楽しいと思えたものを極めていく。それが見つかったら卒業して次のステップに行くみたいな。だからアイドリング!!!が最終目標という子はあまりいなかったと思う。

レナ 確かに当時の腐男塾さんとかもそうだけど、バラエティ色が強くて、アイドル活動の中で見つけた強みを生かしてお天気お姉さんになるみたいなこともあったよね。そう考えるとアイドル活動には挑戦の入口としての役割もあった。

遠藤 そうそう。今はアイドルになることが最終目標の子も多いですよね。

レナ 目指し方や加入の仕方は、この10年くらいで変わった気はする。舞ちゃんはスカウトがきっかけだけど、「将来これをやりたいから、まずはアイドリング!!!のオーディションを受けよう」みたいなビジョンがあったんですか?

遠藤 なんにもない(笑)。あれよあれよと流されていった感じ。でも、美容学校の入学金の支払いとオーディション結果が出るのが同じくらいの時期で、すごく迷ったのは覚えてる。そしたらおばあちゃんが「今しかできないことをやりなさい」と言ってくれて。それで入学金は払わないことにしたらアイドリング!!!に受かってた。だいぶ賭けですよね(笑)。アイドルになりたかったわけではないけど、アイドリング!!!に合格してなかったら、芸能の仕事はしないまま事務所を辞めていただろうなと思う。

アイドリング!!!時代の遠藤舞。

周囲に愛されるアイドルとは?

レナ 2009年からはリーダーに就任することになるけど、これはどういう経緯だったんですか?

遠藤 年齢的な理由が一番大きかったのかな。あとは同年代に小泉瑠美っていう、めちゃくちゃかわいいんだけどぶっ飛んだ子がいて(笑)。消去法で私になったんだと思う。

レナ (笑)。グループ全体を見ていて、人間関係を円滑にできる子の特徴みたいなものはありましたか?

遠藤 計算してないというか、バランス感覚がすごくいい子はいましたね。

レナ ちなみにそれは誰?

遠藤 やっぱり朝日(奈央)とかはすごいと思う。彼女は「何を犠牲にしても人のために」と考えるタイプで、究極の“GIVER”みたいな子だから危ないと思うこともあったけど結果的にみんなに愛されてるじゃない? 朝日は狙っていないと思うんだけど、周りの人たちが受け取った分を朝日に返そうと自然に思っちゃうんですよ。

レナ 確かに朝日さんは「何事も全力でやる子」というイメージがいち視聴者からしてもあるし、一緒にお仕事したときもみんなにかわいがられている感じはしました。それが十何年続いているわけだから、本当に狙ってないんでしょうね。

遠藤 昔から思っていたことなんだけど朝日のことを悪く言う人がいたら、たぶんその人が圧倒的におかしいと思う(笑)。

遠藤舞とレナ。

仕事を第一に考えるスタンスは18歳の頃から変わらない

レナ 私たちは“職業・アイドル”みたいな感覚が強かった世代だったのかなと思っていて。「これでお金をもらってるんだからがんばる」みたいな。そういう意識は舞ちゃんからも感じていたんだけど、当時を振り返るとどうですか?

遠藤 それはあったと思う。割り切ってやってたところはあるかも。だからこそ、どこまで許容していいのかわからない部分もあって。「やりなさい」と指示されたらなんでもやっちゃってた。でも、あの時期を経験したからこそ今は仕事を選べるというか、「NO」を言いやすい環境にいけたのかもしれない。

レナ 私も「泥水をすすった」と言えるかはわからないけど、あの頃の経験があってよかったなとは思う。舞ちゃんは人生設計をしっかりとするタイプで、アイドルは25歳までと計画してたわけじゃない? 私はあまり考えられてなかったから、すごいなと思っていて。

レナ

遠藤 うーん……計画はしていたけど、その通りにはなってないから。だから正直、セカンドキャリアの形成につながっているかはわからない(笑)。

レナ いやいや、何も考えてないよりは絶対にいいよ。私は正直、マネージャーさんが卒業後のことについてアドバイスをしてくれてもいいのにと思ってたぐらいだから。まあ、マネージャーさんは直近のアイドル活動に専念させるのが仕事だから仕方ないんだけど。

遠藤 うんうん。囲い込みじゃないけど、ほかの情報をシャットアウトしてくれる分、アイドル活動に集中はできるんだよね。

レナ さすがに「親の死に目にも会えないくらいの気持ちでがんばりなさい」みたいなものに対しては、それはどうなんだと思ってたけど(笑)。

遠藤 あー、よく言われてたよね。私はその感覚がいまだに抜けてないのかもしれない。さすがに親の死に目には立ち会いたいと思ってるけど、仕事を第一に考えるスタンスは18歳の頃から積み重ねてきたものだから、なかなかその考えが薄れなくて。

レナ それはわかる気がする。私も仕事のスケジュールが入ったら、3日前くらいからソワソワしちゃう(笑)。「お金を稼ぐとは?」みたいなことを考え出すと責任感が出てくるというか。

遠藤 その仕事にすべてを捧げちゃうというか。性格的なところもあるんだろうけど、1つの事象に対して、裏でどれだけの人が動いているのかもわかってるから。

遠藤舞。仕事が忙しいときはラムネを食べて集中力を高めているそう。

退廃的な日々を過ごしたソロ歌手時代

レナ 舞ちゃんはアイドリング!!!時代の2013年7月にソロデビューシングルを発表して、2014年のグループ卒業後にソロ歌手としての活動を本格化させたわけだけど、準備はどのくらい前から始めていたんですか?

遠藤 ソロ活動の話はけっこう前からあって、プリプロをやったり、どういうふうに展開していくかをスタッフさんと話し合ったりしていて。それで卒業の少し前にソロシングルを出させてもらって。

レナ 卒業は自分からスタッフさんに相談したんですか?

遠藤 そうそう。最初はマネージャーさんに相談するくらいの規模感で、会社の上層部の人たちに「辞めます」と周知していったのが卒業の1年前くらいかな。

遠藤舞とバニラビーンズ。ソロシンガー引退ライブより。

レナ 自分から相談したんだ。私は義務教育の終了とともにグループを卒業する、さくら学院のシステムが正解な気がしていて。終わりが決まっているからこそファンも全力で応援できるし、女の子の人生的にもすごくいいと思うんですよね。活動期間がズルズルと長引いた結果、「自分の人生は自分で決めなさい」みたいになると大変だから。

遠藤 確かに最初は運営がお膳立てしてくれて、それに乗っかるわけだけど、その先の人生を見越していろいろと計画を立てるって難しいもんね。

レナ うん。それに現役時代は「今、自分が所属しているグループで成功したい」というのが第一目標だし、その環境の中で別の目標を探すのが難しい子もいるわけだから。舞ちゃんは卒業前からソロの計画を進めていたけど、次のステップとしてなんで1人で歌う道を選んだんですか?

遠藤 路頭に迷ったというか、アイドルは25歳で辞めると決めていたけど、正直その後の活動は人任せだったんですよね。「事務所がどうにかしてくれるかもしれない」と責任を他者に押し付けてしまっていたというか。卒業前にソロデビューが決まったから「この活動をなんとなく続けていければいいのかな?」って。アイドルのレールは外れたけど、ソロ歌手としてまた新しく走り出したことに少し安心を覚えたのかもしれない。

レナ うんうん。

遠藤 ただ新しく走り出したとは言っても、自分にとってその道が情熱を捧げられるものとは限らないというか……正直、当時の私は歌手という道に情熱を注げなかった。精一杯走るつもりではいたんだけど、あまり心血を注げるような気分にはならなかったというか。助けてくださった人たちには申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、自分がやりたくてみんなを引っ張っていたわけではなくて、誰かが敷いてくれたレールに乗って安心してたんだと思う。

レナ うーん……なるほど。

遠藤 だから3年くらいソロ歌手という肩書きではあったけど、大した活動はしていないし、正直くすぶってたんだよね。今振り返ると退廃的な日々を過ごす無気力な3年間だったと思う。

遠藤舞「最終回」の再生はこちら

レナ その期間中は「次は何をしよう?」みたいなことを考えていたんですか?

遠藤 そんな生活を過ごす中で「ボイストレーナーになりたい」と思って、そこで初めて自分の意思が行動に反映されたような気がする。人から指示されるんじゃなくて、自分から「これをやりたい」と思えたというか。

レナ 誰かのためにはがんばれるけど、自分個人の活動に対しては熱量を持てなかったのかも。ボイストレーナーは誰かのためになる仕事だから。

遠藤 うん。本当にそうかもしれない。

遠藤舞とレナ。

レナ アイドリング!!!時代も同じでグループの一員としてはがんばれるけど……みたいなね。ちなみになんでボイストレーナーという仕事を選んだんですか?

遠藤 ボイストレーナーという仕事自体にアイドリング!!!時代から興味があったんです。でも、専門的なことを学んできたわけではないから悩んでいた部分もあって。当時私がレッスンを受けていた先生に相談したら、「なれるよ!」と言ってもらえたのが一番のきっかけで。基本は独学なんです。歌を歌ってきた経験もそうなんですけど、本を読んで独学で得た情報だったり、理学療法士さんのもとで学んだ解剖学の知識だったりをもとに今はレッスン内容を考えています。

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「我慢できる」なんて思っちゃいけない

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レナ(多摩川のおんな) @VB_Rena

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