アイドルのセカンドキャリアを考える 第3回 [バックナンバー]

よきゅーんは愛を持って所属タレントと向き合う(聞き手:レナ)

「ガラスの靴は自分で作ろう」えなこ、伊織もえら擁するPPエンタープライズの快進撃から学ぶこと

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チャンスに対して常に準備しておく

レナ 今、将来について悩んでいるアイドルたちに何かアドバイスはありますか?

よきゅーん でんぱ組.incのみりんちゃん(古川未鈴)のように結婚と出産を経てアイドルを続けている人もいるし、私の知り合いには40代でもまだアイドルをがんばっている人もいるから、結局は自分がどうしたいかだと思いますね。セカンドキャリアを考えるならちゃんと引き際を見極めないといけないし、もう少しがんばりたいで行けるならそれでいいと思う。ただ違う道に興味があるなら、自分がプレイヤーのうちに外の世界を見るべき。それはマネージャーさんでもいいし、ほかの職業でもいいし、書物でもいいしね。自分のことを振り返ってみるとプレイヤーとしていっぱいいっぱいというのもわかる。けど、現役の子たちに何か伝えるなら、そういうことも考えながらいろんなことも見たほうがいいよって言いたいです。いつも対バンしてる人たちしか知らなくて、井の中の蛙で自分たちのグループの中で争っていたらその世界はもっと狭いわけだし。

レナ うんうん。

よきゅーん 私はグループのリーダーをやっていて自分が主張しすぎちゃダメなんだと学んだし、自分がMCでトークを回したときにみんなのいいところを引き出せると評価されたんですよね。そこからMCの仕事につながることもあるし。

左からレナ、よきゅーん。

レナ 自分で自分を認めてあげられるような武器を見つけるってことですよね。

よきゅーん うんうん。そうすると外界にも目が向くようになる。運営に指摘されたことや自分に課しているノルマを100%達成できているんだったら次は何をしようかってなると思うんです。自分と他人の違いを探して見つめてみたり、「〇〇ちゃんはトークがすごい」と思うなら、毎日5分間でも1人でしゃべる配信をやってみようとかね。たった5分でも365日続ければトーク力が身に付いて、次の世代のMCになれるかもしれない。だから常にチャンスに対しての心構えや準備をしておくべきだと思います。それはセカンドキャリアにもつながると思うから。

レナ なるほど。

よきゅーん 自分に今何が必要かわからない子は、運営さんにアドバイスをもらうのもいいかもしれないです。ファンの人に歌がうまいって言われるなら、アカペラでもいいから“歌ってみた”動画をアップするとかね。自分の武器を強化していくのもありだし、違う武器に手を伸ばしてみるのもいいし。ゲーム感覚でステータスを上げていく感じですよね。全体的に言えるのは客観視かな。ただファンの方の言うことをすべて鵜呑みにするのではなく、ビジネスとして話せる人を見つけるべきだと思いますね。

レナ 若い頃だと特に難しいですよね。

よきゅーん もしかしたらファンの中でも、意見を聞くなら自分以外のメンバーを推してる人のほうがいいかもしれない。基本的に自分のファンは全肯定してくれるし、推してないファンに「今日、歌うまかったね」とか言われるとうれしかったりするじゃないですか。推しじゃない人にも何かが刺さったのかなとか。

レナ 自分の現役時代を振り返ると、目の前のことで手一杯でした。あとはライブをやればお客さんも集まってくれるし、このまま30代になってもバニラビーンズでやっていけるんだろうみたいな意識があって。それがセカンドキャリアと真剣に向き合えなかった原因かもしれないです。

よきゅーん いやあ、なかなか考えられないよね。私もアイドルとしての生活が永遠に続くと思ってたもん。現役の子たちには「永遠はないよ」と言っておこう(笑)。永遠に続くのは売れてる人たちだけです!

レナ その売れてる人たちも想像できないくらいの努力をしてるわけですもんね。いやあ、今日は講演会に来たような気分です(笑)。

よきゅーん セカンドキャリアじゃないような話ばっかりしてる(笑)。

レナ いやいや勉強になります。セカンドキャリアを考える前に全力で自分を高めろってことですよね。

よきゅーん そうそう。志の高い人は自ずと転職できるんですよ。だって「キャリアアップしたいから次のステージに行きたい」と言っても、お茶汲みしかできない人は引き抜かれないわけで。アイドルは今の自分の立ち位置でどういう個性を生かせるのか、自分の得意なことを見出せるのかがセカンドキャリアにつながると思うので、最初からセカンドキャリアを考えていても仕方ないですよね。

よきゅーん

レナ 歌とダンスだけでごはんを食べられる人なんてひと握りですもんね。

よきゅーん 人生に危機感を持ったほうがいい、って成功してない私が言うのもあれですけど。

レナ いやいや、大成功してるじゃないですか。

よきゅーん ビジネスとしてはね。でも、私はもともとビジネスが得意だから。

レナ 趣味を生かしたビジネスで成功してるというのも素敵だと思います。

よきゅーん そうかな。でも、だから休みがなくても幸せなのかも。最近は20代の自分をマネジメントしてあげたいなと思います。

レナ そのときに戻れたらどんなマネジメントをしますか?

よきゅーん コスプレというジャンルを当時の関係者さんはうまく使えていなかったんですよ。だから何度も言うように、会議室にいるだけの人が何を考えても仕方がないんです(笑)。

レナ 現場の声をね。

よきゅーん もちろん現場の声を聞きすぎるのもダメだとは思うけど、私の結論としては愛がない人がタレントをプロデュースするべきではない。

レナ それは本当にそう思います。

よきゅーん 愛を持って接してもらえたら、面倒を見てもらったほうも「ここまでやってもらってこの結果なら仕方ない」ってあきらめがつくじゃない? けど「こうしてたらよかったのにな」とモヤモヤが溜まったり、悔いが残るようなら運営を辞めたほうがいい。結局、お金を出しているのは運営だからなんとも言えないですけどね。

魔法はない、ガラスの靴は自分で作る

よきゅーん あとアイデア出しは学んだほうがいいかもしれない。

レナ アイデア出し?

よきゅーん テレビや雑誌でもそうなんですけど、私から「こういうことをやったらどうですか?」と提案した企画が通ることが多いんですよ。「この時期ならこういうコスプレで、こういう企画をやりませんか?」みたいな。アイデアってお金になるんですよね。その発想力があるかないかでSNSの運用方法も変わるだろうから、その頭の回転みたいなのは意識したほうがいいと思います。そういうのがうまいのが元AKB48の指原(莉乃)さんだったり、元SKE48の松村(香織)さんだったりして。松村さんは早い段階からほかのメンバーを巻き込んでYouTube動画を撮ったりしていて、その誰もやってないことをやるって勇気がいるじゃないですか。それでもあれだけ人数がいる中で自分にどうやって注目を集めるか、どうやって1歩を踏み出すかが大事ですよね。

レナ この連載でインタビュアーをしていると、どれだけ自分が甘かったかを毎回痛感させられます(笑)。

よきゅーん いやいや、私だってえなこと出会わなかったらどうなっていたかわからないですから。

左からよきゅーん、レナ。

レナ よきゅーんさんのお話を聞いていると、厳しさの中に愛があるじゃないですか。それは所属タレントの皆さんにも伝わっていると思います。それに「世の中は数字でしか見ない」とか、ご自身がプレイヤーであり続けているからすごく説得力がある。

よきゅーん タレントを抱えるにあたっての責任はすごく感じますね。自分の感覚が世間とズレていたら失敗するだろうから、「今の方向性って合ってる?」と周りの経営者の意見を聞くこともあります。あとは全員が全員、うちにいるからといって成功するわけではないってところが心苦しいですね。

レナ うんうん。

よきゅーん 女の子って事務所に入ったら仕事が来ると思っていることが多いんですよ。本当はそんなことないから、できるだけ早く「自分はお姫様じゃない」ということに気付いたほうがいい。今の時代、シンデレラは自分でガラスの靴を作って舞踏会に行くべきなんですよ(笑)。

レナ ガラスの靴は自分で作る!

よきゅーん うん。なければ作ればいい。待っているだけじゃダメで、今は雑誌も事務所無所属でもSNSなどの数字がある子が起用されますからね。だから今の若い子たちには「ガラスの靴は自分で作れ、魔法はないよ」と言いたい(笑)。

レナ それパンチラインですよ(笑)。セルフプロデュース能力は大事ってことですよね。

よきゅーん しっかりとセルフプロデュースができつつ、自分に対して愛情を持ってくれるパートナーと一緒にやれたらより強いですよね。自分の武器は自分で作る。うちでは「働かざる者食うべからず」と口酸っぱく教えてますから(笑)。

左からレナ、よきゅーん。

レナの取材後記

レナ

連載3回目にして超ロングインタビューw
読んでくださった皆様! ありがとうございます。
そしてこのインタビューは現役アイドルグループのメンバーに絶対! 読んでもらいたいです。
どうしたら届くかなあ……? あ、今読んでくれているアイドルファンのあなた! 今応援しているアイドルちゃんにオススメしてもらえたらうれしいです!(笑)

私はアイドルというのは大人が作ったレールの上をどれだけ煌びやかに走れるかだと思っていて、「そのレールの上で履く靴ぐらいは自分で美しいものを作ろう」という、よきゅーんさんのメッセージは本当にすべての現役アイドルに伝わってほしいと思いました!
実際、私も「現役時代にこのインタビューと出会っていたらな」と考えさせられる取材になりました。
ロングインタビューでしたので取材後記は短めに……♡
次回もお楽しみに!

よきゅーん

中野腐女子シスターズと腐男塾の元メンバー。コスプレイヤー / タレントとしてマルチに活躍するかたわら、えなこや伊織もえ篠崎こころといった人気コスプレイヤーを擁する芸能事務所・PPエンタープライズの代表取締役社長兼プロデューサーを務めている。
PP Enter Prise inc. - 株式会社 PPエンタープライズ
PPエンタープライズ (@PP_enter) | Twitter
よきゅーん (@yokyu_n) | Twitter
よきゅーん と つきみたま - YouTube
よきゅCH - YouTube

レナ

2007年にデビューした女性アイドルユニット・バニラビーンズの元メンバー。バニラビーンズはスウェディッシュポップを意識したサウンドとレトロなビジュアルで渋谷系ファンなどから高評価を得る一方で「ガラス張りトラック生活」などの風変わりな活動でも注目を集めた。2018年9月にラストシングル「going my way」をリリースし、10月のライブをもって解散。バニラビーンズ解散後は、トークスキルを生かしてMC・タレント業をメインに活躍しており、“多摩川のおんな”としてボートレース多摩川の選手インタビュー、生配信の番組進行を担当している。
レナ(多摩川のおんな) (@VB_Rena) | Twitter
レナ(多摩川のおんな) (@vb_rena913) ・Instagram

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レナ(多摩川のおんな) @VB_Rena

よきゅーんさんの言葉の重みを感じたインタビューでした!
是非読んでいただけたら嬉しいです☺️ https://t.co/JSybw7xKLS

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