DJ、選曲家としても活躍するライターの青野賢一が毎回1つの映画をセレクトし、映画音楽の観点から作品の魅力を紹介するこの連載。今回は12月11日より全国で順次公開されている「
文
音楽プロデューサーとして成功したい
「ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢」は、現代ハリウッドの音楽業界を舞台にした作品である。グレース・デイヴィス(
ヒット曲を生み出したシンガーの葛藤
先に述べたように、グレースのコンサートはどの会場でも大変な盛り上がりなのだが、そこで歌われるのは過去のヒット曲。長いキャリアの中で生まれたヒット曲がステージで披露されることを、多くのファンは当然望んでいるだろうし、それらが演奏されれば盛り上がらないわけがない。しかし、当のグレースはそんな状況に複雑な感情を抱いている。表現者として新しいことに取り組みたい気持ちはあるが、求められるのはこれまでと変わらないこと、観客の持つイメージを壊さないこと。その狭間で、グレースは宙吊り状態である。
ある日、レコード会社の会議で、グレースは「ニューアルバムをレコーディングするときだと思う」と発言する。するとすかさずマネージャーのジャック(
マギーの夢とグレースの夢、2人の夢への道のりの中で、重要な役割を果たすのが、マギーがひょんなことで出会ったデヴィッド・クリフ(
ロドニー・ジャーキンスのプロデュース
冒頭に記したように、本作の舞台はハリウッドの音楽業界ということで、音楽に満ちあふれた作品である。ステージでのパフォーマンスやレコーディングのシーンがふんだんにある本作は、監督である
コリーヌ・ベイリー・レイやサラ・アーロンズといった、そうそうたる作家陣が名を連ねる本作の楽曲をまとめ上げた音楽プロデューサーはロドニー・ジャーキンス。マイケル・ジャクソン、マライア・キャリー、ビヨンセ、ジャスティン・ビーバー、レディー・ガガらの作品を手がけてきた、グラミー賞受賞歴もあるプロデューサーだ。スーパースターのグレースが歌う曲はリッチなサウンドプロダクション、デヴィッドの曲はより親密でシンプルな楽器編成と、歌い手のキャラクターが曲からしっかりと感じられるのはお見事である。登場人物たちの曲のほか、作中では
「ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢」
日本公開:2020年12月11日
監督:ニーシャ・ガナトラ
脚本:フローラ・グリーソン
出演: ダコタ・ジョンソン / トレイシー・エリス・ロス / ケルヴィン・ハリソン・Jr. / ビル・プルマン / ゾーイ・チャオ / ジューン・ダイアン・ラファエル / アイス・キューブ ほか
配給:東宝東和
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- 青野賢一
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東京都出身、1968年生まれのライター。1987年よりDJ、選曲家としても活動している。1991年に株式会社ビームスに入社。「ディレクターズルームのクリエイティブディレクター兼<BEAMS RECORDS>ディレクターを務めている。現在雑誌「ミセス」「CREA」などでコラムやエッセイを執筆している。
音楽ナタリー @natalie_mu
【青野賢一のシネマミュージックガイド Vol.16】「ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢」
本作の音楽的な魅力とは? ストーリーやトレイシー・エリス・ロスの歌声、音楽プロデューサーのロドニー・ジャーキンスによる楽曲について紹介
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#映画ネクストドリーム #青野賢一