アグニェシュカ・ホランドが難民描いた映画「人間の境界」を語る、製作の発端は“怒り”

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第80回ヴェネツィア国際映画祭の審査員特別賞を受賞した映画「人間の境界」より、監督アグニェシュカ・ホランドのインタビュー映像がYouTubeで公開された。

「人間の境界」場面写真

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「人間の境界」ポスタービジュアル

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2021年にベラルーシがEUの混乱を狙い、ポーランド国境に大量の難民を移送した事態を受けて作られた本作。「ベラルーシを経由してポーランド国境を渡れば、安全にヨーロッパに入ることができる」という情報を信じて祖国を脱出したシリア人家族が、ポーランドとベラルーシの国境で“人間兵器”として扱われる過酷な運命が描かれる。

ポーランド出身のホランドはインタビューで「この映画を作るきっかけは“怒り”です」と述べ、ポーランド国境で「移民に対するヘイトや非人間的な状況」が起こっていることを伝えたかったと語る。「この問題は非常に複雑で解決は単純ではない。それを描きたかったのです」と説明しつつ、「人間は自分と違うものに恐れを抱き、他者に恐怖心を持っています。しかし我々は同じ人間だと受け入れることが重要で、分かち合っていくことが大事なのだと思います」と思いを口にした。

「人間の境界」場面写真

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このたび7名の著名人からコメントも到着。ゲームクリエイターの小島秀夫は「移民にもなれず、ボーダーに潜伏、消耗しては命を落としていく漂流者たち。空爆や虐殺ではない、戦争が産むもうひとつの地獄絵図。それをアンジェ・ワイダを思わせるドキュメンタリーとフィクションの境界を越える手法で、ギリギリの“人間の境界線”を炙り出す」と語っている。全文は以下の通り。

ジャラル・アルタウィルやマヤ・オスタシェフスカが出演した「人間の境界」は、5月3日より東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国で順次公開される。

映画「人間の境界」アグニエシュカ・ホランド インタビュー映像

有田芳生(ジャーナリスト)コメント

国家に翻弄される難民たち=私たちと同じ生身の人間。ポーランド政府が隠したかった非道は日本でも小さなレベルだが起きている。そこにある現実は人間破壊だ。私たちの感性を鋭く問う問題作。スクリーンのこちら側には不条理な世界が広がっている。

キニマンス塚本ニキ(翻訳者・ラジオパーソナリティ)コメント

これほど言葉にならない叫びと涙を堪えながら映画を観たことがなかった…
あなたは壊れた世界のルールに従う側の人間ですか?
それとも抗える人間ですか?

小島秀夫(ゲームクリエイター)コメント

故郷を追われ、生きるために亡命するしかない難民たち。“国境越え”をはかる者、国境を守る者、難民たちを支援する者。本作は、この3つの視点から描かれる。移民にもなれず、ボーダーに潜伏、消耗しては命を落としていく漂流者たち。空爆や虐殺ではない、戦争が産むもうひとつの地獄絵図。それをアンジェ・ワイダを思わせるドキュメンタリーとフィクションの境界を越える手法で、ギリギリの“人間の境界線”を炙り出す。同時に、ウクライナやパレスチナの様に、国を追われた結果、新たな境界線が紛争の次なる火種ともなる事をも示唆する。難民問題は、もはやヨーロッパだけの出来事ではない。“緑の国境(Green Border:原題)”は、何処に引かれてもおかしくはない。

ダースレイダー(ラッパー)コメント

国民国家とそれを隔てる国境という虚構を巡って多くの悲劇が生まれ、人が死ぬ。それでもビートボックスとラップの輪とそれを飛び越える渡り鳥の向かう先に僅かな希望はある。

沼野充義(東京大学名誉教授・ロシア東欧文学者)コメント

難民という人間存在の究極の不条理。これが描けなければ映画芸術に意味はない、と考える監督の不退転の勇気が突き刺さる。

望月優大(ライター)コメント

生きようとして死んだ少年がいた。私のせいだと母親は叫んだ。だが、責任は、本当はどこにあるのか。この問いが何度も突き刺さってきた。

安田菜津紀(NPO法人Dialogue for People副代表・フォトジャーナリスト)コメント

「私たちは二つの国の間で、ボールのように蹴りあわれた」──ベラルーシ・ポーランド国境をさまよった難民から、私が聞いた言葉が、そのままこの映画で再現されていた。

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