佐藤真の特集上映が全国で開催決定、濱口竜介・深田晃司・三宅唱の推薦コメント到着

21

611

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 143 409
  • 59 シェア

阿賀に生きる」で知られるドキュメンタリー作家・佐藤真の特集上映「暮らしの思想 佐藤真 RETROSPECTIVE」が、5月24日より東京のBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で順次開催。映画監督の濱口竜介深田晃司三宅唱による推薦コメントが到着した。

特集上映「暮らしの思想 佐藤真 RETROSPECTIVE」ポスタービジュアル

特集上映「暮らしの思想 佐藤真 RETROSPECTIVE」ポスタービジュアル

大きなサイズで見る(全9件)

佐藤真 (c)村井勇

佐藤真 (c)村井勇[拡大]

1989年から新潟県阿賀野川流域の民家に住み込みながら撮影を始め、新潟水俣病が発生した川筋に住む人々を記録した「阿賀に生きる」。長編デビューとなった本作で佐藤はニヨン国際ドキュメンタリー映画祭の銀賞など国内外で高い評価を受けた。以降、2007年に49歳でこの世を去るまで多数のドキュメンタリーを発表したほか、テレビ作品の編集・構成、映画論の執筆など多方面で活躍。京都造形芸術大学の教授、映画美学校の主任教師として後進の指導にも尽力した。

「まひるのほし」場面写真 (c)1998 「まひるのほし」製作委員会

「まひるのほし」場面写真 (c)1998 「まひるのほし」製作委員会[拡大]

「花子」場面写真 (c)2001 シグロ

「花子」場面写真 (c)2001 シグロ[拡大]

今回のレトロスペクティブでは、知的障害者とされる7人のアーティストたちの活動を通して芸術表現の根底に迫った「まひるのほし」、重度の自閉症を抱えたアーティスト・今村花子と、彼女を取り巻く家族の物語「花子」、パレスチナの窮状と真実を世に伝えた知識人エドワード・サイードの不在を見つめた「エドワード・サイード/OUT OF PLACE」の3作品が4Kレストア上映される。

「阿賀に生きる」場面写真 (c)1992 阿賀に生きる製作委員会

「阿賀に生きる」場面写真 (c)1992 阿賀に生きる製作委員会[拡大]

「SELF AND OTHERS」場面写真 (c)牛腸茂雄

「SELF AND OTHERS」場面写真 (c)牛腸茂雄[拡大]

また「阿賀に生きる」とその10年後の人々を捉えた「阿賀の記憶」を特別上映。さらに一部劇場では、濱口が「寝ても覚めても」でその写真を引用した写真家・牛腸茂雄の作品世界に肉薄する「SELF AND OTHERS」も上映される。

濱口は「佐藤真はインタビューすることを恐れない。インタビューの一つ一つが説明に堕することがないのは、人の声自体を「できごと」として捉える感性ゆえだろう。一度お会いしたかった」と佐藤への尊敬の念をにじませ、深田は「生きていると佐藤真監督の映画のことを不意に思い出す。阿賀の景色、花子の笑顔、パレスチナの難民たち。それら映像の記憶の断片はノスタルジーから遠く現在と生々しく接続している」と述懐。三宅は「あるショットから次のショットへ、そのすべての変化が、新たな発見として、新たな応答として、そして新たな問いとして迫ってくるように受け止めています」とつづっている。全文は下記の通り。サイードと親交の深かった作家の大江健三郎が「エドワード・サイード/OUT OF PLACE」に寄せたコメントも到着している。

「暮らしの思想 佐藤真 RETROSPECTIVE」の予告編はYouTubeで公開中。このたび解禁されたポスターのデザインは、グラフィックデザイナーの加瀬透と本田千尋の制作スタジオ・khôra 場が手がけた。配給はALFAZBET、パラブラが担当する。

特集上映「暮らしの思想 佐藤真 RETROSPECTIVE」予告編

暮らしの思想 佐藤真 RETROSPECTIVE

2024年5月24日(金)~ 東京都 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか
<上映作品>
「まひるのほし 4K」
「花子 4K」
「エドワード・サイード/OUT OF PLACE 4K」
「阿賀に生きる」※特別上映
「阿賀の記憶」※特別上映
「SELF AND OTHERS」※一部劇場のみでの公開

大江健三郎 コメント

「エドワード・サイード/OUT OF PLACE」について

エドワード・サイードの「不在」の風景のなかを、ゆったりと美しいカメラが、いつまでも追ってゆく。パレスチナ、イスラエルの苦しみのひだひだが照射される。人々の色濃い思い出を横切るサイード。そしてサイードの「希望」が私らの頭上に現われる。

濱口竜介 コメント

佐藤真の映画ではカメラが人物の前に回ることが多い。対立でもなく、対峙でもなく、被写体の前で立ちすくむカメラ。そんな印象を受ける。答えのない過酷な生を、人々の声が和らげる。佐藤真はインタビューすることを恐れない。インタビューの一つ一つが説明に堕することがないのは、人の声自体を「できごと」として捉える感性ゆえだろう。一度お会いしたかった。

深田晃司 コメント

生きていると佐藤真監督の映画のことを不意に思い出す。阿賀の景色、花子の笑顔、パレスチナの難民たち。それら映像の記憶の断片はノスタルジーから遠く現在と生々しく接続している。

三宅唱 コメント

なぜそう撮ったのか。なぜそう繋いだのか。なにを撮らずにいたのか。なにを撮れなかったのか。あるショットから次のショットへ、そのすべての変化が、新たな発見として、新たな応答として、そして新たな問いとして迫ってくるように受け止めています。自分なりに考えてきたつもりでも、いままた見直すと、まだまだぜんぜん受け止められていないことに気づき、新たな問いばかり見つかります。レトロスペクティヴの開催を嬉しく思っています。

この記事の画像・動画(全9件)

読者の反応

高見温|On Takami @Soldi79710444

阿賀に生きるはぜひ https://t.co/VDATCYayUh

コメントを読む(21件)

リンク

このページは株式会社ナターシャの映画ナタリー編集部が作成・配信しています。 阿賀に生きる / まひるのほし / 花子 / エドワード・サイード/OUT OF PLACE / 阿賀の記憶 / SELF AND OTHERS / 佐藤真 / 濱口竜介 / 深田晃司 / 三宅唱 の最新情報はリンク先をご覧ください。

映画ナタリーでは映画やドラマに関する最新ニュースを毎日配信!舞台挨拶レポートや動員ランキング、特集上映、海外の話題など幅広い情報をお届けします。