米アカデミー賞モンゴル代表「シティ・オブ・ウインド」監督が描きたかったものとは

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第96回アカデミー賞国際長編映画賞のモンゴル代表に選ばれた「シティ・オブ・ウインド」が昨日3月8日に第19回大阪アジアン映画祭で上映され、大阪・ABCホールで行われたトークイベントに監督のラグワドォラム・プレブオチルが登壇した。

「シティ・オブ・ウインド」場面写真 (c)Aurora Films, Guru Media, Uma Pedra No Sapato, Volya Films

「シティ・オブ・ウインド」場面写真 (c)Aurora Films, Guru Media, Uma Pedra No Sapato, Volya Films

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第19回大阪アジアン映画祭ポスタービジュアル

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本作は17歳の少年ゼを主人公とする青春ドラマ。ウランバートル郊外に住む彼は、競争社会で生き抜くため勉強に励む一方で、シャーマンとしても知られていた。ある日、ゼは心臓病を患うマララーの祈祷を行うことになる。彼女のことが忘れられない彼は、見舞いに行き急接近。こうしてマララーと交際するようになったゼは、シャーマンとしての自分と10代の少年としての自分の間で揺れ動くことになる。ゼを演じたテルゲル・ボルドエルデネは、本作での演技が高く評価され、第80回ヴェネツィア国際映画祭のオリゾンティ部門で最優秀男優賞を獲得。マララーにノミンエルデネ・アリウンビヤンバが扮した。

ラグワドォラム・プレブオチル

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舞台となるウランバートルについてラグワドォラム・プレブオチルは「急拡大している都市です。モンゴルは非常に広い国ですが、人口の半分以上がウランバートルに住んでいます。20年ほど前から、遊牧民がどんどん都市部に移動してくるようになりました。彼らは、都市部のゲル地域と呼ばれるような場所でアイデンティティを維持しながら、近代的な生活をしています」と述べ、「映画では都市部に住む人と、遊牧民的な生活をしている人たちがつながりを維持しているところを見せたいと思ったんです。ただ、両者の関係性ははっきりしていて、それぞれが自身のスタイルを貫こうとしています」と述懐。そして「政府は都市化をどんどん進めていますが、私自身はゲル地域を保存し、アイデンティティの1つとして保つべきだと思っているんです。モンゴルではゲル地域は貧困地域といった印象を持たれがちですが、私はこの地域こそが重要だと考えていますし、追いやられるような場所ではないと思っているんです。主人公もゲル地域に残り、そこで再出発する姿を描きました」と言及した。

ラグワドォラム・プレブオチル

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「シティ・オブ・ウインド」トークイベントの様子。

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ここ30年ほど、モンゴルではシャーマンが増えているそう。ラグワドォラム・プレブオチルは「シャーマニズムはモンゴルの歴史が始まった当時から続いているものです。チンギス・ハーンも自身のシャーマンを抱えていたと言われています。ただ、シャーマニズムを壊そう、取って代わろうとする勢力のようなものが次々と登場しました。そのもっとも大きなものが仏教です。その後、共産主義、資本主義といったものが次々と現れましたが、今もなお、シャーマニズムは続いています。それはモンゴルの文化の中でシャーマニズムが大切であり、我々が必要としているからこそです」と語る。また「映画で描こうとしたのはシャーマンというものが日々の中でどう根付いているかということ。近代的な生活とシャーマンとの関わりや対立を表現したかったわけではありません。またいろいろなものが共存する中で、どれか1つを選ぼうという話でもありません」と説明した。

なお、相撲を題材にした映画のアイデアがあるそうで「今日、2時間ほど朝の稽古を見てきました。アメイジングでした! 言葉にできない思いでした」と目を輝かせた。

第19回大阪アジアン映画祭はABCホール、シネ・リーブル梅田、T・ジョイ梅田、大阪中之島美術館にて3月10日まで開催。

映画「シティ・オブ・ウインド」予告編

第19回大阪アジアン映画祭

2024年3月1日(金)~10日(日)大阪府 ABCホール、シネ・リーブル梅田、T・ジョイ梅田、大阪中之島美術館

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大阪アジアン映画祭事務局:Osaka Asian Film Festival (OAFF) @oaffpress

#OAFF2024 グランプリ受賞!
主演俳優はAFAで新人俳優賞受賞!

【大阪アジアン映画祭レポート】米アカデミー賞モンゴル代表「シティ・オブ・ウインド」監督が描きたかったものとは https://t.co/i0yxZyZSC3

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