きっかけは友人の出生前診断、有田あんが監督・脚本・主演を担う群像劇「渇愛の果て、」が公開

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野生児童主宰の有田あんが監督・脚本・主演・プロデュースを担う映画「渇愛の果て、」が5月18日より東京・K's cinemaほか全国で順次公開される。

「渇愛の果て、」ポスタービジュアル

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本作は、友人が出生前診断を経験したことをきっかけに、有田が助産師・産婦人科医・出生前診断を受けた人・受けなかった人・障害児を持つ家族に取材し制作した群像劇。“普通の幸せ”を夢見ていた山元眞希は、夫・良樹とともに順風満帆な妊婦生活を過ごしていた。ある日、体調不良によって緊急入院した彼女は、子供の安否を確認するために出生前診断を受ける。結果は陰性だったものの、出産を迎えると、赤ちゃんが難病を患っていることが明らかに。眞希はわが子を受け入れる間もなく、次々に医師から選択を求められ、疲弊していく。

有田のほか、夫・良樹役で山岡竜弘、助産師・清水香苗役で輝有子が出演。眞希の親友たちを演じるキャストとして、小原徳子瑞生桜子小林春世が名を連ねる。そのほか、大山大伊藤亜美瑠二條正士辻凪子らが参加した。

有田は「自分の両親はどんなことで悩んだのか、いつも見かけるあのご家族はどんな苦難を乗り越えたのか。そんなことを考えられるきっかけがあったら、少しだけ優しい世界になるんじゃないか。未来の選択肢が広がるんじゃないか。そう思い、このテーマに向き合うことを決めた」とつづっている。本作の監修をした産婦人科医の洞下由記、取材協力をした助産師サロンの高杉絵理によるコメントは下記の通りだ。

なお本作は、2020年6月に上演される予定だったが新型コロナウイルス感染症の危険を考慮して全公演中止となった舞台が、新たに映画化されたもの。

有田あん コメント

ー知らないことが多すぎるー
妊娠中の友人の相談を聞いた時に何度も感じた。
妊娠、出産。当然だが、今生きているのはお母さんが妊娠して出産してくれたから。
ということはどんな考えを持っていても関係ない人なんていない。
しかし、前のめりにならないと知る機会がない。私自身も、「いつか」と思っていた。
「こんな大事なこと、誰か取り上げてくれないかな」
悩みに悩んだ友人が私に言った。それがこの映画の第一歩となった。

妊娠・出産に不安はつきものだがその実態は本人しか分からない。
急に母親父親になり莫大な情報量に悩む。診察室で医師とどんな会話を交わすのか。
そもそも妊娠するまでにも沢山のドラマがある。やむを得ない事情で中絶する方もいる。
自分の両親はどんなことで悩んだのか、いつも見かけるあのご家族はどんな苦難を乗り越
えたのか。
そんなことを考えられるきっかけがあったら、少しだけ優しい世界になるんじゃないか。
未来の選択肢が広がるんじゃないか。そう思い、このテーマに向き合うことを決めた。

私はこの映画制作をきっかけに妊活・不妊治療を始めた。
想像していた以上に「孤独」だった。初めての事への不安と情報量の多さにストレスも溜
まる。
身体の変化を体感できない男性は、何を言葉にしていいか迷う時もある。
男女共に、周囲に話しづらかったり、理解してもらえないもどかしさも感じるだろう。
時には自分を責めてしまう時もある。
そんな方々に「どんな決断も間違っていない」と伝えたい。

この映画が大切な人と話すきっかけになったり、皆さんの未来の選択肢が増えると幸いで
す。

洞下由記(産婦人科医)コメント

本作の医療監修のお話しをいただいたとき、この簡単ではないテーマをどう描くのかと、過去の患者さん達の顔とともに様々な思いがよぎりました。しかし、有田さんに会って、自分とその周りに起こった実体験を共有したいという想い、知るべきであるという信念を感じ、それは私が医療現場で思っていることと同じでした。

何事も受け入れるということは、簡単ではなく時間もかかります。1人になりたくて、でも1人じゃなくてよかったと思えるまでにも時間がかかります。本作にでてくる人達はみんな、正解のない課題を本気で自分ごととして考えてくれる人達。人のことは誰にもわからないと言いながらも、ほんとうは何かを想像し、その中で自分ができることをやるしかないと、泣いて笑って逃げずにいてくれる。もちろん当事者も、自分の中の正解を探し続けます。

私は産婦人科の臨床医として、今でも正しかったのかどうかわからないことはあり、これでよかったと思える時はいつか必ずくる、とは言い切れません。でも、今、目の前で苦しんでいる患者さんのまわりに、この作品のように寄り添う人たちがいてくれたらと、心から願います。

強さも弱さも等身大で描かれているこの映画が、たくさんの方々に届きますように。

高杉絵理(助産師サロン)コメント

授かった命を目の前にして、産む・産まないの選択を迫られること、
こんなに難しく、辛い選択はないように思います。
助産師として、こういう現実があることを多くの人に知って欲しいと思いました。

そして、それは苦しいことだけど、誰にでも起こりうる可能性があること、
自分だったらその命とどう向き合うか考えて欲しい。

助産師は人生に寄り添う仕事です。
ひとりひとりに丁寧に寄り添い、その人が納得できる結論を出すことを
時には1番近くで、そして、距離を保って見守っています。
どの選択にも正解はないと感じています。
私だったらどうするかな、と毎回考えます。
一緒に悩み、泣き。。想いを共有します。
私も助産師である前に1人の女性であり、そして母です。
この映画の主人公のように、悩んだ経験もあります。

産んで良かったのかな。

たくさんの人がいろんな想いを抱えて妊娠・出産し、そして育てています。
「知らない」ということで済ましてほしくない。
「知って」「向き合って欲しい」
これが私が伝えたかった想いです。
そして、出来上がった作品を観た時に、
これまでの私の助産師人生や母としての体験が走馬灯のように巡って
涙が止まらなくなりました。
寄り添ってきたこれまでのたくさんの生命の重さが込められていたからだと思います。
ぜひ、たくさんの人に知って欲しいです。
そして、心で感じて、考えて欲しいです。
ひとつの命と向き合うということを。

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(c)野生児童

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