適正な映画制作環境を、撮影時間の上限など定めた「映適」認定制度が4月に開始

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「日本映画制作適正化認定制度に関する協約」の調印式および記者会見が本日3月29日に東京のコートヤード・マリオット銀座東武ホテルで開催され、日本映画製作者連盟(映連)代表理事の島谷能成、日本映画製作者協会(日映協)代表理事の新藤次郎、日本映画撮影監督協会代表理事の浜田毅が出席した。

左から新藤次郎、島谷能成、浜田毅。

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「日本映画制作適正化認定制度に関する協約」調印式の様子。

映連、日映協、日本映画撮影監督協会そのほかの各職能団体(映職連)が経済産業省と連携し2022年に設立した「日本映画制作適正化機構(映適)」。本日これらの構成団体が協約に合意したことにより、2023年4月1日から「映像制作の持続的な発展に向けた取引ガイドライン」に則って適正な制作が行われた映画に「映適」マークを付与する制度が開始される。本制度は映画製作者(製作委員会)、制作会社、現場スタッフの多くを占めるフリーランスが対等な関係を構築し、公正かつ透明な取引を行うことで映画産業の持続可能な発展を進めることが目的だ。

「映像制作の持続的な発展に向けた取引ガイドライン」

制度設立の背景として、映適の審査員を務める阿部勉は「国内市場の頭打ちと制作費の低迷」「就業環境の悪化による現場の疲弊」「コンテンツの質の低下」といった国内における映画産業の現状を挙げた。人材の就業環境や取引の改善によってこれらの悪循環から脱するため、作品認定制度が導入される。認定対象となるのはドキュメンタリー、極めて芸術性の高い実験的な作品、教育を目的として制作される作品をのぞく実写作品。作品ごとにオンラインで申請を受け付け、規模によって異なる審査料も設定されている。審査基準となるガイドラインには映画製作者(製作委員会)と制作会社間、制作会社とフリーランス間の取引や、映画制作現場での規則など9項目にわたってルールが定められ、契約期間開始前に契約書を交付することや作業時間を1日13時間以内(撮影は11時間)とすることなどが明記された。

島谷能成

2022年5月から今年2月にかけて4作品で実証実験が行われたといい、「ハラスメント研修のおかげで、現場が明るくなった」「ルールに沿ったスケジュール作成に苦労した」といったさまざまな現場の意見が紹介された。また映適には、登録をしたスタッフの処遇の向上や人材育成、ハラスメントの相談窓口の設置、キャリアの管理などを担うスタッフセンターも設置される。映像制作に携わるすべてのスタッフ・プロダクションが職種や雇用形態を問わず対象となることに加え、これから映像制作の現場で働きたいと考えている人も登録することができる。

新藤次郎

浜田毅(左)

映適の理事長を務める島谷は「これからがスタートであります」と話し「映倫も映画界の自主的独立機関。映倫のように自立した映適(認定作品)が生まれていくよう、全力をあげてやっていきたい」と宣言する。同理事の新藤は「小さなプロダクションにとっては、今日現在の経済的なリスクは高まる。それでも(将来を考えると)必要だという意見でまとまった」と語った。

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読者の反応

Yuki Matsuzaki 松崎悠希📽️ @Yuki_Mats

このレベルの労働環境の基本的ルールさえ2023年の今まで存在しなかったとは・・・😨 https://t.co/EFUjC3aBDH

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