ナタリーが見た台湾カルチャー最前線 第2回 [バックナンバー]

台湾BLドラマのクリエイターたちが海外戦略をテーマにトーク──そこから見えてきた強み、課題、そして未来とは? / GagaOOLalaのコンテンツ発表会も現地取材

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「HIStory」シリーズや「We Best Love 永遠の1位/2位の反撃」「Be Loved in House 約・定~I Do」など台湾BLドラマの注目度が、今世界で上昇している。

そんな中、アジアのコンテンツビジネスの祭典「2022 TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ」が11月3日から13日まで台北にて開催された。このイベントは、台湾・文化部(日本の文科省に類似)によって創設された台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(TAICCA)が主催したもの。台湾文化コンテンツの産業化、国際化を促進するTAICCAでは、台湾作品、クリエイターを積極的に支援している。

映画ナタリーでは台湾現地にてTCCFを取材。「台湾BLの海外戦略」をテーマにしたシンポジウムのほか、LGBTQ作品に特化した台湾動画配信サイトGagaOOLalaのコンテンツ発表会に出席し、クリエイターたちの言葉を聞いた。

取材・/ 金子恭未子

日本での視聴者数が数年で25倍、存在感を増す台湾BL

「台湾BLの海外戦略」をテーマにしたシンポジウムの様子。

「台湾BLの海外戦略」をテーマにしたシンポジウムには、「HIStory」シリーズや「We Best Love」シリーズの脚本を手がけた林珮瑜(リン・ペイユー)、「We Best Love」シリーズのプロデューサー・蔡妃喬ら7人が登壇し、トークを展開した。

LINE TVの最高執行責任者・蔡幸真によると、さまざまな国のBL作品をラインナップしている中でも、台湾では台湾BLの成績がよいのだという。特に熱狂的なファンを獲得しているのが2017年に第1弾の配信がスタートした「HIStory」シリーズだ。蔡幸真は「『HIStory3 那一天~あの日』は1000万クリックを突破。全10話でこの数字は驚くべきものです」と伝え、「BLファンはコンテンツにしっかりお金を払う方が多く、『HIStory』シリーズは版権を海外に売って得た収益以外に、オフィシャルグッズの収益も好調。新シリーズを今年中に配信予定です」と報告する。同シリーズがこれまでにファン・シャオシュンら人気俳優を生み出してきたことにも触れ、BLというジャンルを語るうえで、とても重要な作品だと位置付けた。

では、日本での台湾BLドラマの人気はどうなっているのか? 動画配信サービスRakuten TVのアジアドラマ買付・調達担当の金京恩が同サービスのデータを初公開。2018年から2021年までに、台湾BLドラマの視聴者数が25倍になったことを明かした。金は「2021年は前年度と比べて視聴者数は4倍。台湾BLは作品の数はまだ少ないほうではありますが、上質なドラマが作られている。ビジュアルもいい、演出もいい、内容もいいということで、日本である程度“台湾BL”というブランドができあがっている印象です」と説明する。

また金は「日本ではタイBLと台湾BLを比べるとまだまだタイBLを観ている人のほうが多い。ただタイBLと台湾BLはクロス視聴率が高いので、市場が広がる可能性がある」と分析。「Rakuten TVでは、台湾BLのライセンスの獲得や、作品への出資に関しては、あまり予算のことを考えずに会社から許可が降りる状況。安定して日本のファンに求められているジャンルです」と台湾BL作品への信頼を伝える。

日本の動画配信サービス・ビデオマーケットのチーフプロデューサーで、「Be Loved in House 約・定~I Do」などのプロデュースも担当した宋鎵琳は「BLはほかのジャンルに比べて、海外の市場に浸透しやすい」「すぐに海賊版が出てくることを考えると、なるべく世界同時配信することが重要」とコメント。2021年以降、韓国でも続々とBL作品が生み出されていることに触れつつ、「台湾の強みはジェンダー平等に関する考えが進んでいること」と伝えた。なお「We Best Love」シリーズのプロデューサー・蔡妃喬も台湾BLドラマをめぐる重要なキーワードの1つとして「台湾がアジアで初めて同性婚の合法化を実現させたこと」を挙げている。

あなたがあなただから愛が生まれるという関係

「We Best Love 永遠の1位」台湾版ビジュアル(画像提供:有意思國際傳媒)

台湾で新人俳優の登竜門的役割も果たしているというBLドラマ。新人俳優のトレーニングには多くの時間を割いているそうだ。蔡妃喬は「なぜ、そんなに時間をかけるのか? それは、俳優に相手を愛する気持ちをしっかり理解してもらう必要があるからです。最初は演技の練習ではなく、まずそこから。ちゃんと理解できれば、全世界の視聴者の心に届く表現ができると思います」と伝える。

「We Best Love 2位の反撃」台湾版ビジュアル(画像提供:有意思國際傳媒)

脚本家の林珮瑜(リン・ペイユー)は「性別やエスニシティに関係なくあなたがあなただから愛が生まれるという関係を作ることが大切」と述懐。「脚本を作るうえで重要なのはディテール。脚本家がすべきことはわざとハグシーンを作ったりすることではないんです。大切なのは小さな描写を積み重ねて大きなものにしていくこと。感情を揺さぶるようなものを書くことができれば、想定しなかった俳優の表現を引き出すことができるかもしれないんです」とこだわりを明かす。さらに「台湾BLはキュートでロマンティックな世界観を作ることが上手。ただ私個人としては甘い場面はもちろんですけれど、BLドラマにより豊かな内容を取り入れていきたいと思っています」と言及した。

BL作品はいろいろな分野に展開できる

マンガ「We Best Love 永遠の1位/2位の反撃」書影 (c)WeTV、結果娛樂/Gene/尖端出版

付加価値の高いBLドラマの制作を目指しているという蔡妃喬。BL作品はマンガ化に加え、音楽とのコラボ、観光PRなどさまざまな分野に展開できるとし、その一例として「We Best Love」シリーズの出演者をキャスティングし、リアリティショー「微波爐男孩的假期(原題)」を作ったことを紹介した。「We Best Love」シリーズはGENEによってマンガ化もされており、台湾ではメディアミックが活発に行われている。

金京恩も「台湾BLのほとんどがオリジナリティを持っている作品。それは台湾BLのよさだと思います。舞台化するなど多方面に展開していける」と語った。

台湾BLをグローバル化させていきたい

台湾BLドラマの持つ大きな可能性が語られる一方で、イベントでは問題点について話が及ぶ場面も。登壇者は「予算面に問題がある」と口々に指摘する。「We Best Love」シリーズを制作した有意思国際伝媒の最高執行責任者・潘心慧は「BLというジャンルは予算が限られていて、ビジネスパートナーを見つけることも簡単ではない。版権の販売ルートも少ない」と吐露。林珮瑜(リン・ペイユー)も「(台湾では)描ける題材は多いけれど、予算の問題で企画が成立しない場合がある。実際のところ制限がある」と明かす。

しかし、潘心慧は「私たちは問題を解決していくつもりです」と力強く宣言。「投資者にとっても、俳優、脚本家、監督にとってもBLはチャレンジする価値のあるジャンルだと思うんです」と述べ、「今まで多くの時間をかけて俳優とコミュニケーションを取ってきました。今後も新しい人材と出会っていきたい。BLドラマの新しいプロデューサー、脚本家も必要。BLが台湾で主流のジャンルになってほしい」と願いを込める。

蔡妃喬も「もっとプロのスタッフが必要。BLドラマの量を増やしていくことも重要です。登壇者たちみんなで台湾BLをグローバル化させていきたい」と思いを口にした。

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台湾のLGBTQ子供コンテンツを世界へ

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おきらく台湾研究所 @okiraku_tw

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