選者 / 桃月なしこ「ハッピー・デス・デイ」

取材・文 / 田尻和花

時には自分でループを引き起こす、めちゃくちゃ強い女の子

「ハッピー・デス・デイ」の主人公ツリーはビッチな大学生の女の子。彼女は誕生日の夜に何者かに殺されます。でも殺されたと思ったら誕生日の朝に戻って、またべッドで目を覚ますんです。これを何回も繰り返してしまうんですよ。死の恐怖があるから、殺されるのは嫌だ。そもそも誰が私を殺しているのかという話になりますが、この子は本当に性格が悪いので多方面から恨まれているんですね。心当たりが多すぎると（笑）。それで自分を恨んでいるであろう候補者をリストにして、1人ひとりしらみつぶしに確かめていきます。ツリーはループしてしまうことをマイナスに捉えてなくて、やってやる！みたいな姿勢。学園内を裸で歩き回ってみたりもします。

ツリーはいわゆる好かれるキャラではないんですよね。ビッチだから目が覚めたら男の人の部屋にいたっていうのも普通だし、友達がくれたカップケーキをゴミ箱に捨てたりする嫌な女。だけど死ぬたびにループすると気付いてから、それに立ち向かっていく姿がめちゃめちゃかっこよくて。前向き思考な主人公をどんどん応援したくなってしまうというのが、ホラー映画らしくなくて面白いなと感じました。強い女が主人公というのもけっこう珍しいと思っていて、好きなポイントです。ホラーだと女の子が逃げ回るみたいなパターンも多いですが、この子は男の子以上に強いというか。男か女かもわからない犯人に立ち向かおうっていう思考回路はすごいです。「殺されるのを待つより倒してやろう、相手を突き止めてやろう」とは普通ならないと思うんですけどね。

犯人探しに協力してくれる男の子、カーターはすごくいい人。ただ、彼が助けに来てくれたけど殺されてしまうループ回もありました。このままツリーが犯人を殺してしまったらループが終わってしまって、カーターが死んでしまったまま時間が動き出してしまう。だから自分自身でループを引き起こすシーンがあるんですが、かっこよかったです！ ループも無限にできるわけではなくて、死ぬたびに自分の体には影響があります。だんだん体も内臓もボロボロになっていって、起き上がるのもしんどいくらいになっていく。次ループしたら起き上がれなくなるかもしれないってわかっているのに、カーターのために動いてめちゃくちゃ強い女の子だなと思いました。

登場人物が多いので、誰が犯人なのか推測しながら観てみると面白いと思いますよ。私も最後までわからなかった。まさかそこが来るのか！っていう感じだったので。それにループをすることによって自分が周りの人とどう関わっていたか気付いて、自分の悪いところを認めていくという主人公の成長も見ることができます。ホラー映画が苦手な方にも楽しんでもらえる作品なので、「ホラーだから観るのやめよう」はもったいないです。ちなみに私は続編「ハッピー・デス・デイ 2U」も観ました。続編ってけっこうグダグダになることも多いと思うんですが、これは面白かった！ 主人公はさらに強くなってます（笑）。

桃月なしこ（モモツキナシコ）

1995年11月8日生まれ、愛知県出身。“可愛すぎる現役ナース”として一躍脚光を浴び、ファッション雑誌bisのレギュラーモデル、コスプレイヤーとして活躍している。サカイ引越センターのテレビCMに出演しているほか、「魔進戦隊キラメイジャー」で敵幹部ヨドンナ役に抜擢され、スピンオフでは主演を務めた。東映の配信ブランド・Xstream46作品「ようこそ東映殺影所へ」にも主演している。また出演しているMBS地上波番組「ゼロイチファミリアは褒められたい」が放送中、番組公式YouTubeチャンネル「ゼロイチTV」が配信中。

「ハッピー・デス・デイ」（2017年製作）

高飛車でビッチな女子大生ツリーは、誕生日の朝、酔った勢いで関係を持った男のベッドで目を覚ます。その夜、マスクを付けた何者かに殺されてしまったツリーは、恐怖の1日を延々と繰り返すことになり……。

製作は「ゲット・アウト」「スプリット」で知られるブラムハウス・プロダクションズ。「ザ・スイッチ」のクリストファー・ランドンが監督を務め、ジェシカ・ロース、イズラエル・ブルサードらが出演した。

「ハッピー・デス・デイ」Blu-ray / DVD販売中

税込価格：Blu-ray 2075円 / DVD 1572円
発売元・販売元：NBCユニバーサル・エンターテイメント
（※上記は2022年6月時点の情報）